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 東京都中央区の区立泰明小学校で、イタリアの高級ブランド「アルマーニ」のデザインによる新たな「標準服」が高価すぎると批判されています。最低限のセットで6万円ほど、替えのシャツまで含めると一式8~9万円ほどもするとのこと。保護者が苦情を言うのも当然です。

 

失敗学、危機管理論の貴重なサンプル

 この標準服の決定は、明らかに大失敗です。公立学校の使命を忘れ、経済的に困難な家庭もあることを無視した決定自体が、どんな立派な動機があろうと失敗です。

全国ニュースで批判を浴びるに至っては失敗であることは明らかで、途中過程でも引き返す機会を失するなど、決定後の様々な対応も失敗しています。まるで、失敗学の古典、「失敗の本質」(戸部良一ほか)で取り上げられているインパール作戦のようです。

 近年中に、ハーバードなどの、失敗学、危機管理論の講義レジュメに取り上げられるかもしれません。

 

失敗の数々

 行政職員として、数々の失敗を見聞きし、自らも失敗してきた私から見て、この件の失敗を列挙してみます。

1 常識、バランス感覚を欠く人物を校長に据えていたことが、まず、根元的な失敗でしょう。人事システムに問題があることは、明らかです。

2 この種の仕事は、通常の学校では副校長が中心になることが多いと思いますが、この件では副校長の役割が見えず、イエスマンだった可能性があります。副校長が適時に教育委員会に相談するなどすれば、防げていたはずで、人事配置も失敗しています。

3 利害関係者である保護者を関与させずに決定したこと、そんなやり方を許す組織であったことも、失敗です。

4 おおよその価格が明らかでない状態で導入を決めるなどは、ほとんど信じがたい失態です。

5 価格が明らかになり、高価すぎることが分かった時点で、引き返さなかったことも失敗です。関係者も、今になってみれば、アルマーニに賠償金を払うことになっても、新学期の一月くらい標準服の供給が間に合わなかったとしても、今の事態よりはましだったと思っていることでしょう。

6 区の教育委員会が、事態を把握することが遅かった失敗はもちろんですが、把握してからも、引き返させる決断をしなかったことも失敗です。断固として、計画を撤回させるべきでした。

7 私は東京都の仕組はよく知りませんが、一般的に、学校設置者は市(区)ですが、教員の人事権は都道府県の教育委員会が握っています。市(区)の教育委員会の幹部より有力校の校長のほうが立場が上のこともしばしばです。今回も、区教育委員会の指導には限界があったのかもしれません。それならば、都の教育委員会が前面に出て対応すべきでした。このようないびつな組織であることも、失敗を大きくした原因だと思います。

8 騒動になってからも学校側が公表した文書、校長の記者会見は、真正面から失敗に向き合っておらず、危機管理の観点からお粗末なものです。区や都の教育委員会が全面的に介入することをためらった結果と思われ、失敗でした。


  私たち、行政に携わる身としては、このような事件を教訓にして、適切な組織運営、意思決定に努めなければなりません。

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