本書は、2014年に放送されて注目されたNHKスペシャル「老人漂流社会 『老後破産』の現実」をベースに、テレビでは紹介しきれなかったエピソード等をまとめたものです。

 金融審議会のワーキンググループ報告書の案で、夫婦で月に19万円もの公的年金を受給してもなお2000万円不足するなどということが報告されていますが、本書に描かれているのはそんな能天気な話ではなく、悲惨な現実です。例えば、毎月6万円の国民年金からアパートの家賃5万円を支払い、残り1万円で生活しているなどです。

何十年も懸命に働き、生活してきた人が、ちょっとしたきっかけで「老後破産」に至ってしまう・・・。

 

 老後破産に至るきっかけは、様々です。家族の介護のための離職病気、起業の失敗離婚や配偶者の死亡(国民年金が一人分になってしまう)、失業した子の同居・・・。勤務していた会社が年金の手続をしていなかったなどという非道なケースもあるようです。私の勤務先は大丈夫ですが、きちんとした企業でない場合は、確認が必要です。

 ただし、大会社に勤めていたり、公務員だったりしても、絶対に大丈夫だなどとはいえません。

 

 本書を読むと、安直な「自己責任論」は誤りだと感じます。

 ただし、公的年金一般の給付額を増やすべきだという議論にも賛成できません。現役世代の負担をむやみに増やすべきではありません。国民年金の将来的な拡充は必要だと思いますが、保険料も増やさなければなりません。

 生活保護制度が極めて利用しにくい制度になっていることも問題だと感じました。親族に迷惑をかけないために自分の葬式代として50万円くらいの預金を守っていると生活保護が受けられないなど、制度の見直しが必要でしょう。

 生活保護世帯と低年金世帯の逆転現象、特に生活保護になると医療費が無償になって低年金世帯の悲惨さとの格差が著しい問題などは、制度間の調整措置が不可欠でしょう。

 

 こういった切実な問題について、深い議論をする材料が示されないまま、今度の日曜日は参議院選挙の投票日です。

 「都合の悪いことは参院選後に? 年金財政検証」 

 にほんブログ村 ニュースブログ ニュース感想へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次) 

スポンサードリンク