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役所が4月1日から必要なサービスの調達について、4月1日付けで締結しても、目くじらを立てるほどのことはないと思われるかもしれません。実は、多くの弊害があるのです。
弊害1 未契約の状態で役務の提供を受ける不適正が発生
実際に4月1日付けで契約を締結するとしても、午前0時に締結できるはずがありません。午前0時から、担当職員や決裁権者が登庁して契約を締結するまで、契約が途切れます。契約書への両者の記名押印が契約の確定要件とされているところが、民間との違いです。
(別稿参照:「4月1日の奇跡 虚偽公文書作成、大量発生の予感」)
庁舎の警備や、施設等の保守管理を途切れさせることは考えにくいので、未契約の状態で役務の提供を受けるという不適正な状態が発生します。
弊害2 業者との癒着が発生
4月1日付けで契約しようとすると、口約束(=未契約)の状態で役務の提供を受けるほか、3月中に業者に機器の設置等の準備をさせ、3月中に4月1日付けの見積書をもらったりします。一種の共犯のようなもので、気心の知れた業者との癒着というべき関係です。
軽い癒着かもしれませんが、この癒着に慣れてしまうと、もっと悪質な癒着、例えば、複数の業者との競争に付すべき案件を1者に任せきりにしてしまうなどを発生させる温床になります。
弊害3 適正な競争が阻害され、効率的な予算執行が妨げられる
十分な準備期間があれば複数の業者が参入できるはずの契約が1者に独占され、割高になってしまいます。
弊害4 虚偽公文書作成罪を犯してしまう職員を生じさせる
4月1日が土曜日、日曜日だったり、多忙で契約の締結などをやっている暇がなく、実際は4月3日頃に記名押印、交換した契約書の日付を4月1日に遡った場合、公務員の場合は犯罪行為です。(別稿参照:「4月1日の奇跡 虚偽公文書作成、大量発生の予感」)
4月1日付けで契約することを常態としている場合、この犯罪を誘発します。
実は、筆者が以前勤務していた職場では、多忙だったため、4月の末くらいまでこのような決裁書類がたくさん回っていました。
弊害5 職員の遵法意識を損なう
欺瞞に満ちた事務処理を繰り返し、弊害2、弊害4で指摘したようなことが続くと、職員の遵法意識が次第にマヒします。そして、ついには、日付を偽ることなどを何ら罪悪感もなく行ってしまう職員ができあがります。
過去には、履行検査の日付をごまかすなどしていた不祥事がたくさん発生しています。
弊害6 非効率な事務執行
4月1日に契約することを常態とする場合、3月下旬から4月上旬に過度に事務が集中し、時間外勤務が増えたり、ミスが発生したりします。
特に、4月1日は多くの団体で人事異動があり、着任したばかりの担当者の名前で起案を回し、着任したばかりの決裁権者が何も分からないままハンコを押すというバタバタ劇になります。こういう事務処理は、事情の分かった前任者が適正かつ効率的に処理しておけばいいのです。4月1日付けで行うのは、新年度の支出負担行為額の整理だけでよく、これは単なる整理の問題なので、必ずしもその日にやる必要はありません。
一方、法令を条文の文言通りに運用し、前年度中に契約した場合の弊害は、特に思いつきません。また、4月1日付けで契約することのメリットも、特に思いつきません。
条文の文言通りの運用だから、違法な処理だなどと言われる心配もなく、もし法令を知らない人がそんなことを言ったとしても、簡単に反論できます。訴訟になどなるはずがありません。
どちらを選択すべきかは、明らかだと思います。
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