地方公務員災害補償法第1条は、「この法律は、地方公務員等の公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡をいう。以下同じ。)又は通勤による災害に対する補償(以下「補償」という。)の迅速かつ公正な実施を確保するため、地方公共団体等に代わつて補償を行う基金の制度を設け、その行う事業に関して必要な事項を定めるとともに、その他地方公務員等の補償に関して必要な事項を定め、もつて地方公務員等及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」と規定しています。
この法律に基づき、「地方公務員災害補償基金」という地方共同法人(以前は特殊法人)が設けられており、全国で統一的に補償事業を行っています。
公務災害補償制度の概要
補償の対象としているのは、公務上の災害と通勤災害です。
公務上の災害には、職務の遂行中又は出張の途中の事故のほか、任命権者が実施したレクリエーションに参加中の事故、公務上の原因による疾病なども含まれます。
通勤災害は、職員が住所と勤務先の間を合理的な経路及び方法により往復する途上で発生した事故等です。途中で飲み屋に寄り道をしたりした場合は、該当しないとされています。
補償の内容は、療養補償(治療等に必要な費用)、休業補償(療養のため給与を受けられないときの補償)、傷害補償(年金又は一時金。症状が固定して障害が残った場合などの補償)、介護保障、遺族補償(年金又は一時金)などです。
補償の対象、内容とも、民間の労働者災害補償保険制度(労災)とほぼ同様です。
地方公務員全員が対象ではない
地方公務員災害補償法に基づく補償制度は、なぜか常勤の職員だけを対象としています。つまり、非常勤の職員はこの制度の対象ではありません。非常勤の職員のうち、現業の職場(現場の土木事務所等)の職員は、民間と同じ労災制度の対象になりますが、非現業の職場(役場の本庁など)の職員はその対象からも外れ、各地方公共団体がそれぞれ条例を定めて補償することになっています。
地方公務員災害補償法第69条 地方公共団体は、条例で、職員以外の地方公務員(特定地方独立行政法人の役員を除く。)のうち法律(労働基準法を除く。)による公務上の災害又は通勤による災害に対する補償の制度が定められていないものに対する補償の制度を定めなければならない。
(注:「職員以外の地方公務員」とは、この制度の対象外の非常勤の職員のことです。)
2 地方独立行政法人は、職員以外の役員のうち労働者災害補償保険法の規定の適用を受けないものに対する補償の制度を定めなければならない。
3 第一項の条例で定める補償の制度及び前項の地方独立行政法人が定める補償の制度は、この法律及び労働者災害補償保険法で定める補償の制度と均衡を失したものであつてはならない。
さらには、特別職の地方公務員である消防団員、公立学校の学校医、学校歯科医等についても、それぞれの法律で公務災害補償制度が定められ、各地方公共団体が対応することになっています。消防団員、市町村議会議員などは、補償制度のための全国組織、基金が組織されています。
公務災害の制度などは、民間の労災制度と一本化してもいいのではないでしょうか?いくつもの制度に分かれていて非常に煩瑣であり、各地方公共団体は条例や規則の改正など制度のメンテナンスの手間もかかります。事故が起こった場合の対応ももちろん必要です。労災制度と別にいくつもの制度を乱立させておく必要はないと思います。
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