サイト案内(目次)へ

「逐条地方自治法」の説明

 長期継続契約については、自治省、総務省が代々監修している「逐条地方自治法」にその制度創設の趣旨、目的が次のように説明されています。少し長くなりますが、引用します。

「改正前においてはこのような契約は、普通地方公共団体が毎年更新を繰り返していると解するよりほかになかったのであるが、特に電気、ガス、水の供給又は電気通信役務の提供を受ける契約すなわち電燈電力、ガス、水道、電信電話等のような契約は、およそ普通地方公共団体の存続する限り、一日も欠かすことのできないものであり、個人の私生活に例をとれば、それはいわば生活をするうえで絶対的に必要なサービスであるから、毎年更新を繰り返すまでもなく、長期にわたって契約を締結できることとするのが合理的であることはいうまでもない。これらの契約については、別段第214条の規定による債務負担行為として予算でこれを定めることなく、直接本条の規定によってこれを締結することができるのである。」

 

この解説は、制度創設直後の昭和40年に発行された版から最新版まで変わっていません。要約すると、「長期にわたって不断に必要なサービスに関する契約は、毎年更新を繰り返すまでもなく、長期にわたって契約を締結することを容認すること」が趣旨、目的であると言っています。

 

もっとも本質的な部分をぼかしている!

「逐条地方自治法」の解説は、意図的かどうかは分かりませんが、重要な言葉が省略されていて、正確ではありません。それが、現在に至るまでこの制度の運用について誤解を生む要因になっていると思います。

昭和38年の制度化以前、自治体では毎年、年度初めに電力、水道等の契約を繰り返していて煩瑣であったなどという実態はありませんでした。したがって、煩瑣の「解消」が本来の目的であったはずはありません。制度化以前も、何らの手続もされないまま年度を超えて契約が継続され、料金の支払手続だけが行われていたことは間違いありません。

つまり、更新を繰り返す煩瑣を避けるためではなく、その違法状態の解消、適法化が本来の目的と考えられます。この本来の目的を正直に表明すれば、これまでが違法状態であったことを告白することになり、正確な表現を避けたものと推察されます。「逐条解説」中の「改正前においてはこのような契約は、普通地方公共団体が毎年契約を繰り返していると解するよりほかになかったのであるが、」という表現は、実際はそんな手続をしていなかったことを示唆しています。

 

毎年41日に契約更新を繰り返しても違法

 さらに、実際に毎年契約更新を繰り返したとしても、それが4月に入ってからでは違法状態の解消にはなりません。電気などのサービスは、職員が登庁する前から必要で、適法化するには年度開始前の契約締結を容認する以外にありません。この制度は、年度開始前の契約締結を容認することも本来の目的としていたと解釈せざるをえません。

 

年度開始前の契約締結を容認することによる違法状態の解消が制度創設の目的であったことは、不動産の賃借を考えても一層明確です。不動産の賃借は毎年4月1日から1年間の契約が繰り返されることが多かったと考えられますが、毎年4月1日午前0時に契約できるはずがなく、年度初めには未契約状態での不動産の使用、契約日付の遡りが繰り返されていたことは疑いがありません。これについて複数年の契約を認めたとしても、何年かに一回は違法状態が繰り返されることになり、それを回避するためには、事業年度開始前の契約を認めるしかありません。

 制度創設時には、立法者は、条文のとおり、債務負担行為と同様、役務提供年度の前年度の契約締結を容認し、これを重要な目的としていたことは疑いありません。我々公務員にとっては、当時も今も、事務煩瑣の解消などよりも違法状態の解消の方がずっと優先されるべきことは、言うまでもありません。
スポンサードリンク