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地方公共団体の契約は、主に一般競争入札、指名競争入札、随意契約のいずれかの方法で行われます。このうち、指名競争入札とは、資力信用等から適当な複数の参加者を選んで入札によって競争させ、最も有利な条件を示した者と契約を締結する方法です。
「地方財務実務提要」の珍説
この書籍は、指名競争入札の場合、1者しか参加しなかった場合は入札を遂行すべきでないとするのが通説であると言っています。また、当初の入札には複数の参加者がいたが落札者がおらず、再度の入札(いわゆる再入札)に付した際に辞退者が出て参加者が1者しかいない場合も、執行すべきでないとするのが通説であると言っています。
条文に基づく解釈を一切示さずに、これが通説であると逃げるのは、非常に無責任な態度だと思います。そもそも、こういう説を主張している書籍は他にほとんど見当たらず、この同じ編集者のグループ(○○制度研究会)が言っているに過ぎないのではないかと思います。
初度の入札についての検討
地方自治法や施行令には、指名競争入札で参加者が一人の場合は執行しないよう求めていると解釈できる文言はありません。したがって、何も条件を付けずに入札を始め、参加者が1者しかいなかったからといって打ち切ってしまうのは、法令上の根拠もなく、参加者を裏切る行為であり、できないでしょう。
明文の規定がなくても、地方自治法等の趣旨から、当然にそう解釈すべきだという主張があるかもしれませんが、それが誤りであることは、法令の論理解釈から説明できます。
「指名競争入札の参加者数 自治法はどう想定しているか?」参照
私も、指名競争入札で当初から参加者が1者だったとすれば、指名が著しく不適当であった可能性があるので、入札は打ち切るべきだと考えています。しかし、その団体の規則や指名通知の際の条件等で、その旨をあらかじめ明示していなければ、そのような扱いはできないと思います。そういう前提条件や説明なしに、「通説」などと私見を正当化するのは、無責任です。
再入札についての検討
当初の入札には複数の参加者がいたが落札者がおらず、再入札に付した際に辞退者が出て参加者が1者しかいない場合は、どうでしょうか?
「地方財務実務提要」では、「当初の入札がその競争性を有していたとしても、この再度入札は競争性を著しく欠くものでありますから、・・・ 執行すべきでないとするのが通説」と主張しています。この「通説」なるものが怪しいことは、前述のとおりです。
一般競争入札も指名競争入札も、再入札については、初度の入札に参加した者しか参加できない点で、変わりはありません。つまり、この書籍の説明では、一般競争入札についても再入札でこのような事態になれば、「この再度入札は競争性を著しく欠く」ので、打ち切らなければならないことになってしまいます。しかし、一般競争入札でそのような取扱いをするはずがなく、この理由、解説は、明らかに誤りです。
初度の入札で精一杯の金額を入れた人は、それで落札できなかった場合、契約をあきらめて再入札を断念することは、ごく普通のことです。初度の入札に複数の参加者がいたということは、指名が著しく不適当ではなかったことを示しています。
再入札に独自の競争性を要求する必要などなく、不合理です。
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