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 マイナンバーカードの前に市町村が発行していた住民基本台帳カードについて覚えておられる方は少ないと思います。多額の税金をつぎ込み、結局ほとんど無駄に終わったシステムです。私は、県庁に在職していたときに、この導入に関わった際の苦々しい思い出があります。

 

住民基本台帳カードのシステム

 このカードは、2003年から交付が開始され、マイナンバーカードの開始に伴い、2015年に交付を終了しました。全国の住民に住民票コードが付され、全国の自治体のネットワークを構築して、全国どこの役場でも住民票等の発行が受けられ、国への提出書類で住民票等の添付を省略できるというものでした。

 1999年ころシステムの開発が始められましたが、私はそのころ県の担当部局でその業務に携わりました。中央省庁が全国民の情報を瞬時に把握できるようになるので、野党が徴兵制につながるなどと反対していたのを、自民党が強行したものです。

 何千億円もかけて、結局、最終的な普及率は5%程度という惨憺たる無駄遣いに終わったようです。国が行うマイナンバー制度の露払いを地方にさせたようなものでした。この無駄遣いの責任追及の話は、聞いたことがありません。

 

損害は地方自治体だけ?

 国が発案し、国の施策として進められた事業ですが、国はほとんど予算を使っていないと思います。地方交付税を使い、地方自治体にやらせたのです。

 1999年(平成11年)だったと思いますが、旧自治省が号令を発して、全都道府県が参加する協議会を作らせました。協議会のメンバーは都道府県の総務部長等で、座長などは、自治省から地方に出向中の総務部長らが務めていました。忙しい総務部長が自ら出席する都道府県は少なく、ほとんどが代理出席でした。代理は課長級以上に限定されていたので、市町村課長や東京事務所の課長級職員などが出席者のほとんどでした。部長(委員)本人が出席したのは自治省から出向していた部長等がほとんどで、この人たちが会議を主導しました。

その協議会で全都道府県から負担金を集め、システムの開発、導入の共通部分を支弁しました。

 都道府県には不満ももちろんありましたが、その負担金分は地方交付税で配分するということで、都道府県としては応じざるを得ない形でした。個々の自治体(市町村役場なども)で要する導入経費なども膨大だったと思います。それぞれの住民基本台帳の電算システムと結合させなければなりませんから。

 

地方交付税を使うのは反則でしょう!

 国(自治省)が地方交付税の配分に色を付け、それを地方公共団体から負担金等として拠出させて、自らやりたい政策のために使うというのは、反則技でしょう。地方交付税は、地方の固有財源であり、国が自分のやりたい事業に使うべきものではありません。

 あのシステムの開発は、地方公共団体の情報システムなどを手掛ける自治省の外郭団体が受託しました。そこには、自治省などのOBが何人も再就職していました。

 

 こんなことが、地方分権改革と称えられた地方分権一括法の施行直後に行われていたのです。総務省が地方交付税の配分に色を付けて地方に資金を出させることは、その後も行われています。

マイナンバーカードは住民基本台帳カードの轍を踏まずに、有効に活用されていただきたいと思います。

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