労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権の3種)は憲法第28条で保障されていますが、公共の福祉による制約を受けます。公務員については、その地位の特殊性と職務の公共性にかんがみ、一定の制約が行われ、その代わりとして法定勤務条件の享有、人事院・人事委員会による給与勧告等の代償措置が取られています。
地方公務員の労働基本権の制約
地方公務員も、警察職員と消防職員を除き、団結権は認められており、ほとんどの地方公共団体には「職員団体」があります。
適法な職員団体は、当局と団体交渉をする権利はありますが、団体協約を締結する権利は有しません。ただし、法令(条例を含む。)に抵触しない範囲で書面による協定は締結できることになっています(地公法55⑨)。
公営企業職員や技能労務職員は、団体協約を締結することもできますが、協約の効力には一定の制約があります。
争議権は認められていません。
給与条例主義等との関係
「労働協約」は、一般に、使用者が定める就業規程、給与規程等に優先する強い効力を持ちます。
一般の地方公務員について、団体交渉権を認めながら団体協約締結権は認めないという中途半端な形になっているのは、勤務条件条例主義、給与条例主義からくる制約です。勤務条件や給与の基本的な事項は条例で定めなければならないというこの原則からすれば、これらを定める労働協約など認めることができません。
給与や勤務条件は議会で決めるというこの原則は、労働基本権制約の代償措置という性格も有していますが、親方日の丸で倒産の心配のない公務員労働者が労使交渉で過大な勤務条件を勝ち取ってしまうことを防止するためでもあるのです。私は、後者の意味合いの方が主であると考えています。
地方公務員法第24条第5項
職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。
勤務条件を変更しようとするときは、当局は職員(団体)に説明して誠実に協議をする必要があります。しかし、合意しなければ改正条例案を議会に付議することはできないという制約まではありません。
職員団体側もその限界を承知しているため、人事院、人事委員会の勧告に基づく給与の減額等の不利益な変更も、最終的に当局と合意に達して議会に諮られるのが一般的です。議会で可決され、条例が成立した後は、当局側も職員団体側もそれに違反し、または違反する運用を要求することはできません。
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