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 全国的に有名な徳島市の夏の風物詩「阿波踊り」ですが、市が中心となって新たに組織した実行委員会と有力な踊り手グループ(連)が所属する踊り手団体「阿波おどり振興協会」が対立し、混乱しました。実行委員会が収益増のために「総踊り」を止めて四つの有料演舞場に分散することをもくろんだのに対し、踊り手団体が反発し、実行委員会の反対を押し切り、恒例の「総踊り」を強行開催しました。

巨額の累積赤字の発覚で市が改革に乗り出したわけですが、踊り手団体との対立を招いたうえ、今年度の来客も例年に比べて大幅に減少させたようです。

 

踊りの主体は誰か

 阿波踊りの主人公は、踊り手たちです。もともと、観光イベントではなく、自分たちの楽しみのためにやっているものです。ライバルのグループ(連)の踊りも見たいでしょう。それなのに、踊り手グループの意向を無視して、その楽しみの最大の山場を勝手に中止、分散するなど、そんな意思決定は考えられません。

 赤字を出したくないなら、踊り手たちの楽しみを阻害せず、納得してもらえる方策を探さなければなりません。

 踊り手たちの意向が反映されていない誤った意思決定が、どういう過程で行われたか、「失敗学」の見地から興味があります。詳報を期待しています。

 

盛り上がりの分散は愚策

 観光イベントとしてみた場合でも、見物客にとっての最大の魅力、山場は、総踊りでしょう。圧倒的な迫力、盛り上がりを体感したいために訪れる観光客も多いと思います。その目玉を分散してしまえば、迫力も減ってしまい、魅力の乏しいものになってしまいます。見に行こうという人も減ってしまうでしょう。

 今回、踊り手たちの協力が得られていたと仮定しても、収益増が図られていたか疑問です。最初の年だけは収益が増えたとしても、魅力、迫力の減ったイベントに、将来にわたって客が来てくれるとは思えません。

 

地元マスコミのチェック機能

 一般に、このような事態になる前にストップがかかるものですが、今回は、地元の徳島新聞が昨年までの累積赤字にかなりの責任があり、また、市長は系列のテレビ局の出身でもあるため、筆が鈍っていたのではないかと思います。地元マスコミの沈黙が、市の暴走を許した可能性があるのでしょう。

 たしかに、徳島新聞は、今回の市の改善策を批判できる立場になかったことは理解できるのですが、他のマスコミは市の暴走を止められなかったのでしょうか?

 

 来年は、今回の反省の下に、市民と行政が一体となって総踊りを盛り上げていただきたいものです。


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