地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

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 地方公共団体の支払は、相手方の履行が終わったことを確認してから支払うのが原則です。この原則に対し、地方自治法第232条の5第2項、同施行令第163条で、一定の場合に前金払が認められています。

しかし、この前金払は、年度を超えて行うことができないことになっています。法令で明確に禁止されているわけでもなく、おそらく会計年度独立の原則や予算単年度主義を尊重した総務省(旧自治省)の指導によるものです。

 

この制約のもとになっているのが、次の「行政実例」です。

 

昭和29年6月2日自丁行発第84号 行政課長回答

 問 自治令「前金で支払をしなければ契約しがたい請負、買入れ又は借入れに要する経費」には当該年度のみならず後年度に及ぶ部分の経費をも含むものと解してよいか。

 答 後年度に属する経費を当該年度において前金払することはできない。たとえある経費を継続費としたとしても、当該年度の支出額に計上されていない限りできない。

 

外国雑誌の購入

 筆者が20年ほど前、最初に「地方財務実務提要」(㈱ぎょうせい)の内容に疑問を覚えたきっかけは、「外国雑誌の購入と前金払」というQ&Aでした。そこでは、前述の行政実例などを引き合いに、「履行が後年度にわたるものは後年度分は前金払できないものと解さざるをえない」と結論付けています。

 筆者は、これを読んで腹が立つと同時に、あきれました。

 この人たちは、地方自治体は外国雑誌など購入する必要がないといっているのだろうか?

制度を所管する立場にありながら、対応策も示さず、ダメというだけは、無責任の極みではないか?

元々想定していたケースではないだろうし、本来の趣旨からは外れるかもしれないが、法令で明確に否定しておらず、そういう必要性があるのだから、認める以外にないではないか?

 

こういう場合、購入担当者としてひねり出す対策は、たいていろくなものではありません。

① なじみの業者に因果を含めて買ってもらう。(業者に前金を立て替えさせる。)

② 裏金から購入する。(現在、裏金を持っている役所は筆者の知る限りありませんが、20年前くらいまでは多くの役所が裏金を管理していたと思います。)

つまり、実態を無視したくだらない規制は、癒着や違法行為を生むということです。

 

保険料の前金払

 年度を超える前金払を認めないという規制が、いかに馬鹿げたものかというもう一つの好例が、保険料です。

 自治体が行う保険契約は、イベント保険などを除き、ほとんどが1年以上の期間の保険です。しかも、保険料は前払いが原則です。

 4月1日から1年間の保険契約であっても、保険料は3月中に払わなければなりませんし、一般的には年度途中から翌年度にかけての契約です。つまり、どうしても年度を超えた前金払が発生するのです。

 つじつまを合わせるには、長期継続契約に指定するか、債務負担行為か継続費を設定するかの手法も考えられますが、そんなことをしている真面目な自治体は、あまりありません。また、債務負担行為や継続費は、後年度の支払予定がなければ設定できません。

 一部(多数?)の自治体は、これは前金払ではなく、「権利の購入」であり、1年間の安心という権利を確定的に購入するのだなどという屁理屈で対応しています。笑い話ですよね。前金払、あるいは前払いというのは、そういうことを言うのですから。

 

 実態を無視したくだらない規制は、癒着や違法行為を生むほか、笑い話も生み、人から笑われるということです。


 

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 固定資産税は、市町村の税収の約4割を占める基幹税目であり、都市計画税も合わせると、5割近くを占めます。しかし、その評価額には、さまざまな意見、疑問が出されています。

実態に合わない評価額

 全国的に人口減少が進み、特に地方では空き家が目立ちます。旧市街地の商店街はシャッター通りとなり、山間部などには廃屋が点在します。

 そのような旧市街地の宅地や家屋の固定資産評価は、過去の栄光を引きずり、一般に実勢よりかなり高額です。廃業などでシャッター通りの店舗兼住宅がしばしば売りに出されますが、買い手はほとんど付きません。ようやく買い手が見つかっても、二束三文、固定資産評価額の数分の一の価格がせいぜいです。

 土地の固定資産評価額は、実勢価格の7割、相続税評価額の8割と言われていました。今でも、一般的にはその程度の水準になっているのかもしれません。一方で、旧市街地の商店街のような現状があります。このアンバランス、不公平が問題です。

 

市町村に評価額での買取を義務づけよ!

 そんな価格で売れるはずがないような高額な評価を市町村がするのは、そのことによって市町村に利益はあっても、リスクがないからです。それでは、無責任な評価になってしまいます。

 市町村は、ある土地などを1000万円と評価して課税するのであれば、それに不満な納税者が買取を求めた場合、その価格での買取を義務付けるべきです。その価格で買い取る覚悟もなく、高い評価をするのは、非常に無責任だと思います。

 少なくとも、土地についてはそのような制度を設けるべきです。

 

評価額での買取制度のメリット

 1 評価に対する納得性が高まります。

 2 地価の下げ止まりが期待できます。

    固定資産評価額ならば市町村が買ってくれるという安心感が生まれます。

 3 一定の公有地を確保することにより、再開発がしやすくなります。公共施設や代替地などにも利用できるかもしれません。

   使用目的がなくなった所有者が売ることもできずに所有し続けるより、ずっといいと思います。

 

建物の評価額

 シャッター通りの旧店舗、併用住宅などは、固定資産評価額はかなりの額になることが多いですが、売ろうと思っても売れません。市場価値は、ほとんどゼロです。そんなものに、使おうと思えば使用価値はあるなどという理屈で課税するのは、酷です。

 市町村がその建物に価値を認めて課税するなら、やはり所有者が請求した場合は引き取るべきです。

 ただ、家屋の場合は、土地のように、固定資産評価額で買い取れというのは無理でしょう。無駄に高価で、使用価値の少ない建物もあるし、古い建物は取り壊し費用の分、価値がマイナスでしょう。

 家屋の場合は、市が評価額を付けて一定の価値を認めて課税しているものは無償で(土地の価格だけで)引き取ることがいいのではないかと思います。

 市町村は、請求されても引き取る気のないような建物は、評価を0にすべきです。そのようなものは、建物の取り壊しを条件に土地だけの買取(固定資産評価額で)を義務付けるべきだと思います。

 

 現在、空き家の取り壊しを所有者に促すような施策(住宅用地の課税標準の特例を非適用にするなど)が検討されていますが、上記のような対策とセットでなければ、弱者いじめ、不公正のそしりを免れないと思います。

 旧市街地を衰退させた責任は、行政にもあるわけですから。


 


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 ㈱ぎょうせいの「地方財務実務提要」は便利な本です。地方公共団体の職員が何か予算執行などについて対応に迷った場合、ヒントが見つかることも多いと思います。IMG_1070

 「○○実務提要」「○○ハンドブック」といった自治体職員が業務の参考にしている書籍の多くは、総務省の関係者などが執筆していると思いますが、ヒント、参考としてとらえるべきで、無批判に受け入れるのは危険です。

 

 契約保証金の端数計算について、これらの書籍の記載が誤っていたための混乱については、別稿「端数計算法の誤った適用」で紹介しました。

 そのほかにも、読んでいておかしいと思われる記載は、多々あります。法令の条文に立脚しない説明がされているものも多く、それらはあまり信用できません。それらについては、いずれ機会があれば述べたいと思っています。

 10数年前、知り合った自治省の若手キャリアに疑問を呈したところ、「昔からので変なのがだいぶあるんですよね・・・。」と言っておられました。

 

恩師の教訓

 大学で法律を学んでいたころ、恩師がおっしゃっていたことを思い出します。

 「学生同士が法律問題を議論しているのを聞いていると、自分の意見になっていない。○○の本にこう書いてあったなどと主張して、最後には『ほらここに書いてあるだろう』などと、本を見せ合ったりしている。〈学生一同爆笑・・・〉自分で納得して、自分の意見にしてから主張しなさい。」

 

かつての自分についての反省

 大学時代にせっかく有意義な教えを受けていたのに、若いころの私は十分に実践できていませんでした。制度の解釈に迷っているとき、「地方財務実務提要」に答えを見つけると、「一件落着!」と安心し、本当にそれでいいのか考えることを怠っていた気がします。

 

 20年ほど前から、ようやくこれらの書物を評価しながら眺められるようになりました。今も「地方財務実務提要」は便利に使っていますが、書かれていることはあくまでもヒントとして捉え、自分で考えて納得できなければ答えとして採用しないことにしています。

 

 かつての私だけではありません。多くの自治体職員は、「実務提要」などに書かれていたり、総務省の担当職員が言ったりしたことなどは無批判に信用し、自らの判断を停止している気がします。

 職場で、このブログで、一石を投じ続けたいと思います。

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