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 長期継続契約でも、41日からの契約であれば、41日付けで契約しなければならないという運用をしている自治体は、非常にたくさんあります。3月中の契約を容認している理性的な自治体はむしろ少数派で、ほとんどの団体が、41日付けで支出負担行為の起案、決裁、見積書徴取、締約締結をするという、欺瞞に満ちた離れ業をやっています。

 そんな運用の背景には、「長期継続契約といえども契約締結年度における歳出予算の裏付けがない契約まで認められるわけではない。」、つまり、歳出予算の効力が発生する41日以降でなければ契約できませんよという、誤った見解があります。

この見解は、この議論のときには必ず出る見解ですが、次の理由で明らかに誤りです

 

1 一つは、純粋な条文の解釈です。地方自治法、施行令の該当条文を見ると、歳出予算等の裏付けがなくても翌年度以降にわたって一定のサービスを受ける契約の締結を認めると言っているだけで、契約を締結するときだけは歳出予算の裏付けが必要だなどと解釈できる文言はありません。

  例えば3年契約であれば、翌々年度の歳出予算の裏付けは全くなくても契約できます。なぜ支出予定もない契約締結年度(事業開始の前年度)の予算の裏付けだけ問題にするのか、条文上の根拠もなく、そんな運用をする意味もありません。

 

自治法第214条(債務負担行為) 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

自治法第234条の3(長期継続契約) 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

自治令第167条の17  地方自治法第234条の3に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする。

 

2 二つ目は、債務負担行為との比較です。自治法では、長期継続契約は債務負担行為の例外として、債務負担行為の手続を取らずに、同様の効果がある制度として規定されており、債務負担行為で認められることが長期継続契約で認められないとすれば何らかの条文上の根拠が必要ですが、そんなものは見当たらないことです。

  債務負担行為について、事業年度の開始前に契約できることを否定する人は皆無で、早期着工などのために頻繁に行われています。長期継続契約の場合はダメというなら、その条文上の根拠はどこでしょうか?見当たりません。

 

2 三つめは、歳出予算の意味です。歳出予算は、執行していい上限額を設定するもので、個々の契約の可否を決定するものではありません。個々の契約については、特に運営費的な費目は、総額の範囲であれば、裏付けがあるともないとも言えないのが正確なところです。

 

4 四つ目は、法234条の3の後段で、「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。」と規定されており、歳出予算の裏付けの有無などを問題にしないことを宣言していることです。予算がなければ、給付を受けないだけのことで、契約締結には影響しません。

 

 このような誤解が生じている理由の一つに、総務省が特区の議論の際に表明している「普通地方公共団体が行う支出負担行為及び予算執行については、議会の承認を得ない単年度主義の例外はない。」という見解にあると思います。この見解を根拠に、「債務負担行為は議会の承認があるからいいが、長期継続契約はダメ」という誤解をしておられる方もいます。

 しかし、平成16年の改正で範囲が拡大された契約は、条例で指定することと定められており、つまり議会の包括的な承認のもとに単年度主義の例外扱いされているものです。議会の承認の有無を問題にするのは、見当はずれです。

 

 長期継続契約についての総務省の「公式」見解については、別稿で検証します。

 

 長期継続契約に係る総務省の「公式」見解」


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