この作品は、20192月に初版が発行されています。近年の作品は、ミスや不自然な点の目立つものが多いのですが、本書にはそれが比較的少なく、楽しく読み進めました。

 しかし、やはりいくつか変な点が見受けられます。

 

 冒頭の事件に居合わせて事件に興味を持って調べ始めた鉄道ファン、彼から話を聴いて取材を始めた新聞記者が、最初に登場しただけで放りっぱなしです。特に新聞社が動けば何らかの影響がないはずがなく、忘れてしまったのでしょうか?

 

 主犯の男Aから指示された女性(医師)がそれと知らずに青酸カリ入りのビールを被害者(元刑事)に飲ませたことになっています。しかもこの女性は、他の乗客にも飲み物をあげているのです。他の人には普通の飲み物を、被害者にだけは青酸カリ入りの飲み物を渡さなければならず、知らないでできるとは考えられません。

 また、青酸カリなら飲めばすぐに苦しみだすはずで、車内でそんなことになればすぐに騒ぎになり、終点についてから発覚するなどは考えられません。

 犯行の細部の設定が、かなりアバウトで、「ありえない」と思ってしまいます。

 また、Aの首相に対する「負い目」が不自然です。ハンティングのイベントの際のAの過失を首相が隠してあげたことになっていますが、イベントの中での事故を隠せるとも思えず、また、そのために殺人を犯すほどの負い目とも思えません。かなり不自然な感じがします。

 

 今の世情を反映してか、登場人物がこんなことを言っています。現政権についての作者の意見が反映されているような気がして、その部分には、賛同しています。(この小説はフィクションであり、言及されている首相も架空の人物です。)

 「今の内閣は、総理が個人的に作り上げたお友達内閣という人もいますがね。私はコネで作られた内閣だと思っているんです。」「名家育ちの首相らしいやりかたですよ。」

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