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仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは違法だとして、横浜市の運送会社の契約社員(運転手)3人が正社員との賃金差額を支払うよう同社に求めた訴訟が最高裁で争われています。運転手側は逆転敗訴した2審判決の破棄を求め、会社側は維持を求めています。最高裁第2小法廷では弁論も行われ、6月1日に判決が予定され、注目されています。
争点は
1審は、「仕事内容が同じなのに賃金格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理」として会社側に約415万円の支払いを命じました。これに対して2審の東京高裁は、減額幅は2割程度で同規模企業の平均より小さいとし、その上で「定年後の賃下げは広く行われ、社会的に容認されている」として、地裁判決を取り消しました。
3月には、北九州市の食品会社でのトラブルについて最高裁で、定年を迎える社員に、再雇用(継続雇用)の条件として、仕事をパートタイムとした上で賃金を25%相当に減らす提案をしたのは不法行為にあたるとして、会社に慰謝料100万円の支払いを命じた高裁の判決が確定しています。判決の中で、再雇用については「定年前後の労働条件の継続性・連続性が一定程度確保されることが原則」との判断が示されています。
今の流れでは、定年後の再雇用では、ある程度の賃金ダウンは容認されるのでしょう。運転手などのように、定年前後で仕事内容にほとんど変わりがない場合、どの程度のダウンまでが許容されるかが、一つの注目点でしょう。
地方公務員にも影響?
地方公務員の再任用の場合、再任用後は、責任の程度が軽い職務に替わることが一般的です。そのようなケースについては、あまり問題にならないと思います。
自治体によっては、再任用後に定年前の役職にそのままとどまるような再任用も時々行われています。そのような場合でも、給料は25%くらい下がることが多いようです。
最高裁の判断によっては、影響を受けるかもしれません。
日本は年齢差別に寛容
アメリカでは、年齢差別禁止法によって、定年制も原則として禁止されているようです。採用時の年齢制限など、禁止されていることはもちろんです。
一方、日本では、採用時の年齢制限の禁止は非常に緩く、いわゆる正規社員、正規職員の採用は、キャリアを積み重ねる必要性などから、広く容認されています。定年制が一般的であることは、もちろんです。さらに、定年後の再雇用において、賃金をかなり下げることも一般的に行われています。
日本のこの緩さは、憲法に由来しているのかもしれません。憲法第14条は、「年齢」での差別の禁止を明示していません。
日本国憲法第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
定年のある社会と、定年のない社会。私は、どちらかというと、定年があって責任に一区切りつけられる社会の方が、気に入っています。