著者は、国際医療福祉大学大学院教授で、参議院厚生労働委員会調査室客員調査員や多くの政府委員会の委員を務めておられる医師です。本書には、「地域医療構想、地域包括ケアはこうなる!」という副題が付いています。

 団塊の世代の700万人がすべて後期高齢者(75歳以上)になる2025、その前後から発生を予想される様々な社会問題をいう2025年問題」という言葉が知られるようになって、かなりの年月が過ぎました。国も医療費の抑制、年金の抑制など、様々な対策を打ち出しています。年金、医療費など、これらの問題が報道されない日はほとんどないでしょう。

 

 本書は、2014年に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(いわゆる「医療介護一括法」を受けて、医療や介護が今後どのようになっていくのか、どのようにしなければいけないかを解説しています。

 その中で、地域医療構想、診療報酬改定と病床機能報告、地域包括ケアシステムなどが説明されています。

 

 私も以前には県立病院勤務、福祉部門勤務などを経験していますが、ここ数年遠ざかっていて、知識が不足しています。まだ行政に関与している者として、基礎的な知識を身につけようと思って、本書を手に取りました。

 恥ずかしいことに、私は、地域医療計画や2次医療圏と、地域医療構想や構想区域がどう違うのか、なぜ同じようなのが二つあるのか、理解していませんでした。本書の次の記述を読んで、おおむね理解できました。

「地域医療構想は『将来の医療提供体制に関する構想』であることから、構想区域は現時点での医療提供体制の確保を図る目的で設定された『2次医療圏』とは異なり、2025年へ向けて大きく変貌が予想される地域の実態を見据えた将来へ向けての区域設定となる。」

 

 本書を読んで、政府が考えている医療や介護の今後の方向性はおおむね理解できましたが、現時点(2019年)でそれがうまく進んでいるようには見えません。地域に医療崩壊が迫っている危惧が払拭できません。

 地域包括ケアがうまく進展すれば、かなりの問題は解決できるかもしれませんが、あまり進展しているような気がしません。

 病床配置の問題など、各地域(市町村等)が自地域の部分最適を目指すと、県や国全体としての全体最適からは遠ざかるのでしょう。私ごときが悩んでも仕方のない問題であることは承知していますが、心配せざるを得ません。

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