地方自治体の職員が公文書に虚偽の記載を余儀なくされている主なものに、履行検査、履行確認の日付があります。これも、深く考慮せずに出された総務省(旧自治省)の通知等に責任があります。
地方自治法施行令第143条(歳出の会計年度所属区分)
歳出の会計年度所属は、次の区分による。
(4) 工事請負費、物件購入費、運賃の類及び補助費の類で相手方の行為の完了があった後支出するものは、当該行為の履行があった日の属する年度
この規定は、民間の会計区分のやり方と概ね同様の、常識的なものでしょう。
しかし、「地方自治小六法」にこの規定の解釈として載っている次の通知は、どうでしょうか?
総務省(旧自治省)の通知、指導等
「工事請負費等は履行の確認のための検査の日によって所属年度が左右されるのが原則である。」(昭38.12.19通知)
「『当該行為の履行があった日』とは、履行確認の日をいう。」(同上)
また、「地方財務実務提要」には、
「工事が平成2年3月25日に完成したが、都合により同年4月3日に履行確認(検査)を実施した。」というケースについて、繰越手続がとられていない場合は、新年度予算で支払うこととされています。
旧年度中に履行があったことが明らかであっても、履行検査が新年度になれば新年度予算から支払わなければならないというのは、施行令に反していると思います。民間なら、当然、旧年度分の未払金等に計上し、旧年度の経費等にすると思います。つまり、ある年度の経費は当該年度の歳入でまかなうという、会計年度独立の原則にも反する結果になります。
明白に不合理なケース
工事の費用であれば、この不合理はあまり大きな不合理とは言えないかもしれません。
しかし、
3月31日までの施設の保守管理や警備の委託、機器の賃貸などの契約は、膨大にあります。
これらの契約も、3月31日までに履行確認が行わなければ新年度の支出とせざるを得ないことになっています。しかし、そんなことは不可能です。これらの契約は、3月31日が何事もなく満了して、完全に履行されたことになるから、確認は新年度にならざるを得ないのです。
虚偽公文書作成の横行
上記のような契約に係る支払の際にも、履行確認の日は3月31日と記載されます。3月31日が土曜日、日曜日だったとしてもです。
もちろん、実際に3月31日の深夜24時、4月1日午前零時の直前に履行確認を行っているはずはなく、虚偽の記載をしているのは明白です。
合理的な制度運用は?
旧年度中に履行されたことが確認(推定)されれば、その確認行為が新年度であったとしても、「履行があった」旧年度の支出とするのが、合理的ではないでしょうか?
履行確認の日付は、擬制的に3月31日としているだけだから、問題ないという人もいます。しかし、「擬制」というのは、例えば、4月に履行確認して日付も4月にしていたとしても一定の場合には旧年度中に履行確認したとみなすことで、職員に虚偽の記載をさせることを擬制とは言わないと思います。
また、こんなことをしていると、履行確認が形骸化したり、職員が日付を遡ることに罪悪感を持たなくなってしまいます。
まともに、正々堂々と運用できる制度運用とすべきです。
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