地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年06月

地方自治法第214条(債務負担行為)

歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

 

債務負担行為は、幅広く使われる制度です。条文のとおり、歳出予算に計上されていないけれども今後の支出が見込まれるもので、継続費にも繰越明許費にも計上されないものは、債務負担行為として定めておく必要があります。いろいろなケースが考えられるため、継続費や繰越明許費は、施行令で要件、効果や手続が定められているのに、債務負担行為は具体的な定めがありません。何も定めがないため、便利に使えるわけです。

 

一般的な債務負担行為

 数年度にまたがる事業について、「年度まで」という期間と、既に歳出予算に計上されている範囲外で支出が見込まれる金額を示して設定するのが、最も一般的な使われ方です。一般的には翌年度以降にまたがる事業に使われます。継続費のように、年度ごとの年割額を定める必要はありませんが、契約の締結は債務負担行為を設定した年度しかできません。

 

一般的な債務負担行為

 損失補償、例えば、民間の産業を支援するため、その企業が事業資金を金融機関から借り入れるときに自治体が保証するような場合も、支払が生ずる可能性があるので、債務負担行為を設定します。

 

消防団員等公務災害補償等責任共済契約

 この契約は、消防団を持つ全国の市町村等が、消防団員等の公務災害に備え、消防団員等公務災害補償等共済基金という特殊法人と締結する契約です。この基金は、総務省の関連団体です。

この契約の特徴は、一度加入すると特に更新手続もなく、毎年度掛金を支払い続けることになることです。毎年の掛金も団員の数などに応じて変動します。

普通に考えると、年度までという期限を示せないもの、債務を負担する金額を示せないものは、債務負担行為の設定は困難なように思いますが、「地方財務実務提要」(総務省監修と思われる。)によると、債務負担行為でいいとされています。

期間の欄には「年度以降毎年度」、限度額の欄には「共済掛金」と書けばいいそうです。

これは、便利です。一度議会で設定すれば、未来永劫、年度を超えた契約ができるわけです。

 

NHK受信契約への応用

 消防共済でこういう手法が認められるのですから、同じように、一度受信契約を結ぶとずっと継続されてしまうNHK受信料にも応用できることになります。そのようにしている自治体の例は、今のところ見当たりませんが、我が自治体でやってみようと思います。

追記 平成29年度の補正予算で、我が自治体でNHK受信契約を債務負担行為に設定しました。

 にほんブログ村 政治ブログ 地方自治へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 サイト案内(目次)へ


   サイト案内(目次)へ

 一般家庭では、電気料、電話料、NHK受信料などは、銀行口座からの自動引き落としが普通だと思います。しかし、国や地方公共団体は、事情が異なります。支出命令などの手続をせずに公金の口座から「自動的に」引き落とされることは、許されません

 そこで、資金前渡という制度が使われることがあります。

 

資金前渡とは

 資金前渡とは、特定の経費について指定した職員(資金前渡職員)に概算で交付し、その職員から現金で支払をさせ、後日領収書等で精算させることです。昔は、正職員や非常勤職員の給与なども、資金前渡職員の口座にいったん支払われ、給与担当者がその口座から現金をおろして給料袋に詰め、個々の職員に配っていました。

 現在は、電気料、光熱水費、電話料などは、所要額を公金口座から出金して資金前渡職員の口座に入れておき、そこから口座振替で支払うという地方公共団体が多いようです。うまく活用すれば、企業における小口現金のような便利な活用も可能です。

 資金前渡の手法で支払できる経費は、地方自治法施行令で定められています。

 

地方自治法施行令第161条第1(資金前渡)

次に掲げる経費については、当該普通地方公共団体の職員をして現金支払をさせるため、その資金を当該職員に前渡することができる。

1) 外国において支払をする経費

(2) 遠隔の地又は交通不便の地域において支払をする経費

(3) 船舶に属する経費

(4) 給与その他の給付    略

(13) 電気、ガス又は水の供給を受ける契約に基づき支払をする経費

(14) 電気通信役務の提供を受ける契約に基づき支払をする経費

(15) 前二号に掲げる経費のほか、二月以上の期間にわたり、物品を買い入れ若しくは借り入れ、役務の提供を受け、又は不動産を借り入れる契約で、単価又は一月当たりの対価の額が定められているもののうち普通地方公共団体の規則で定めるものに基づき支払をする経費

(16) 犯罪の捜査若しくは犯則の調査又は被収容者若しくは被疑者の護送に要する経費

(17) 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上現金支払をさせなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの

 

NHK受信料の問題点

 御覧の通り、NHK受信料は施行令では対象とされておらず、資金前渡するには、各団体の財務規則などで定める必要があります。しかし、そのような定めをしている団体はあまりありません。

 これは、おそらく、自治法施行令に規定するのを総務省が失念したと思うのですが、悪意に考えると別の可能性もあります。

 NHK受信料は、口座振替であれば料金が多少割引になります。NHKと地方自治法の両方を所管する総務省としては、地方公共団体に対して割引の適用をしたくなかった?

考えすぎだとは思うのですが・・・。

↑このページのトップヘ