ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 新公会計 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

カテゴリ: 新公会計

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一般的な簿記との違い  財務4表の性質

 新公会計で作成する財務書類は、基本的に、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書の4表です。(3表方式の場合も、行政コスト計算書と純資産変動計算書をくっつけただけなので、性質としては4表と同様)

 一般の簿記は、貸借対照表、損益計算書が必須で、キャッシュフロー計算書や株主資本等変動計算書を作成することも多く、これも含めれば4表です。

 私は、最初、新公会計と一般の簿記を比較して、貸借対照表は共通、行政コスト計算書は損益計算書に対応、純資産変動計算書は株主資本等変動計算書に対応、資金収支計算書はキャッシュフロー計算書に対応し、同じ仕組なのだろうと思っていました。その思い込みが、私にとって理解を妨げる原因になりました。

 

 一般の簿記では、貸借対照表と損益計算書の2つで一応完結しており、キャッシュフロー計算書と株主資本等変動計算書は、それを補完するものです。日々の取引を仕訳するときに、その勘定科目は貸借対照表と損益計算書の二つに集計され、完結します。

 一方、新公会計では、仕訳した勘定科目は、貸借対照表と行政コスト計算書だけでなく、資金収支計算書や純資産変動計算書にも集計されます。つまり、4表がすべてそろわなければ、完結しないのです

 その辺が、なまじ簿記の知識がある人にとっては、分かりにくいところだと思います。

 

一般的な簿記との違い  仕訳

 一般の簿記では、現金預金の増減は、「現金預金」という貸借対照表に集計される科目と、その相手方の科目に仕訳されます。備品を買って代金を払えば、備品の増と現金預金の減に仕訳され、給与を支払えば人件費などの経費の科目の増と現金預金の減に仕訳され、手数料を受け取れば受取手数料などの収益の科目の増と現金預金の増に仕訳されます。これらの科目は、すべて貸借対照表か損益計算書に集計されます。

 新公会計では、現金預金の増減については、日々の仕訳では貸借対照表に集計される科目ではなく、資金収支計算書に集計される科目に仕訳されます。これが、第一の相違点です。

また、その相手方の科目は、貸借対照表や損益計算書に集計する科目だけでなく、純資産変動計算書に直接集計するものもあります。税収や国庫補助金収入は、行政コスト計算書を経由せずに、純資産変動計算書で計上、集計されます。これが、第2の相違点です。

 

 この相違点さえ意識すれば、簿記をやったことがある人なら、それほど苦労なく理解できると思います。

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 総務省から出された「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」に沿って、各地方公共団体では平成28年度決算について財務書類等の作成の準備が進められています。私も、年度初めの仕事が一段落したので、担当者に任せきりにせずに、勉強を始めることにしました。

 

私のバックグラウンド

 私は、県庁で市町村課、出納局、一般部局での会計担当など、長年自治体の会計事務に携わり、職員研修などの講師を引き受けることも何度かあったので、従来型の自治体の会計制度については、一通りの知識はあります。

 また、企業会計についての実務経験はありませんが、仕事上のいろいろな場面で簿記の知識の大切さを実感していたため、机上の独学ではありますが、5年前に日商1級を取得しました。したがって、一通りの知識だけはあります。

 ただ、新たな公会計システムについては、全くの素人からのスタートです。

 

「新地方公会計統一基準の完全解説」って

 執務時間中はそんな時間はないので、手始めに、この本を図書館で借りて読んでみました。

 正直に言って、ほとんど役には立ちませんでした。

 以前に示されていた手法との変更点の解説ばかりがやたらに丁寧です。以前の手法など知らない者にとっては、読み続けるのが苦痛でした。基本的な仕組、特に一般の企業会計との違い、一般的な仕訳との違いなどの解説を期待していたのですが、そういう説明はあまりありません。

 仕訳例は載っているのですが、何の解説もなく、また、BS、PL、CF、NWという略称が注書きもなく使用されています。BS、PL、CFくらいは簿記の勉強をする中でも使うので意味は分かります。残るNWは純資産変動計算書だろうとは思うのですが、英語表記もなく、とても不親切な本だなと感じました。

 どんな読者を想定して書いているのか分かりませんが、これから新公会計を学ぼうとする地方公務員には不向きだと思います。

 

「統一的な基準による地方公会計マニュアル」(総務省)

 このマニュアルは、良かったです。単なるマニュアルではなく、基礎知識や考え方の解説もあります。上記のような解説書を読むよりも、直接このマニュアルを読み始めればよかったなと後悔しました。

 

 次稿から、この会計システムについて、私なりに気づいたこと、他の人にも参考になりそうなことを書いてみたいと思います。
 「統一的な基準による地方公会計の準備2」

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