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 「文藝春秋オピニオン2019年の論点100」は、今の社会の100の論点を解説し、論じたものです。私は、新年にこれを読むことをここ何年か恒例にしています。

 今年の論点の中で、最も印象に残ったのは、静岡県立大学特認教授の西恭之氏が執筆された『「国際法」への無知が日本の領土を危うくする』という文章です。

 

 日本がポツダム宣言を受諾した後でソ連軍が北方4島を占領し、旧ソ連・ロシアが今日まで支配していることを、まとめて不法占拠と称することが日本では一般的です。不法占拠ではないと認めてしまうと、返還請求の根拠も失われてしまうので、絶対に譲れない一線だというのが日本の常識です。私も、本書を読むまでは、そのように考えていました。

 

 誤解のないように最初に断っておきますが、北方4島がロシアの領土になったという主張に対しては、執筆者は国際法に基づいて明確に否定しています。

 

ソ連の対日参戦が違法という主張は得策でない

 ソ連の対日参戦が不法な侵略だったという主張は、国際的な理解を得ることが困難です。ソ連の対日参戦は、米国や英国が要請したことでもあり、そんな主張をしても、米国などの支持を失う結果になるだけのようです。

 「ソ連軍の北方4島占領は、日本本土を含むアジア太平洋全域の日本軍を降伏させるために、連合国が定めた分担の一環であり、日本のポツダム宣言受諾を法的根拠として行われた。軍事占領の法的根拠は、平和条約による占領軍撤退の期限を迎えるまで継続する。」というのが、国際法の解釈であると執筆者は主張しています。

 ただし、「大西洋憲章」などから、降伏に伴う軍事占領は国境を変更するものではなく、ロシアによる併合、領有の主張は違法であるとしています。どこの国も単独で日本の領土を決定することはできないという大前提は、中国による尖閣諸島の領有の主張、韓国による竹島の領有の主張にも、当然に適用され、日本の主張の根拠になります。「太平洋戦争の結果」を否定するものなどという中韓の主張は、明らかに誤りです。

 

 何が違法で、何が合法か、きちんと切り分けるべきです。不必要にロシアのメンツをつぶして刺激したり、他の連合国の反感まで買ったりすることのないよう、日本のマスコミにも注意していただきたいと思います。

(追記)
 2月4日の新聞各紙で、「北方領土の日」の大会アピールで「不法占拠」という言葉を使わない方向になったことが報じられました。ただ、その理由として指摘していることは、交渉の前に「強硬なロシアを刺激しないため」ばかりです。国際法の解釈の問題等を論じている報道があまりないことが、残念です。

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