地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年04月

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県出納局とのバトル

 私は、数年前から、自分の所管する部署で、県の出納局の指導と異なったやり方で長期継続契約を運用していました。こっそりやっていたわけではありません。出納局に対して、「自分の部署ではこのようにやる。完全に適法で、出納局の指導するやり方より優れている。異議があるなら検査で「指摘事項」にしてくれ。議論には喜んで応じる。」旨をメモで伝え、実施したものです。

県出納局からは、何のアクションもなく、黙認されました。

前段として、筆者(筆者の部署)と出納局の間で、長期にわたる文書での議論がありました。議論としては、筆者の意見に対して考慮に値する論理的な反論もなく、一方的なものでしたが、「総務省に照会したところ電話でこのような回答を得た。」という主張のみでした。総務省の過去の文書との不整合を質したのか聞くと、それはやっていないとのことで、まともな議論になりませんでした。思うに、出納局は、自分たちの従来のやり方が違法、不合理だったことを認めたくなくて、意地を張っているようでした。

なお、監査委員事務局には、あらかじめ筆者の考えを説明し、理解を得ていました。

 

長期継続契約の合理的運用

 県のいくつかの部署で筆者が行った運用、現在は県を離れて別の小さな地方公共団体で行っている運用は、次のようなものです。全く問題は生じていません。

 

1 役務の提供が開始される前に必ず契約は済ませる。(41日からの契約なら、3月末までに契約を済ませる。)

2 条例で定めている種類の契約は、契約期間が1年未満のものでも、年度をまたぐならば長期継続契約として契約する。

3 入札公告、入札通知、見積書提出依頼は、事業開始年度当初予算の議決前に行う場合は、「必要な予算が議決されなかった場合は、入札(見積合わせ)を取りやめる(又は、契約を取りやめる)旨の条件を付する。

4 契約締結は、当初予算の議決後、3月末までに行う

5 契約時点から翌々年度以降にわたる契約の場合は、必要な予算が議決されなかった場合の解除条項を契約書に入れておく。この契約書案は、入札や見積合わせの説明資料として事前に示しておく。

 

 この手法は、完全に適法です。契約前に役務の提供を受けるなどの違法も発生せず、議会への配慮も十分だと自画自賛しています。

この手法によるメリットの詳細は「41日付け契約の弊害 長期継続契約の運用」で

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 長期継続契約、一般的な契約のいずれも、入札などの契約準備は前年度中に行い、契約だけ
41日付けにする自治体は、非常にたくさんあります。しかし、法的には全く無意味であり、弊害だけあってメリットのない手法です。

そもそも、なぜ41日付けの契約にしたいのでしょうか?

 

会計年度独立の原則、予算単年度主義の主な根拠条文(地方自治法)

 

(会計年度及びその独立の原則)

第二百八条  普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

 各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。

 

(予算の調製及び議決)

第二百十一条  普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。この場合において、普通地方公共団体の長は、遅くとも年度開始前、都道府県及び第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市にあつては三十日、その他の市及び町村にあつては二十日までに当該予算を議会に提出するようにしなければならない。

 

(支出負担行為)

第二百三十二条の三  普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(これを支出負担行為という。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。

 

 第208条第1項、第2項は、会計年度独立の原則を端的に定めており、書かれているとおりです。

 第211条は、「毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決」と定めています。これが、「予算は原則として会計年度ごとに作成し、翌年度以降の予算を拘束してはならない。」という、いわゆる「予算単年度主義」の根拠になっています。

 第232条の3は、支出負担行為は法令又は予算の定めるところに従うことを定めています。ある年度の予算の効力は、41日から翌年331日までなので、その年度分の支出負担行為(契約等)は、41日以降しかできないのが原則です。

 

どこからが「支出負担行為」か?

 問題は、契約などの一連の手続のうち、どこからが「支出負担行為」であり、41日以降じゃないとできないかという点です。

 自治体の契約の一般的な手順

  ① 担当者が、契約準備のため、価格、提供できる業者、品質・性能等を調査(参考見積の徴取も含む。)

  ② 支出負担行為決議、契約執行決議等の起案、決裁(予定価格、相手方候補者、契約方法、仕様等の決定)

  ③ 入札の公告、入札通知(指名通知)、見積合わせの場合は見積書提出依頼

  ④ 入札、見積もり合わせの執行(開札)契約相手方や金額の決定

  ⑤ 契約書の作成、締結

 

 このうち、①までなら、自治体は何も拘束されておらず、「支出負担行為」に含める必要はなさそうです。

 ②で、予定価格を組織内とはいえ決定したり、③で対外的に「契約の申し込みの誘引」をしたりすることは、対象年度の予算を拘束しているといわざるを得ず、支出負担行為の一部と言わざるを得ない思います。この考え方は、総務省も同様と考えられ、これを否定する有力な学説等は見たことがありません。

 まして、④で入札執行、見積もり合わせまでやってしまえば、完全に支出負担行為です。

 

当初予算議決後の入札等

 県や市町村の当初予算は、一般に前年度の3月中下旬(24日ころが多い。)に議決されます。入札の執行等をその直後に実施する取扱いにしている自治体もたくさんあります。

 しかし、年度開始前であれば、予算議決後でも前でも、法律的な位置づけは変わりません。一般の契約ならば違法でしょうし、長期継続契約なら契約締結までやっても適法です。

 

41日付け契約は無意味

 結局、予定価格の設定、入札公告や見積書の提出依頼、まして入札や見積り合わせを3月中にやって、契約締結だけ41日にするのは、法律的には全く意味がなく、同罪か、せいぜい五十歩百歩です。

 長期継続契約ならば、3月中に契約締結までやっても、適法です。

 長期継続契約に該当させられる契約は、長期継続契約として扱い、3月中に契約するのが、最も合法的、合理的なやり方です。

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