地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

 音信不通となった子の名義の携帯電話の利用料金について、親が支払いを拒否できるか争われていた訴訟で、83日、東京地裁は「親が拒否すれば請求を止めることができる」と判決しました。なぜこんなことが訴訟にまでなるのかと思うほど、常識的な判決だと思います。

息子が15歳の時に携帯電話を契約し、親が料金を払うとの同意書にサインしましたが、成人した息子が音信不通になり、毎月10万円近い料金が引き落とされるようになったとのことです。ソフトバンクに請求先変更を求めたものの「契約者本人が手続しなければ変更できない」と拒否され、提訴に至ったとの報道です。

判決では「同意書に基づく支払いは任意で、維持する義務はない」「その後は息子に請求し、支払いがなければ強制解約することになる」とし、父親が支払いを拒否して以降の計約20万円の引き落としには根拠がないとして返還を命じました。

ソフトバンクは、控訴せず、判決は確定しました。

 

杓子定規な解釈より具体的妥当性

 判決の内容は至極当然なものです。この状況で父親に携帯料金の支払を続けさせるなど、社会正義に反するでしょう。

 しかし、法律的に考えると、契約上の根拠なく本人以外の者に契約内容の変更を求めたり、契約解除を求めたりすることを認めるのは、難しい面もあったでしょう。

 約款の文言の杓子定規な解釈より、具体的妥当性、社会正義を優先すべきことを示す好例だと思います。

 

ソフトバンクの判断は

 父親の求めを拒否したソフトバンクの判断は、おそらく、本社の法務部門や顧問弁護士に相談した結果ではないと想像しています。法務部門等が関与した上での判断だったとしたら、少しお粗末です。現場の判断で拒否し、そのまま訴訟に至ってしまったような気がします。

 控訴しなかったことは、当然とはいえ、的確な判断でした。

 

 行政の場でも、杓子定規に規則に従おうとすると、公正とは思えないことになったり著しく不合理なことになったりする場面が時々あるものです。規則、条例などは、不備を発見したときは速やかに改正することが必要です。

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 命じられて公文書改ざんに手を染めてしまったことを苦にして自殺された近畿財務局職員の遺族が、公文書の開示を巡って近畿財務局長を提訴しておられます。

 この報道を見て、近畿財務局の対応にあきれています。正直に言えば、バカだと思います。

 

手続の経緯

 令和2年4月13日、自殺された職員の妻が、夫の公務災害認定に関して財務局が保有する一切の文書について、個人情報開示請求をしました。

 それに対し、近畿財務局は、5月13日、文書が大量であることやコロナによる多忙等を理由に、6月15日までに可能な部分について開示決定等を行い、残りの部分については令和3年5月14日まで開示決定の期限を延長するという通知を送ってきたとのことです。臆面もなく、1年も先送りするつもりです。そして6月10日に開示したのは、「公務災害に係る遺族補償年金等の支払いについて」という10枚の文書だけだったとのことです。こんな、年金額算定の結論部分だけの資料だけ開示されても、経緯は分からないでしょう。

 職員の妻は、情報の速やかな開示を求めて提訴し、818日に公判が始まりました。

 

1年もの先送りは許されるはずがない

 私も高齢者福祉施設の建設補助などの仕事をしているとき、公文書公開の手続を何度も経験しています。個人情報の開示請求は、公文書公開とは少し異なりますが、手続等は類似しており、たしかに、手間のかかる作業です。

 まず対象の文書を特定し、その中に公開できない箇所がないか念入りに検討し、起案します。私のときは、対象文書をすべてコピーし、黒塗りすべきと判断した個所を蛍光ペンでマークして、上司や関係課(文書管理の主務課など)に決裁を回しました。決裁になったら、決裁の通りにコピー文書に黒塗りをし、それを公開用に再度コピーしました。コピー文書にマジックで黒塗りしただけでは、文字の部分が光って判読できる場合があるからです。

 たしかに対象文書が多ければ作業は大変ですが、1日もあれば十分でしょう。審査・判断に時間がかかるのでしょうが、その気になれば決裁権者(おそらく局長)を1日拘束させてもらえば、絶対にできるはずです。何かを隠そうという意図がなければ、その判断もさほど難しいものではないでしょう。

 

要は時間稼ぎか

 非開示にすべき適当な理由が見当たらないけれども開示できないと考えている文書、箇所が多いために、こんなことになったのでしょう。

この問題は国民の関心も高く、財務省、近畿財務局が本気で国民の信頼を回復したいと考えているなら、絶対に速やかに開示するはずです。

 時間を稼ぎ、国民の関心を薄れさせ、関係した上司は人事異動で昇任したり、退職で逃げ切ったり、内閣が交代したりすることを狙っているのでしょう。

 こんな対応を許しては、法治国家の名に値しないでしょう。

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 公務員給与に関する人事院勧告は、例年8月上旬に行われますが、今年は10月以降になるという報道がありました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、民間給与実態調査が2か月ほど遅れたためのようです。

 そうなると、特に地方公務員について、給与改定の日程が大変です。

 

例年のスケジュール

 10月初旬 都道府県等の人事委員会による給与勧告

       各自治体で給与改定の方針決定、職員団体と交渉

 11月、12月 給与条例の改正を議会で議決

  (期末・勤勉手当が据え置き又は増額の場合は12月に議決してもいいが、減額の場合は、12月の期末・勤勉手当の基準日である12月1日までには議決を済ませておかなければならない【不利益変更不遡及】。今回の改定は、間違いなく減額改定だから12月1日までに議決が必要でしょう。)

 

2020年のスケジュールは?

 12月1日までに議会の議決を得なければならないので、人事委員会の勧告は、人事院勧告からほとんど遅れずに出さなければならないでしょう。恐らく、各人事委員会は、人事院勧告の原案を情報収集し、準備するのでしょう。

 それでも、職員団体との交渉の時間はほとんどなさそうです。

 専決処分でやろうとしても、121日までにやらなければならないことは同じなので、あまりスケジュール面でのメリットはありません。

 

 最悪の場合、12月の期末・勤勉手当は現行条例通りに支給し、2021年に支給する期末・勤勉手当で減額することも考えられなくもありませんが、2020年度末退職者は逃げ得になります。まずあり得ないと思います。

期末・勤勉手当の減額は民間ほどではな

 期末・勤勉手当の減額の程度は、民間の今年の夏のボーナスほど厳しくはないはずです。今回の改定には、民間の昨年8月から今年の7月までの賞与等の支給が反映されます。つまり、厳しい今年の夏の賞与だけでなく、コロナ前の昨年の冬の賞与も反映されるので、厳しさが緩和されるでしょう。その代わり、回復する時も半年遅れになります。
 「令和2年度の期末勤勉手当はどう減る?」 参照
 

 大急ぎで勧告をしなければならない都道府県等の人事委員会の皆さま、大急ぎで職員団体と交渉したり条例案を作らなければならない各自治体の人事当局の皆さま、交渉を急かせられる職員団体の皆さま、お疲れ様です。

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