債務負担行為と長期継続契約は、いずれも、複数年にわたる契約や、新年度開始早々に役務の提供を受ける必要がある契約などに使われる制度ですが、手続や効果に違いがあり、うまく使い分ける必要があります。

 

債務負担行為と長期継続契約の違い

 債務負担行為は、あらかじめ契約等をする年度の予算の中で議決しておく必要があります。それほど手間のかかる書類ではありませんが、議会にかけるという面倒くささがあり、議会担当部局が嫌がることもあるかもしれません。

 長期継続契約は、一度条例(条例の委任を受けた規則も可)で契約の種類を指定しておけば、契約の都度議会に諮る必要はなく、便利です。しかし、自治法第234条の3で、「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない」とされているので、契約書に「予算が否決、減額された場合には契約の取消し又は見直しをする」旨の条項を盛り込むことが一般的です。相手方が、こんな勝手な条件を嫌がるかもしれません。

 相手方がどうしても嫌がれば、債務負担行為を設定してそのような条項を設けずに契約を締結しなければなりません。

参 考

自治法第214条(債務負担行為) 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

自治法第234条の3(長期継続契約) 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

 

様々な工夫

 庁舎の清掃等の維持管理は、ほとんどの自治体が外部に委託しています。新年度の4月から翌年の3月末までの1年間を委託期間とする場合、新規に落札した業者が履行の準備を整える時間等を考慮すると、2月中には入札を済ませるべきでしょう。3月の中旬以降に入札したのでは、現行の業者ばかりが有利な不適正な入札にならざるを得ません。

その場合、入札条件の中に「必要な予算が議決されなかった場合は契約しない」「契約締結は3月〇日(翌年度当初予算の議決予定日以降の日)から3月末日までに行う」旨を加えておきます。そうすれば、契約の時点では翌年度予算は議決されているので、契約書自体には「予算が否決、減額された場合には契約の取消し又は見直しをする」旨の条項など必ずしも盛り込む必要はないはずです。
 翌々年度までの支出を伴う契約はこの手法は使えませんが、41日から翌331日までを役務提供期間とする一般的な契約は、大丈夫です。そのような工夫をしている自治体もあります。

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