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 「議会の委任による専決処分」(一般に「指定専決」ともいう。)という制度があります。地方自治法第180条に基づくもので、議会の権限に属する事項で軽易なものはあらかじめ議会が議決によって指定し、それについては首長が事前に議会に付議せずに専決処分できる制度です。

地方自治法

〔議会の委任による専決処分〕

180条 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。

 前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。

 

提案権の問題

 もともと議会が持つ権限を長に委任するものですから、長から提案することは筋違いであり、長には提案権がないというのが通説的な解釈であり、異論は見当たりません。私も同じ考えです。

 一方、条例の制定は、議員と長の両方に提案権がありますが、実際には長が提案することがほとんどです。その長が提案した条例で、本来は「指定専決」として議員提案で定めるべきことを定めてしまっている例がかなり見受けられます。もちろん、適当ではありません。

 よく見られるのは、議決を要する契約に係る契約金額の軽微な変更です。議会の議決を要するような大きな工事の契約は、途中で金額を変更せざるを得ないことが頻繁に生じます。その場合には、本来はあらためて議決を得なければなりませんが、条例で、例えば6分の1以内の金額の変更契約は議会にかけずに長が決めていい旨の定めをしている条例がかなり見受けられます。こういうことは、本来は「議会の委任による専決事項の指定」として定めるべきでしょう。

 

昭和301217日行政実例

 問 第180条の提案権は、長にもあると思うがどうか。

 答 長は、議長に対して事件を指定して議決を依頼することができる。

 

 原文はもっと丁寧なのかもしれませんが、現在、行政実例として流布しているのは、上のとおりです。間違いではありませんが、明らかに言葉足らずで、誤解を招きます。

 答は、長には提案権はないことを大前提に、「議長にお願いしてみるのはいいよ。」と回答しているのです。法律的、制度的な質問に対して、法律から離れた事実行為で回答しています。

 制度に詳しくない採用間もない職員の中には、「議決を依頼することができる。」を読んで、長には提案権があると誤解してしまう人もいます。間違いではありませんが、想定の斜め上を行くおもしろい行政実例です。回答者、又は行政実例をまとめた担当者は、ユーモアのある人だったのかもしれません。

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