サイト案内(目次)
前稿では、主に契約保証金を例に、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」(一般に「端数計算法」)の運用について、この法律を適用すべきでない場合にまで適用される傾向にあることを説明しました。
本稿では、もっと一般的な、売買代金や委託料などの端数処理について説明します。なお、前稿では、「地方財務実務提要」の記載が誤っていたことに触れましたが、現在この書籍の第3巻16章7節「その他諸法関係」に登載されている端数計算法についてのQ&Aは、私法上の債権債務に係る事項については、私からみてもいずれも妥当です。公法上の関係では、この法律が適用除外される「地方団体の徴収金」の範囲について、Q&A間で不一致があり、適当でない部分がありますが・・・。
本稿の記載は、私法上の債権債務に関する部分なので、国の解釈運用と一致していると思います。
債権債務の「確定金額」とは
「確定金額」については、端数計算法に定義がなく、法令用語として確立した定義があるような用語でもありません。文言に素直に「一つの契約を単位として支払うべき金額、受け取るべき金額として最終的に確定した金額」と解すべきであり、そのように解釈されています。
つまり、契約によって具体的な金額が決まるような債権債務は、契約の中で端数処理についての取り決めがあれば、それによって端数処理された後の金額が確定金額になるのです。その取り決めは、四捨五入でも切り上げでも構いません。
電気料金
電気料金については、各電力会社が「電力供給約款」を定めており、その中で料金の端数処理の方法が定められ、それに従って請求されます。その約款も含めて契約内容であり、それによって端数処理された後の金額が「確定金額」になるので、端数計算法の出番はありません。
一般の物品購入などの消費税等
物を買って消費税率を乗じると、1円未満の端数が付くことがあります。その場合、相手方は、それぞれの定めているところにより、切り上げたり切り捨てたりして請求してきます。
契約(発注)の際、端数処理について合意していればそれが契約内容であり、「確定金額」ですが、契約書を作成しない場合のほとんどは、そんなことを決めずに発注しているでしょう。それは、多くの場合、自治体側は相手方の定めに従うことを承認していると解釈すべきです。
地方公共団体だから絶対に切り捨て以外の請求書は受け付けないなどと突っ張る必要はありません。切り捨ててくださいと言えば応じてくれる業者が多いでしょうが、本来はそんな理屈は通らないと思います。
単価契約の支払
単価契約の論点は、どの単位をもって一つの債務とするかという点です。
一般的には、1回の発注を一つの売買契約と捉えて端数処理して支払えばいいでしょうが、一定期間ごと(例えば1か月ごと)に集計して請求する旨を定めている場合も多いようです。そんな場合には、その集計した数量に単価を乗じた金額(消費税が付く場合はそれも付加)した金額を債務として確定した金額と考えるべきです。
このような単価契約では、一定期間ごとに計算した金額をどのように端数処理すべきか、契約書で定めておくことが多いと思います。私は、そのようにしていました。
「端数計算法の誤った適用3」 に進む。
にほんブログ村 参加しています。