ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 給与条例主義 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:給与条例主義

 田布施町で2020年に発覚したパワハラ問題についての当ブログの記事にいただいたコメントから、田布施町では職員の勤勉手当についても違法に多く支給していたことを知りました。同町のホームページで、町議会の令和21126日臨時会の会議録を閲覧したところ、町長ほか執行部が大きな誤解?をされているようで、他自治体でも同様の誤解があるかもしれないので、注意喚起の意味でご説明します。
 「尻すぼみに終わった田布施町のパワハラ調査」

 

田布施町の勤勉手当の問題

 この問題、平成30年度には一応その後の支給については是正されたようです。

 国家公務員では、期末手当の基礎額には扶養手当が含まれ、勤勉手当の基礎額には扶養手当は含まれません。これは、期末手当は生活給的な性格が強いためと思われます。地方自治体のほとんども国家公務員と同様ですが、一部、勤勉手当の基礎額にも扶養手当を加えている自治体があり、国(総務省)は是正を求めています。

 そのような自治体には二通りあり、条例でそのように定めているところと、条例は国家公務員と同様の定め方なのに実際の支給では勤勉手当の基礎額に扶養手当を加えてしまっているところです。

 前者の、条例でそのように定めているところは、不適当ではありますが違法とまでは言えません。一方、後者は、条例に反して過大に支給しているので、明らかに違法です。田布施町は後者だったようです。おそらく、県(市町村課)を通じて流れてくる条例準則(条例(例))どおりの改正を続けておられたのだと思います。

 田布施町は、平成30年度に是正しましたが、過去の不正支出分は放置したようです。

 

問題が発生した時期

 令和2年11月臨時会の会議録を見ると、当局側の説明におかしな点、ごまかしが多く見受けられます。

 国がこのような指導を平成26年の総務省通知(人事評価を勤勉手当に反映させることを求める等の内容)から始めたような説明をしていますが、ずっと以前からされていました。私の記憶では、平成12年ころには既にそのような指導が行われていたと思います。平成26年の通知でこのことに触れているのは、勤勉手当に関連することなのでついでに念押ししているだけです。

 また、国の指導は、条例で勤勉手当の基礎額に扶養手当を加えてしまっている自治体にも是正を求めるもので、条例違反をしているとんでもない自治体があることまでは想定していないのかもしれません。

 

職員団体との協議と給与条例主義

 町長は議員さんからの質問に対し、「勤務条件というのは、職員組合と合意をして実施をするということが前提になっておりますので、そういったことで、3、4年協議をして、是正にするまで時間がかかったということで、まったく無視をしたわけでございませんで、国の方針に沿ってですね対応はしてきたことが事実でございまして、少し時間がかかったということではございますが、3年前に是正はいたしております。」と答弁されています。

 これは、給与条例主義を全く理解されていない答弁です。公務員の職員団体には給与等の勤務条件に付いて労働協約を締結する権限はなく、条例で決まっていることを拒否することなどできません。協議が長引いたなどという言い訳は通用しません。丁寧に説明だけして、すぐに条例通りに支給すべきでした。

 詳しくは「地方公務員の労働基本権の制約と給与条例主義等」 参照願います。

 

 私は、当局が職員団体と本当に協議を重ねていたか疑問に感じています。私が職員団体の幹部なら、条例違反の違法な運用の継続を当局に求めるような危険なことは、恐ろしくてできません。

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労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権の3種)は憲法第28条で保障されていますが、公共の福祉による制約を受けます。公務員については、その地位の特殊性と職務の公共性にかんがみ、一定の制約が行われ、その代わりとして法定勤務条件の享有、人事院・人事委員会による給与勧告等の代償措置が取られています。

 

地方公務員の労働基本権の制約

 地方公務員も、警察職員と消防職員を除き、団結権は認められており、ほとんどの地方公共団体には「職員団体」があります。

 適法な職員団体は、当局と団体交渉をする権利はありますが、団体協約を締結する権利は有しません。ただし、法令(条例を含む。)に抵触しない範囲で書面による協定は締結できることになっています(地公法55⑨)。

 公営企業職員や技能労務職員は、団体協約を締結することもできますが、協約の効力には一定の制約があります。

 争議権は認められていません。

 

給与条例主義等との関係

 「労働協約」は、一般に、使用者が定める就業規程、給与規程等に優先する強い効力を持ちます。

 一般の地方公務員について、団体交渉権を認めながら団体協約締結権は認めないという中途半端な形になっているのは、勤務条件条例主義、給与条例主義からくる制約です。勤務条件や給与の基本的な事項は条例で定めなければならないというこの原則からすれば、これらを定める労働協約など認めることができません。

 給与や勤務条件は議会で決めるというこの原則は、労働基本権制約の代償措置という性格も有していますが、親方日の丸で倒産の心配のない公務員労働者が労使交渉で過大な勤務条件を勝ち取ってしまうことを防止するためでもあるのです。私は、後者の意味合いの方が主であると考えています。

地方公務員法第24条第5項
 
職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

 

 勤務条件を変更しようとするときは、当局は職員(団体)に説明して誠実に協議をする必要があります。しかし、合意しなければ改正条例案を議会に付議することはできないという制約まではありません。

 職員団体側もその限界を承知しているため、人事院、人事委員会の勧告に基づく給与の減額等の不利益な変更も、最終的に当局と合意に達して議会に諮られるのが一般的です。議会で可決され、条例が成立した後は、当局側も職員団体側もそれに違反し、または違反する運用を要求することはできません。

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