建設工事の競争入札などで、変動型最低制限価格制度を採用する自治体が増えているようです。ネットで検索すると、都道府県で行っているところは見当たりませんが、かなりの数の市町村が導入しています。設計価格の漏洩などの不祥事が起こった自治体などで、その防止策として導入されることもあるようです。

 

変動型最低制限価格の算定方法

 一般的な最低制限価格制度でも自治体によって算定方法が異なっていますが、変動型最低制限価格については国のモデルがないため、より様々な算定方法が工夫されています。

 共通しているのは、入札参加者が入札書に書いた金額に応じて、最低制限価格が変動することです。

 入札書の金額の低いほうから2分の1を選定し、その入札価格を平均したものに0.8を乗じた金額を最低制限価格とするなどの手法が、典型的です。つまり、最低制限価格は従来のように○○円という具体的な金額で事前に算定できず、入札書が出そろった時点で初めて算定できることになります。

 

法令上の疑問

 私は、最初にこの変動型最低制限価格の取組を聞いた時、果たして適法なのか疑問を持ちました。地方自治法施行令第167条の10第2項では、最低制限価格は「あらかじめ」設けることになっているからです。入札参加者が入札書に記載した金額から事後的に算定されるものが、「あらかじめ」設けたことになるのかという疑問です。

 ネットで探してみましたが、そのことに関する情報は見つけることができませんでした。

 

 今は、法令の趣旨、目的から、適法と解釈すべきだろうと考えています。

 施行令が、「あらかじめ」設けることを求めているのは、入札執行側が事後に恣意的に落札者を調整するようなことを避けるためでしょう。そうであれば、あらかじめ算定方法を決めておき、事後に操作できる余地がないのであれば、事前に金額まで決めておくことを要求する必要はありません。法文上は解釈が分かれると思いますが、法令の制度目的からすれば狭く解釈する必要はないと思います。

 

地方自治法施行令

(一般競争入札において最低価格の入札者以外の者を落札者とすることができる場合)

第167条の10 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもつて申込みをした者の当該申込みに係る価格によつてはその者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認めるとき、又はその者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあつて著しく不適当であると認めるときは、その者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした他の者のうち、最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とすることができる。

2 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けて、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもつて申込みをした者のうち最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とすることができる。

 ※ ここでは一般競争入札のことを規定していますが、この規定は指名競争入札にも準用されています。

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