地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年06月

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一般的な簿記との違い  財務4表の性質

 新公会計で作成する財務書類は、基本的に、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書の4表です。(3表方式の場合も、行政コスト計算書と純資産変動計算書をくっつけただけなので、性質としては4表と同様)

 一般の簿記は、貸借対照表、損益計算書が必須で、キャッシュフロー計算書や株主資本等変動計算書を作成することも多く、これも含めれば4表です。

 私は、最初、新公会計と一般の簿記を比較して、貸借対照表は共通、行政コスト計算書は損益計算書に対応、純資産変動計算書は株主資本等変動計算書に対応、資金収支計算書はキャッシュフロー計算書に対応し、同じ仕組なのだろうと思っていました。その思い込みが、私にとって理解を妨げる原因になりました。

 

 一般の簿記では、貸借対照表と損益計算書の2つで一応完結しており、キャッシュフロー計算書と株主資本等変動計算書は、それを補完するものです。日々の取引を仕訳するときに、その勘定科目は貸借対照表と損益計算書の二つに集計され、完結します。

 一方、新公会計では、仕訳した勘定科目は、貸借対照表と行政コスト計算書だけでなく、資金収支計算書や純資産変動計算書にも集計されます。つまり、4表がすべてそろわなければ、完結しないのです

 その辺が、なまじ簿記の知識がある人にとっては、分かりにくいところだと思います。

 

一般的な簿記との違い  仕訳

 一般の簿記では、現金預金の増減は、「現金預金」という貸借対照表に集計される科目と、その相手方の科目に仕訳されます。備品を買って代金を払えば、備品の増と現金預金の減に仕訳され、給与を支払えば人件費などの経費の科目の増と現金預金の減に仕訳され、手数料を受け取れば受取手数料などの収益の科目の増と現金預金の増に仕訳されます。これらの科目は、すべて貸借対照表か損益計算書に集計されます。

 新公会計では、現金預金の増減については、日々の仕訳では貸借対照表に集計される科目ではなく、資金収支計算書に集計される科目に仕訳されます。これが、第一の相違点です。

また、その相手方の科目は、貸借対照表や損益計算書に集計する科目だけでなく、純資産変動計算書に直接集計するものもあります。税収や国庫補助金収入は、行政コスト計算書を経由せずに、純資産変動計算書で計上、集計されます。これが、第2の相違点です。

 

 この相違点さえ意識すれば、簿記をやったことがある人なら、それほど苦労なく理解できると思います。

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 総務省から出された「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」に沿って、各地方公共団体では平成28年度決算について財務書類等の作成の準備が進められています。私も、年度初めの仕事が一段落したので、担当者に任せきりにせずに、勉強を始めることにしました。

 

私のバックグラウンド

 私は、県庁で市町村課、出納局、一般部局での会計担当など、長年自治体の会計事務に携わり、職員研修などの講師を引き受けることも何度かあったので、従来型の自治体の会計制度については、一通りの知識はあります。

 また、企業会計についての実務経験はありませんが、仕事上のいろいろな場面で簿記の知識の大切さを実感していたため、机上の独学ではありますが、5年前に日商1級を取得しました。したがって、一通りの知識だけはあります。

 ただ、新たな公会計システムについては、全くの素人からのスタートです。

 

「新地方公会計統一基準の完全解説」って

 執務時間中はそんな時間はないので、手始めに、この本を図書館で借りて読んでみました。

 正直に言って、ほとんど役には立ちませんでした。

 以前に示されていた手法との変更点の解説ばかりがやたらに丁寧です。以前の手法など知らない者にとっては、読み続けるのが苦痛でした。基本的な仕組、特に一般の企業会計との違い、一般的な仕訳との違いなどの解説を期待していたのですが、そういう説明はあまりありません。

 仕訳例は載っているのですが、何の解説もなく、また、BS、PL、CF、NWという略称が注書きもなく使用されています。BS、PL、CFくらいは簿記の勉強をする中でも使うので意味は分かります。残るNWは純資産変動計算書だろうとは思うのですが、英語表記もなく、とても不親切な本だなと感じました。

 どんな読者を想定して書いているのか分かりませんが、これから新公会計を学ぼうとする地方公務員には不向きだと思います。

 

「統一的な基準による地方公会計マニュアル」(総務省)

 このマニュアルは、良かったです。単なるマニュアルではなく、基礎知識や考え方の解説もあります。上記のような解説書を読むよりも、直接このマニュアルを読み始めればよかったなと後悔しました。

 

 次稿から、この会計システムについて、私なりに気づいたこと、他の人にも参考になりそうなことを書いてみたいと思います。
 「統一的な基準による地方公会計の準備2」

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 前川前文部科学事務次官が、「面従腹背」が座右の銘と明言したことについて、非難する人がいますが、非難されるようなことなのでしょうか?

 普通はあからさまに言わないことを言われただけのような気がします。

 

上司の言うことに常に同意などできるか?

 人は誰でも、自分の仕事について自分なりの考え、意見を持っています。仕事に対する思い入れの強い人ほど、上司の意見に合わせて自分の意見をコロコロ変えるなどということはできないでしょう。

 無能な人、命じられた仕事を命じられたとおりにやるしか能のない人ばかりでは、組織は立ち行かないと思います。

 

上司と意見が異なったとき、いちいち徹底抗戦できるか?

 上司と意見が異なった場合、まずは自分の意見を述べて説得を試みると思います。議論の中で、上司の意見に同意できる場合もあるでしょうか、できない場合も多いでしょう。そんなとき、いちいち徹底抗戦するような人は、組織人として失格なのではないでしょうか?

 「面従腹背」つまり、本当は反対だけれど、一応は上司の命に従って仕事を進めることは、官僚の皆さんばかりでなく、会社などの組織で働く人にとって、必要なことだと思います。

 

まして国の官僚の場合は・・・

 一般社会でも、自分の仕事に対して思い入れを持っている人で、まともな組織人であれば、面従腹背は当然の作法です。まして、国の官僚の場合は、座右の銘という人がいても、全く意外ではないと思います。

 公務員の場合、国でも地方でも、トップが変わる場合は、そのトップが全くの素人であることが往々にしてあります。また、素人であっても、部下の能力を最大限引き出すことによって成果を目指す有能なマネジャーであればいいのですが、政治家の中には、組織で仕事をしたことがほとんどない人や、ずっとエリートとして歩んできて下積みの経験がほとんどない人も少なくありません。

 また、特に国の省庁の場合は、トップが頻繁に交代します。そのトップの考えに、いちいち合わせていられるはずがありません

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 私が仕事で「長期継続契約」に初めて出会ったのは、昭和の最末期です。戦後のベビーブーム世代の子供たち、いわゆる団塊ジュニアが高校入学年齢に達することにより、平成元年頃から高校入学者が急増し、それが数年間続き、7、8年後には元通り、いや元よりも少ない状態になってしまうことが確実に予測されていた時代でした。

 各都道府県は様々な対策を講じました。うろ覚えですが、大阪府では、校舎が古くなっていた府立高校で、別敷地に分校を建設し、生徒数が多い間は両方の高校を運用しておいて、急減期に入ったときに分校を廃止して本校を分校の校舎に移し、古い本校の校舎は解体するといううまい対策を採られたような記憶があります。

 

我が県の対策

 私はそのころ県の教育委員会事務局に異動になりました。我が県では、多くの高校で、テニスコートやグランドの片隅をつぶしてプレハブ校舎を建設しました。それまでは7クラス募集していた高校で、8クラス、9クラス募集するなど、多くの高校でプレハブ校舎を建設することによって、何とかしのぎました。

 

長期継続契約

 当時、若輩者だった私は、高校の急増急減対策のような重い仕事は担当させてもらえませんでしたが、同じ係の主任がやる仕事を興味津々と見ていました。

 その時に我が県が使ったのが、長期継続契約の制度でした。制度が今の形に改正されたのは平成16年ですが、その当時も、不動産の賃貸は長期継続契約の対象でした。

 プレハブは、簡易なものは物品、動産として扱われますが、教室に使用するようなものは当然不動産に当ります。そのリースであれば長期継続契約の対象にできるわけですが、問題は、長期継続契約は各年度の予算に応じて役務の提供を受けなければならないとされている点です。一般に、「予算の減額等があった場合は契約を解除する」旨の減額条項というのを入れて要件をクリアするのですが、リース業者の方はそんな条項を入れることにだいぶ抵抗していました。最後は、了解してくれたようです。

 あのような契約は、本当は制度の趣旨には合わないのでしょうが、こん
 な使い方もできるわけです。

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 巷では、加計学園問題で官邸が介入して行政をゆがめたことなどが議論されています。「行政実例」指導の「通知」の中には、大昔に発出されて未だに行政をゆがめ続けているものが存在します。

 

履行検査日で所属年度を決定?

 最初に、「工事請負費等は履行の確認のために行う検査の日によって所属年度が左右されるのが原則である。」(昭和38.1219通知)を見てみます。これは、自治法施行令第143条第1項第4号「工事請負費、物件購入費、運賃の類及び補助費の類で相手方の行為の官僚があった後支出するものは、当該行為の履行があった日の属する年度」という条文の解釈を示す通知です。

 この通知が弊害の多い困った通知であることは、以前、「331日の履行検査」の中で、指摘しました。

 

年度を超えて前金払してはダメ?

 後年度に属する経費を当該年度において前金払することはできない。たとえある経費を継続費としたとしても、当該年度の支出額に計上されていない限りできない。」(昭和29.62行政実例)

 この行政実例も、実態を無視した困ったものであることは、以前、「年度を超える前金払って、本当に違法?」の中で指摘しています。

 

 いつまでこのようなカビの生えた通知、行政実例に縛られ、虚偽の文書を作成し、窮屈な取扱いをしなければならないのでしょう?

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