地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2019年03月

  サイト案内(目次)

 会計年度任用職員の制度導入まで1年ほどになりました。我が小規模自治体も含め、まだ、県や周辺市町村の様子見をしている団体が多いようです。

 私が今、最も危惧しているのは、八百長のような公募選考が行われたり、外部から出来レースを疑われたりするケースが出るのではないかということです。

 

更新の制限の問題

 現在、多くの地方公共団体では、非常勤職員については1年ごとの契約としたうえで、更新は4回までとか、5年を超えて更新しない等の制限を定めています。我が自治体も、地元の県庁に倣って、そのようにしています。その扱いを変更しなければならないのか苦慮しているところです。

 総務省の「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」には、「募集に当たって、任用の回数や年数が一定数に達していることのみを捉えて、一律に応募要件に制限を設けることは、平等取扱いの原則や成績主義の観点から避けるべきもの」とされています。

 私としては、県や周辺自治体が、このマニュアルの記載を杓子定規に守ろうとするのかという点に注意しています。私としては、「建て前としてはそうでしょうが・・・」という気持ちです。

 

更新制限を廃止した場合の弊害

 現在のような制限を廃止した場合、多くの弊害が予想されます。

 公募して、現職の職員と新規に応募した人を「公平に」選考考査することになります。非常勤職員の応募者と面接する場合、その応募者のこれまでの経験等からどの程度使えそうか、即戦力になりそうかという観点が中心になります。一般的には、現職と新人とでは、優劣の差は明らかです。

 そんな面接をすれば、新規応募者には無駄に期待させ、外部からは八百長、出来レースのように思われてしまいそうです。

 

 今も更新する際は、公募はしませんが、「選考」はしているのです。上限が明確にされていた方が、非常勤職員の側も生活設計しやすいとも考えられます。また、更新の問題については、新たな規定が加わったわけでもないのに、運用だけを変更することを求められているわけで、やや無理があります。
 また、国のQ&Aも、絶対にダメと言わず、やや及び腰の感じもします。

 昔「赤信号、みんなで渡れば・・・」などという言葉もありましたが、なし崩し的に現在のような運用になることを期待しています。

 にほんブログ村 政治ブログ 地方自治へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 

 サイト案内(目次)

超過勤務命令の上限設定

 
民間で平成314月から実施される「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」による時間外労働の上限規制に呼応し、国家公務員についても人事院規則が改正され、上限規制が導入されます。地方自治体も同様の対応を求められており、既にほとんどの自治体では、職員の勤務時間、休暇等に関する条例の改正を終えていることと思います。

 ただ、条例は、具体的な内容は「規則で定める」としていることから、「職員の勤務時間、休暇等に関する規則」の改正を3月中に行うべく、作業を急いでいる自治体が多いことと思います。改正自体は、人事院規則と同じようにすればいいだけなので、さほど面倒ではないでしょう。
 「超過勤務命令の上限を設定する条例改正」 参照

 

サービス残業対策

 多くの自治体が頭を悩ませているのは、サービス残業対策です。管理職の職員は、単に命令に基づく時間外勤務を管理すればいいわけでなく、サービス残業がないかどうかもチェックすることを求められています。

 時間外勤務命令がないのに不自然に早く出勤したり、遅くまで残っていたりする職員がいれば、サービス残業ではないのか、確認しなければなりません。パソコンのログイン時刻なども把握しなければならないようです。民間企業では、早く職場に来てもパソコンを立ち上げてはいけないというルールが作られたところもあるようです。

 交通機関の事情、渋滞を避けるなどで、始業時間よりかなり早く出勤する職員は、どこの職場でもいるでしょう。彼らについては、仕事をしているわけではないという証拠を残さなければなりません。厄介なことです。

 

 そこまでやっても、持ち帰り残業を完全に防ぐことはできず、結局、そんな方向に追いやられる職員が出る可能性があります。管理する立場の職員は、各メンバーの仕事量、能力をよほど綿密に管理しなければなりません。

 管理を強めるだけでは、職員を追い詰める結果になります。これからの管理職は、従来以上に大変でしょう。

 にほんブログ村 政治ブログ 地方自治へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。


  サイト案内(目次)

 芸能ネタにはあまり興味がないのですが、この騒動には、危機管理の観点から関心を持ちました。

 昨今、事態を収束させようとして、その対応を誤り、かえって火に油を注いでしまったという事例をしばしば目にします。

 各地のいじめなどの問題で、学校や教育委員会が、むりやりいじめがなかったという結論を出して幕引きを図り、被害者側の反発を招き、結論がひっくり返されたりもしています。事件を矮小化して終わらせ、一件落着させるという手法が通用しないことは、もはや危機管理の常識と言ってもいいと思うのですが、いまだにそれをしようとする組織が後を絶ちません。

 

見通しの甘さ

 今回、運営会社のAKSが、なぜ被害者である山口さんの納得も得られないような内容を発表して幕引きができると考えたのでしょうか?あの発表の内容では、山口さんが納得しないことを予想できなかったはずはありません。実際、第三者委員会の報告書の内容そのものにさえ、山口さんや他の一部のメンバーが不満を抱いていたことをAKSも会見の中で認めざるを得ない状態でした。

 常識的に考えれば、そのような状態で会見を開き、幕引きができるはずがありません。

 

 私の想像ですが、あの会見に山口さんが納得しないことはAKSも承知していたけれども、一応一区切りつけた形だけ整えようとした。その後、山口さんらが不満を述べようとも、黙殺して、沈静化するのを待つつもりだった・・・。

 そんなところだろうと思います。山口さんが、会見の途中にツイッターで乱入してくることは想定していなかったのでしょう。要は、考えが甘かったわけです。誰か、山口さんに入れ知恵した人がいたのかもしれません。

 AKSもマスコミに対する自分たちの影響力を過信していたのかもしれません。

 

危機管理の鉄則

 今回、AKSは、加害者側に加担していた一部メンバーを守り、そのことによって自分たちの利益をも守ろうとしたのでしょう。

 不祥事が起きたとき、中途半端に何かを守ろうとすることは墓穴を掘ります。一切を明らかにすることが、最善の方策のようです。

 にほんブログ村 ニュースブログ ニュース感想へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。


  サイト案内(目次)

 3月22日、
石田総務相が記者会見で、大阪府泉佐野市と静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町に対する2018年度特別交付税3月配分額について、災害関連を除いてゼロとしたことを明らかにしました。いずれも、総務省の指導に反してふるさと納税で多額の寄付金を集めた自治体です。泉佐野市が前年度比19500万円減の6200万円、小山町は災害分を含めゼロで同7400万円減、高野町は23300万円減の2000万円、みやき町は2900万円減の200万円とのことです。

 石田総務相は「財源配分の均衡を図る観点で行ったもので、過度な返礼品を行う自治体へのペナルティーという趣旨ではない」と述べたとのことですが、額面通りに受け取る人は少ないでしょう。

特別交付税は、地方交付税総額の6%について、災害復旧や地域医療などの「特別な財政需要」が生じた自治体に12月と3月の年2回配られるものです。総務省は、各自治体の財政力などから配分額を決めるに際し、今回の算定からふるさと納税収入の一部を反映させた結果と説明しているようです。

 

地方交付税は地方の固有財源だ!

 地方交付税は、地方の固有財源です。制度上、所得税等の国税の一定割合が、地方公共団体の取り分と決まっており、地方交付税法等のルールに基づいて全国の地方公共団体に配分されるものです。

 ただ、配分のルール作りを総務省が行い、また、特に特別交付税については明確なルールが定められておらず、総務省の裁量でどうにでもできる部分が大きいため、今回のようなことが起るのです。また、今回は、町も対象になっているので、3県も総務省に言われるまま3町への配分を減額したのでしょう。

 私も、泉佐野市等のようなやり方は不適当だとは思います。しかし、そもそも制度に欠陥があるため、このような対応をする市町村が現れるのです。また、今回の総務省のやり口は、完全な後出しじゃんけんです。

 総務省が、自治体を総務省の意向に従わせるために、地方の固有財源であるはずの交付税をこのように使うことについては憤りを覚えます。

 

過去にも交付税の配分で政策誘導

 これまでも、総務省(旧自治省)は、交付税を使って自分たちのやりたい政策を推進してきました。市町村合併の推進住民基本台帳法ネットワーク景気対策の公共事業などです。

 「大金を無駄にした「住民基本台帳カード」システム」 参照

 

 地方交付税が総務省による地方支配の道具に使われないよう、明確なルールと監視が必要です。

 にほんブログ村 ニュースブログ ニュース感想へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。


 サイト案内(目次)

 2週間前、我が家に八朔が一箱送られてきました。昨年、某町に1万円をふるさと納税していたことの返礼品です。

ふるさと納税の制度については、総務省が見直しを表明し、大阪府泉佐野市などが反発して騒動になりました。どちらの言い分も一理あると思います。ただし、自分でもこの制度を利用していながら何ですが、この制度はそもそも欠陥だらけで、返礼率を制限したり地域の産品に限定したりなどの微修正では足りず、根本的な修正が必要だと思います。

 

現行制度の欠陥

1 税金を納める代わりに返礼品目的でふるさと納税をする人がほとんでである。

2 裕福な人ほど特典が受けられ,不公平である。

3 適当な返礼品のない地域にとって不利になる。

4 行政サービスの受益と負担が対応せず、「税」として逸脱している。

 

 そもそも、今のような制度では、どういう意義があるのでしょうか?

 国全体として税収が増えるわけでもなく、ふるさと納税した人だけが実質負担2千円でいろいろな返礼品をもらえるだけです。

 返礼品に選ばれた品物の生産者等だけにはメリットがあるかもしれませんが、国全体としては消費が増えるわけではなく、店で買う代わりに返礼品としてもらうだけです。しかも、適正価格が5千円くらいの品物を実質負担2千円でもらえることで、市場をゆがめています。国全体としては、何のメリットもない制度だと思います。誰かの安易な思い付きで始めたような、馬鹿馬鹿しい制度だと思います。

 

 行政サービスを供給している住所地の自治体に納めるべき税金を、返礼品目当てに縁もゆかりもない自治体に納められたのでは、住所地の自治体はたまったものではありません。

 

制度の方向

 もともとの名称のとおり、寄付先を出身地の自治体に限ればいいと思います。

 私も、高校卒業まで在住してお世話になった自治体に、大人になってからは2年しか住んでおらず、2年分しか住民税を納めていません。両親がそこに納税していたとはいえ、私としては後ろめたいような気持ちもあります。そこで何回かは、故郷の市にふるさと納税をしています。

 こういう形の寄付に限定するか、制度を廃止したほうがいいと思います。

 現在のような制度では、社会としてはマイナスの意味しかないと思います。

 にほんブログ村 政治ブログ 地方自治へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。


↑このページのトップヘ