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本書は、血管縫合や内臓移植の研究で1912年にノーベル医学生理学賞を授与された著者が、1935年に著したものです。つまり、85年前に当時の最高の医学者が、人間とは何かについて素人にも分かるように解説し、当時の社会の在り方に警鐘を鳴らそうとした本です。
第1章は、「人間とは何かーその多様な資質の未来」で、人間について哲学的な考察が展開されています。特に人間を特色づけている「知識」や抽象化の能力について述べられていますが、正直に言って読みにくいものです。
その後、人体の仕組、各臓器や細胞の働き、病気、免疫の仕組などが解説されています。
85年後でも私のような素人が読むと、怪我が修復される際に作用する様々な相互作用など、その精妙さにあらためて驚くようなことがあります。
著者は、本書を文明への警鐘として書いています。
人が、冬も暖かく、夏もさほど暑くない家に住むことによって適応能力を退化させつつあること、走ったり歩いたりする筋肉の運動が著しく減ったことで様々な機能を退化させつつあること、柔らかい物ばかり食べて本来の生の食物を咀嚼し吸収する能力を退化させつつあることなど、現在の文明が人類の本質に適さない方向に進化してしまった結果だと捉えています。これらのことは、現代の我々も同感できる部分でしょう。
しかし、さらに、医学の進歩で、自然淘汰が行われなくなり、弱者も生き残るようになったことも、不都合なことと捉えています。この辺りは、現在、こんな発言をしたら炎上し、社会から抹殺されかねません。
「精神異常や精神薄弱が増えることは防止しなければならない。陸海軍に入隊させる時、あるいはホテルや病院やデパートの従業員の採用時に行うような健康診断を、結婚しようとする人々にも、たぶん行うべきなのだろう。」
「梅毒、癌、結核、狂気、精神薄弱等の混じった家系の者と結婚すると、どんな悲惨が待っているか分からないということは、適当な教育によって誰にでも認識させることはできる。せめて若い人たちには、そういう家系は貧乏と同じ程度に望ましくない、というくらいには考えてもらいたいものである。」
全体的に見れば、人体の諸作用の精巧な仕組に驚嘆させられ、文明の在り方を考えさせられる図書ですが、この露骨な優生思想が今の私たちには受け入れがたいものかと思います。
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