ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 退職手当 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:退職手当

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 1月末までに、職員の退職手当改定の条例改正について、いつ施行するか、市町村関係の動向が固まってきました。市町村の多くは、年度途中での改定を避け、平成3041日施行になりそうな状況です。

 地方公務員の退職手当改定の行方3

 

 さらに、私の住む県では、新たな進展がありました。

 県内最大の市が職員団体と41日施行で合意したこと、私の古巣の県が31日施行(2月県議会の冒頭提案)を決めて22日に職員団体に通告して交渉を打ち切ったこと、この2つです。

 

 県の対応と市町村の大勢が食い違ったことから、わが小規模自治体も難しい判断になりました。先日、この状況を長に説明し、協議した結果、わが自治体は、41日施行で改定することとし、職員団体に提示しました。

 

 公務員の退職手当について民間の厳しい意見があること、国家公務員に準じることが原則であることは十分承知したうえで、私がこのように判断し、動いた理由は、次の通りです。

 

1 そもそも給与自体が、国家公務員よりかなり低いこと。また、今の退職者の世代は、若いころ民間よりもかなり低い給与に甘んじていた人たちであること。

2 今になって支給率を改定することは、昨年の夏ころから現行の水準を前提に勧奨退職の手続を進めてきた職員たちを裏切る結果になること。

3 駆け込み退職が出て、混乱する可能性もわずかながらあること。駆け込み退職はほとんど出ないと思うが、それは、退職予定者の使命感、責任感によるもので、それに甘えて職員に経済的損失を負わせることは、信義則に反する気がすること。

4 多くの自治体の条例と同様、わが自治体の条例も、60歳に達していれば年度途中で退職しても定年扱いになる。つまり、3月生まれの職員だけが駆け込み退職もできず、退職者間で不公平が生ずること。

5 改定条例を3月に施行し、30年、40年一生懸命働いてきた職員に、最後にそういう仕打ちをすることは、最後に腹立たしい思いを残しかねず、情として忍びないこと。

6 民法では期間の定めのない雇用契約は解約の申し入れから2週間で終了することになっている。また、自治体によっては、退職する場合は10日前までの申し出を服務規程などで義務付けている。つまり、退職しようとする場合は、退職の意思表示から退職の日までに相当の日数を置くことが社会通念上の常識である。したがって退職に関する制度を改定しようとするときは、施行日までに相当の周知、検討の期間を置くべきであり、それを欠くのは、信義に反するのではないか。

 かなり心情的な理由も混じりますが、これが私の正直な気持ちです。

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 この問題が、ほとんど騒がれず、静かなのが、不気味なほどです。

 多くの地方自治体の当局は、12月中に職員団体に対し、退職手当を引き下げる改定を年度内に施行する旨を提案し、交渉に入っていると思います。111日の時点で、その交渉にほとんど動きがなく、時間だけが過ぎている印象です。

 「退職手当の改定」

 「地方公務員の退職手当改定の行方」 参照

 

当事者にもほとんど知らされていない

 私の古巣の県庁でも、近隣の自治体でも、今年度末の退職予定者に対する説明はほとんど行われていないようです。職員団体も、あまり大々的な抗議活動を展開していません。多くの退職予定者は、自分の退職手当が減額されるかもしれないということを知らずにいます。

 

自治体の長、担当者の本音

 各自治体の担当者は、年末からさかんに電話などで情報交換をしています。そんな中から、長や担当者の本音も垣間見えてきます。

 多くの首長や担当者は、年度途中での改定は好ましくないと考えており、4月1日施行の流れになることを期待していますが、先頭を切って新年度からの施行にすることは避けたいと考えているようです。だから、41日施行に踏み切る都道府県が現れれば、一気にその方向に流れる気がします。

 一方、財政難のため年度内施行にしたかったり、総務省の指導に忠実にあろうとする長、担当者もいます。職員団体の抵抗が少ないことから、交渉を打ち切って年度内施行を打ち出すタイミングをうかがっているようです。これらの自治体も、そのような流れができることを期待して、情報収集に励んでいます。

 

職員に周知されないことの解釈

 改定する予定であれば、当事者である退職予定者に説明すべきことは当然です。それがないことについて、私は二つの可能性を考えています。

 一つは、当局として、年度内施行などするつもりがなく、混乱を避けるため沈黙している場合です。職員団体も当局の意向を察知しているかもしれません。

 もう一つは、年度内施行を明言して退職予定者に説明した場合、駆け込み退職が発生することを恐れ、ぎりぎりまで公表せずに引っ張ろうとしていることも考えられます。後者であれば、職員への裏切りであり、不誠実な態度です。

 

 引下げ改定自体はやむを得ないことですが、この年度内施行を強行することはあまりにも筋悪であり、多くの団体が4月1日施行とされるよう期待しています

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 地方公務員の定年前の早期退職者に対する退職手当については、各自治体の条例に基づき、一定の要件の者について、「勧奨退職」という割増制度がありました。これが、国家公務員については、平成25111日から「応募認定退職」という制度に切り替わりました。

 総務省では、地方も国に準ずるよう助言していますが、まだ、旧制度のままの自治体の方が多いようです。

 

従来からの「勧奨退職制度」

 制度の内容は、各自治体の条例で定められますが、おおむね、次のようなものです。

 《勤続25年以上で、定年の年齢から10歳を減じた年齢以上の者が、任命権者の勧奨を受けて退職した場合、退職手当算定の基礎となる退職時給料月額等を、定年までの年数1年につき2%加算する。》

 

 実際の運用としては、任命権者が、勧奨退職の要件に該当する勤続年数、年齢の職員に早期退職の希望の有無を照会し、希望した職員に対して勧奨の手続をするというやり方がほとんどだと思います。また、都道府県などでは、職位の高い職員(部長級など)について、58歳、59歳で勧奨するという慣行も行われていました。

 

「応募認定退職制度」

 応募認定退職制度は、任命権者が、①年齢、職位、勤務部署その他募集の対象範囲を特定する事項、②募集の期間(応募受付期間)、③募集人数、④退職すべき期日又は期間 等を明示、周知して募集するものです。一般に、勤続年数20年以上で、定年まで15年以内の職員が対象になります。応募者は、原則として認定され、退職手当算定の際に退職時給料月額等に、定年までの年数1年につき3%加算されます。

 

新旧両制度の比較

 応募認定退職制度の方が、年齢や勤続年数の対象が広く、また、退職手当の加算も大きくなっています。一方、対象者をあらかじめ特定して職員に周知しなければならず、融通が利かせにくい面があります。

 例えば、早期退職の募集期間が過ぎてから、30年以上献身的に働き、自治体に貢献してきた職員が家庭の事情などで辞めざるを得なくなった場合、従来の制度であれば、勧奨退職の手続を取って、これまでの労に報いることができます。応募認定退職制度では、募集期間が過ぎていれば、原則的にアウトです。

 また、職員にとっては対象になれば新制度の方が有利ですが、自治体の負担の面では、新制度の方が財政負担が大きくなります。

 

 結局、新しい応募認定退職制度は、早期退職の慣行のある国家公務員にとっては有利な制度だと思います。しかし、そのような慣行のない地方公共団体にとっては、よほど職員の年齢構成に歪みがあってそれを是正したい場合以外は、使い勝手が悪い制度のような気がします。無理に導入する必要はないと思います。

 応募認定退職制度の導入を求めている職員団体もあるようですが、この融通の利かなさを理解されているのか、疑問です。この制度の下で個々の職員のために融通を利かせようとすると、脱法的な妙な処理をすることになるのではないかと思います。

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