一般に自分の住む自治体が西村先生のような大家の推理小説の舞台になることは、地域おこしにもつながり、うれしいことなのですが、さすがにこの形では、群馬県安中市もあまりうれしくないだろうと思います。

 題名はこういう題名ですが、長野新幹線(現北陸新幹線)の車内で事件が発生したわけではありません。事件は、東京都世田谷区、横浜市、松江市で起こっています。それらの事件のきっかけになっているのが、安中市が新幹線開業を当て込んで行った安中榛名駅前開発の失敗というわけです。題名が、少々こじつけで、苦しい感じです。あそこの駅周辺がどういう状況になっているか私は行ったことがないので知りませんが、このお膳立ては安中市としては文句の一つも言いたいところでしょう。

 

 西村先生といえば、緻密なストーリー構成に定評がありますが、この作品にはそれが感じられません。

 この作品では、上場企業の資産と社長個人の資産が区別されずに同じものとして扱われています。身代金の出所が法人の資産なのか、社長の個人資産なのかが一切説明されていません。安中市への寄付も、会社がするのも不自然ですが、社長個人ではそんなに資産があるとは思えず、それも不自然です。

 法人、上場企業の基本的な仕組についての誤解が多すぎます。

 また、社会的地位のある上場企業社長3人が、初対面で共謀して犯罪に走ることは、考えられず、荒唐無稽すぎます。

 

 さらに、三つの誘拐事件の動機、主犯は説得力が乏しいながらも一応説明されていますが、実行犯については捜査もされず、何も明らかにされていません。

 

 新人がこんな推理小説を出版社に持ち込めば、即座に追い返されるでしょう。出版社は、先生の名声をもっと大切にし、おかしな作品は出版しないようにしていただきたいと思います。

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