地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2018年05月

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 一週間ほど前、日本大学アメフト部の事件について、スポーツ庁が調査に入る意向であることが報じられていました。これだけの騒動に発展してしまったので、スポーツ庁としても何かしなければならないと思ったのでしょうが、私は、少し違和感を覚えました。

 

スポーツ庁の出番なのか?

 問題になっているのは、一大学の部のことであり、関東学生連盟などの競技団体が調査を行い、先日、それに基づく処分を発表したところです。スポーツ庁長官が聴き取り調査等を行う意向を表明した時点では、関東学生連盟は調査に着手したか、着手寸前の段階だったと思います。まずは、競技団体による自浄作用を見守るのが、役所と民間団体の関係の基本的なルールだと思います。屋上屋を重ねる必要はなく、万一異なる結論など出そうものなら、混乱に拍車をかけてしまうので、そんなことはできないでしょう。

 まして、警察の捜査も入るはずであり、スポーツ庁が別個に調査する意味があるのか、疑問です。

 

文部科学省高等教育局が出るべきでは?

 私は、外局のスポーツ庁ではなく、大学の認可、監督、補助金などを所管している文部科学本省の高等教育局が動くべきだと思います。

 報道によると、この事件が炎上した後に開催された法人の理事会、評議委員会でも、事件について全く議論がされなかったとのことです。法人を管理運営すべき機関、それを監視すべき機関が役割を果たしていないことは、明らかです。

 また、理事長が暴力団と交際があったとか、権限が集中していて誰も何も言えないなどの問題も報じられています。学問の府の理事会で、頭の中まで筋肉が詰まっているような運動部関係者ばかりが幅を利かせていることに一般の人は驚いているでしょう。日大とはいえ、運動部に所属していない一般学生の方が多いと思うのですが。

 私は、県職員時代、学校法人と一般的な公益法人はちょっとだけ、社会福祉法人はかなり濃密に、監督指導関係の仕事を経験しました。私の感覚からは、日大のこの現状で、監督官庁が動こうとしないとすれば、変に感じます。理事会の中の文科省OBとかを通じて、動かないでくれとか頼まれているのでしょうか?

 

 この騒動を収めるには、大学の理事会が適切に行動する必要があります。理事会、評議委員会の動きが悪ければ、監督官庁の出番です。期待しています。


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 日大アメフト部の事件について、危機管理の問題として論じているものは多数見かけます。このサイトの前稿などもその一つです。

「日本大学危機管理学部の危機管理」

「失敗学、危機管理論、組織論の教材の宝庫」

 

 危機管理の不手際で問題を大きくしてしまった面はたしかにあるのですが、危機管理以前の問題を忘れてはなりません。それは、日大アメフト部の監督などが、勝つためには相手にわざと怪我を負わせてもいいという勝利至上主義に陥っていたことです。

 

勝利至上主義に陥った組織上の問題

 あの悪質なプレーが監督などの指示に基づくものだとしたら、どんなに危機管理を巧みにやったとしても、大問題になって監督等の解任に至ることは避けられなかったと思います。問題の根本は、組織が勝利至上主義に陥ってしまっていたことです。

 フェアプレーよりも、勝つことの方に重い価値を置く組織になってしまったことには、勝つことの方が人事、給与面で有利になり、周囲からの称賛も得られるシステム、環境であったということでしょう。これを是正しなければなりません。

 

 この問題は、企業経営、組織論の中で、組織ビジョンなどとして論じられています。古くは、企業の利益を優先して消費者の安全を軽視した企業などが、市場から退場を迫られたこともあります。雪印乳業の事件、三菱自動車の事件などがそうでした。

 損失を顧みずに消費者、社会の安全を優先する行動を採ったことで、称賛され、業績を拡大させた例もあります。「エクセレント・カンパニー」などで紹介されていたと思います。

 

守るべきものを間違えている理事会の問題

 日大の当局の動きをみると、守らなければならないものを誤っているようです。選手や全学生、卒業生、大学のブランドを守るより、前監督などを守ろうとしているように見えます。世間からもそう見えているようです。

 通常なら、理事会が、選手、学生、大学のブランドを最優先にした行動を敢然ととるべきところ、理事会メンバー(前監督)や職員(コーチ連)の仲間意識の方を重視した行動をとっています。大学の危機であることを感じていないようです。これも、組織的な重大欠陥です。

 

日大はピンチをチャンスに転換を

 スポーツに重きを置いている日大は、勝利よりもフェアプレーに重きを置く組織風土に転換しなければならず、今が千載一遇のチャンスです。勝利至上主義の組織運営をしていた連中を排除し、フェアプレーに重きを置く組織風土に転換しなければなりません。

 今、アメフト部で徹底した調査をし、勝利至上主義に陥っていたスタッフを排除すれば、他の運動部に対しても強烈なメッセージになります。全学がフェアプレー重視の組織に生まれ変わることも可能です。

 そうすれば、勝つこと以上に社会の評価を高めることができる可能性があります。

 

 今、アメフト部は、それをしなければ、対外試合もできない状況に追い込まれており、躊躇している余裕はありません。

 幸い、世論は、選手たちには同情的です。選手たちが、今後試合もできないことは可哀想だと感じています。日大当局(理事会)の早急な決断が待たれます

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 日大アメフト部の問題を観察していて、あきれ果てている人が多いと思います。私も、「何でこんなことを?」と感じるような部分が多く、日大には組織として欠陥があると思わざるを得ません。

 特に、5月23日の緊急の記者会見には、あきれましたが、その他にも首をかしげたくなることが多々あります。

 

5月18日の理事会でこの問題が取り上げられなかった!

 この理事会の前日には、この問題は既に炎上していました。対応を誤ると、アメフト部の存続や大学のブランドイメージなどが危ぶまれることは明白でした。

 そんな時に、せっかく理事会が開催されたのに、誰一人としてこの問題を問い質そうとする人はいなかったようです。理事は、全員役立たずのお飾りだったということです。

 特に、理事長、副理事長、学長等は、何を考えていたのでしょうか?

 

 想像するに、聞きたいこと、言いたいことは山ほどあったにもかかわらず、常務理事である内田氏に遠慮して黙っていたのだろうと思います。そうであれば、役立たずと言わざるを得ません。そんな理事がそろったのは、組織として重大な欠陥があります。

 もう遅すぎると言わざるを得ませんが、今からでも理事会が本来の役割を果たさなければ、さらに酷いことになってしまいます。

 

誰が事態をマネジメントしているのか?

 これほどの危機に、事態をマネジメントしている責任者が見えてきません。アメフト部、内田氏が独断で動いているように見えます。

 こんな問題を、直接の当事者にマネジメントさせるのは、絶対にダメだと思います。自分自身の立場を守ることと、大学、学生の利益を守ることが、両立しないからです。

 大学、学生の利益を最優先に考えることのできる立場の人、危機管理の素養のある人にマネジメントさせなければなりません。

 この事件の当事者で、自身の保身を図る可能性がある人は、この問題の方針決定からは除外しなければならないことは当然です。

 

 23日の緊急記者会見は、誰が決定したのでしょうか?あんなことを発表するなら、予定どおり関西学院大学への再回答の際でもよく、準備不足で緊急会見をした判断が理解できません。

 

 記者会見の司会者に、あの広報部顧問という職員を充てたのは、誰が決めたことなのでしょうか?危機管理の素養もなく、あのような場をさばけるような性格、能力の持ち主ではないことは、分からなかったはずがないと思うのですが・・・。

 かなり高齢のようで、どんな事情で広報部顧問という職責に就き、あのような重要な場面に登場してきたのか想像がつきません。これも内田氏が人事担当役員であることによる弊害なのでしょうか?

 

 前稿でも述べましたが、「危機管理学部」が収拾に乗り出さなければ、存在価値が問われますよ。

 「日本大学危機管理学部の危機管理」


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 長々と続く森友学園、加計学園関係の問題に、国民はうんざりしています。早く決着をつけてほしいと思っています。それが、いつまでもあいまいなまま続くことに、飽き飽きし始めています。

 これが、官邸や与党の狙いなのかなと思います。国民をこの問題に飽きさせ、別の問題に目を向けさせたいのでしょう。内閣支持率の下落が底を打ってきたことは、その狙いが成功してきた表れなのかもしれません。

 

 二つの問題で、分かっていること、分からないことを整理してみます。

 

森友問題でほぼ分かっていること、不明なこと

 近畿財務局が、国有地を不当に安く払下げようとしたことは、間違いありません。

 不明なのは、それを指示した財務省官僚側のトップは誰かということ、その官僚がそんなことをしたのが、官邸又は政治家の指示、依頼によるものだったのか、忖度によるものだったのかという点です。

 公文書の改ざんが、財務本省、おそらく理財局長だった佐川氏の指示であったことも、ほぼ明らかになっていると思います。不明なのは、佐川氏の判断で行ったのか、官邸の指示、教唆があったのかという点です。

 この二つの点は、検察が捜査しているようですが、売払い処分当時の近畿財務局長、理財局長の国会証人喚問は、行うべきであり、控える理由はないと思います。この証人喚問に反対するのは、真相を明らかにしたくない人たちでしょう。

 公文書改ざん問題は、私は立件が難しいと思います。検察庁が立件を断念した時点で、佐川氏の再喚問をすれば、もう刑事訴追の可能性を理由とした証言拒否はできず、真相が少しは分かるかもしれません。
 「佐川氏の証人喚問」参照

 

加計問題でほぼ分かっていること、不明なこと

 官邸の複数の秘書官等が、加計学園の獣医学部新設を応援して動いていたことは、間違いないでしょう。

 不明なのは、それが首相の指示、教唆によるものか、秘書官などの勝手な忖度によるものかという点です。ただ、忖度であったとしても、首相がそのような動きを知らなかったということは考えにくく、首相の責任は免れないでしょう。

 本当に知らなかったとすれば、極めて間抜けな話ですが、そのような忖度を封じる対策をとっていなかったことに責任があります。

 

 既に判明していることだけでも、首相、財務相の責任は重く、辞任は免れないと思いますが、早急な真相解明に期待しています。


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 日大アメフト部の意図的な危険反則行為で、日大当局の対応が後手に回り、世論を敵に回してしまいました。たしかに危機管理としてはお粗末なものです。

 とばっちりで、同大学の危機管理学部が、非難されています。あんなお粗末な危機管理をしている大学で、危機管理なんて教えられるはずがないというわけです。

 

大学内部の動きを推測する

 おそらく、日大当局では、この問題を「危機」として認識していなかったのでしょう。アメフト部の監督などのスタッフに任せてしまったのだと思います。

 監督自身が、大学の常務理事という一般的な物事はすべて決定する権限を持つ立場であったことも影響したかもしれません。部の外部から口出しなどされたくなかったとも考えられます。

 早い時点で危機管理学部の専門家に助言を仰いでいれば、あのようなお粗末な対応ではなかったはずで、相談などはなかったのでしょう。

 

危機管理学部に責任は?

 では、危機管理学部に責任は皆無かといえば、そうではないと思います。

 早いうちに、これは大学にとって「危機」だから、危機管理の対応を危機管理学部に任せてほしい旨を大学当局に申し入れるべきでした。それは、行われたのでしょうか?

 この事件は、日大全体のイメージダウンにつながる問題で、危機管理学部も影響を受けざるを得ません。さらに、危機管理学部であるがゆえに、大学がお粗末な危機対応を行った場合、笑われてしまいます。危機の当事者でもあるのです。アメフト部の次に大きなダメージを受けるのは、平成28年に開設されたばかりの危機管理学部だと思います。

 遅ればせながらでも、危機管理学部が乗り出して事態収拾に動いているのでしょうか?

 

他の組織にも言えること

 組織内の他の部署で不祥事が発生した場合、普通は、あまり関わり合いになりたくないものだと思います。しかし、組織全体としてのダメージを最小限にとどめるために、他のセクションができることがあれば、やるべきなのでしょう。

 日大危機管理学部には、今回の事案を教材にして、「組織内のある部署で危機が発生した場合の他の部署が行うべき危機管理」のようなテーマを検討され、マイナスをプラスに転じる試みを期待しています。




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