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 地方公務員の定年前の早期退職者に対する退職手当については、各自治体の条例に基づき、一定の要件の者について、「勧奨退職」という割増制度がありました。これが、国家公務員については、平成25111日から「応募認定退職」という制度に切り替わりました。

 総務省では、地方も国に準ずるよう助言していますが、まだ、旧制度のままの自治体の方が多いようです。

 

従来からの「勧奨退職制度」

 制度の内容は、各自治体の条例で定められますが、おおむね、次のようなものです。

 《勤続25年以上で、定年の年齢から10歳を減じた年齢以上の者が、任命権者の勧奨を受けて退職した場合、退職手当算定の基礎となる退職時給料月額等を、定年までの年数1年につき2%加算する。》

 

 実際の運用としては、任命権者が、勧奨退職の要件に該当する勤続年数、年齢の職員に早期退職の希望の有無を照会し、希望した職員に対して勧奨の手続をするというやり方がほとんどだと思います。また、都道府県などでは、職位の高い職員(部長級など)について、58歳、59歳で勧奨するという慣行も行われていました。

 

「応募認定退職制度」

 応募認定退職制度は、任命権者が、①年齢、職位、勤務部署その他募集の対象範囲を特定する事項、②募集の期間(応募受付期間)、③募集人数、④退職すべき期日又は期間 等を明示、周知して募集するものです。一般に、勤続年数20年以上で、定年まで15年以内の職員が対象になります。応募者は、原則として認定され、退職手当算定の際に退職時給料月額等に、定年までの年数1年につき3%加算されます。

 

新旧両制度の比較

 応募認定退職制度の方が、年齢や勤続年数の対象が広く、また、退職手当の加算も大きくなっています。一方、対象者をあらかじめ特定して職員に周知しなければならず、融通が利かせにくい面があります。

 例えば、早期退職の募集期間が過ぎてから、30年以上献身的に働き、自治体に貢献してきた職員が家庭の事情などで辞めざるを得なくなった場合、従来の制度であれば、勧奨退職の手続を取って、これまでの労に報いることができます。応募認定退職制度では、募集期間が過ぎていれば、原則的にアウトです。

 また、職員にとっては対象になれば新制度の方が有利ですが、自治体の負担の面では、新制度の方が財政負担が大きくなります。

 

 結局、新しい応募認定退職制度は、早期退職の慣行のある国家公務員にとっては有利な制度だと思います。しかし、そのような慣行のない地方公共団体にとっては、よほど職員の年齢構成に歪みがあってそれを是正したい場合以外は、使い勝手が悪い制度のような気がします。無理に導入する必要はないと思います。

 応募認定退職制度の導入を求めている職員団体もあるようですが、この融通の利かなさを理解されているのか、疑問です。この制度の下で個々の職員のために融通を利かせようとすると、脱法的な妙な処理をすることになるのではないかと思います。