地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年08月

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 北朝鮮のミサイルに対して発せられたJアラートについて、日本国内では、「無意味だ!」「どうせ何もできない。」などの意見がかなりある一方、韓国のマスコミでは、このシステムをうらやみ、現政権を非難する論調が多いようです。

 

 私も今回Jアラートを初体験し、限界があることや改善すべき点があることは承知していますが、それでも絶対にあった方がいいと思います。

   ミサイル発射でJアラート発信

 

 その理由は、わずか5分しかなくても、危機に備える心の準備ができ、さらに、テレビをつけて情報を得る外出できる服装に着替える持ち出すものを準備する窓から離れた場所に行くなどができます。雨戸のある家なら、雨戸を閉めることもできるでしょう。何もできないわけではありません。

 

 政府や自治体は、「頑丈な建物か地下に」などに加え、もっと実際にできることを検討して広報すべきだと思います。

 34年前に上司に進められて読んだ「危機管理のノウハウ」(佐々淳行)にも、銭形平次のハチべーが「親分、大変だ~」と言って走ってくることにも、平次に、何かが起こったという心の準備をさせる効果があり、第1報はそれでもいいというようなことが書かれていた記憶があります。

情報は、不完全なものでも早く伝達することが、危機管理の基本です。

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30日早朝、北朝鮮がミサイルを発射し、12道県にJアラートが発信されました。我が家でも、私と妻のスマホからけたたましい警報音が響き、ミサイル発射の警報が表示されました。

ニュースによると、発射は5時58分頃Jアラート発信が62分頃北海道の上空通過が67分頃とのことです。

 

そのときの我が家の行動、考えたこと

警報を見て、我が家ではまずテレビをつけました。テレビで「屋外にいる人は頑丈な建物か地下へ・・・」と呼びかけていましたが、自宅にいたので、もちろん逃げる場所などありません。

ただ、万一に備え、パジャマから出勤用の服装に着替えました。そのとき考えたことは「何分後にミサイルが来るか分からなければ、動きようがない。」ということです。2、3分なら、木造とはいえ自宅に留まるのがベストでしょう。5分なら近所のコンクリート製のマンションに行けないことはありませんが、他人の部屋に入れてもらうわけにもいきません。10分あるなら急げば地震などの避難所に指定されている中学校に行けますが、夜間や早朝は入れないと思います。

今回、警報から5分程度しか避難時間がないことが分かりました

結局、着替えてテレビを見ているくらいしかできないのでしょうか?

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 二学期制の小中学校では、夏休みが終わった学校も多いようです。

 私の住む市でも二学期制の学校が多いのですが、私は、二学期制には苦い思い出があります。

 

保護者、地域の意向を無視して二学期制強行

 10年ほど前、住んでいる地域の中学校が、保護者や地域住民向けに二学期制の説明会を開催しました。私も参加しましたが、メリットとして挙げられた事柄がどれもこれもあいまいで本当にメリットになるのか分からないようなことばかりだったこともあり、説明後の意見交換では、反対論が圧倒的に優勢でした。移行に向けた説明をする教員等もしどろもどろでした。

 当然、移行はしないだろうと思っていたら、学校が移行を強行しました。噂によると、校長の属する教員の派閥が移行を推進していたとのことでした。

 

二学期制のメリットは?

 二学期制のメリットとされているものが、本当にメリットになっているか、非常に疑問です。

 授業時間の確保については、別に二学期制にして秋休みなど設けなくても、夏休みを加減すれば済む話です。終業式、始業式が減らせるということについては、そういう名称にしなくても長期の休みの前などには、それなりのセレモニーを行う学校も多いようです。

 教師が評価する手間が1回減ることについては、そもそもメリットだけではないし、また、夏休み前に仮評価を示す学校も多いようです。

 メリットとされていたことがあまり意味がなく、メリハリが付けにくいというデメリットだけが目立っているようです。

 

特に中学校の二学期制は、大反対

 私の参加した説明会では、二学期制にすると夏休み明けに前期の期末試験をやることになるので、生徒が夏休みに勉強するようになるなどということもメリットに挙げられていました。この考えにも、大反対です。

 夏休み明けに試験をすることには賛成です。しかし、その試験は、範囲の限られた期末試験などであるべきではなく、それまでの総合力を問う試験であるべきです。夏休み明けに期末テストなどを配置されたら、生徒は、特に休みの後半はテストの範囲外の勉強をすることは時間がもったいないと感じてしまうでしょう。まして、自由研究や長編の文学作品に挑戦することなど、時間の無駄と感じてしまうと思います。

 夏休み明けには、それまでの総合力を問う実力テストを行い、それを内申書にも反映すればよく、二学期制のメリットはありません。

 「会計年度独立の原則」と「予算単年度主義」について詳しく御説明します。

 
「会計年度独立の原則」「予算単年度主義」は、いずれも国や地方公共団体の予算に関する重要な原則ですが、しばしば混同している人がいます。A県から出ている文書の中で、「会計年度独立の原則とは、一会計年度における歳入歳出は、他の年度にまたがって行われてはならないという予算に関する大原則である。この原則を貫き通すと、かえって不利、不経済となる等実情に即しない場合もあるため、財政の効率的運用を図る目的から、継続費の逓次繰越、繰越明許費、事故繰越等の例外措置が認められている。」という記載がありました。これは、両者を混同した誤りです。

 また、B県のホームページには、「予算は『予算の会計年度独立の原則』により、一会計年度の予算はその年度内に執行し完結することを原則とします。」という記載がありますが、これも同様の誤りです。
 

地方自治法の関係条文

(会計年度及びその独立の原則)

第208条  普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

2  各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。

(予算の調製及び議決)

第211条  普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。この場合において、普通地方公共団体の長は、遅くとも年度開始前、都道府県及び第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市にあつては三十日、その他の市及び町村にあつては二十日までに当該予算を議会に提出するようにしなければならない。

2  普通地方公共団体の長は、予算を議会に提出するときは、政令で定める予算に関する説明書をあわせて提出しなければならない。

(支出負担行為)

第232条の3  普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(これを支出負担行為という。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。

 

会計年度独立の原則、予算単年度主義とは 

 会計年度独立の原則とは、法第208条第2項に規定される原則で、各年度に支出すべき経費の財源は、その年度における収入によって調達すべきことをいいます。この原則は、支出に関する契約が年度をまたぐこと等を特に禁止していません。数年度にまたがる契約であっても、各年度に役務の提供を受けた対価をその年度の予算で支払えば、その年度の収入で調達したということなので、この原則には抵触しないのです。

 

 予算単年度主義(の原則)は、法第211条第1項、第232条の3等により、予算は年度ごとに作成し、翌年度以降の予算を拘束してはならないとする原則で、予算の効力を会計年度内に限定し、それを超える支出負担行為を禁ずるものです。

 

二つの原則の例外

 継続費や債務負担行為は、各年度に役務の提供を受けたり完成した部分に係る対価をその年度で支払えば、会計年度独立の原則には抵触しないので、その例外とはされません。しかし、年度を超えて支出負担行為を行うことから、予算単年度主義には抵触するので、その例外とされています。

 逆に、過年度支出、過年度収入、歳出予算の繰越等は、各年度の歳入歳出予算、決算に計上するので、予算単年度主義には抵触しません。しかし、会計年度独立の原則には抵触するので、その例外とされています。

例えば、過年度支出は、過去の年度にその年度の収入からまかなうべきだった支出について、現年度の収入からまかなうことになってしまうので、会計年度独立の原則に反するのです。過年度収入も、過去の年度に収入してその年度の支出に充てるべきだった収入を現年度に収入し、現年度の支出に充てる結果になることから、会計年度独立の原則に反するのです。歳出予算の繰越は、現年度の経費に充てるべきだった現年度の収入を翌年度の経費に充てる結果になるため、会計年度独立の原則に反し、その例外とされているのです。

 

A県、B県の間違いは?

 A県の文書は、前段の「一会計年度における歳入歳出は、他の年度にまたがって行われてはならないという予算に関する大原則である。」というのは、会計年度独立の原則ではなく、予算単年度主義の説明です。後段の「継続費の逓次繰越、繰越明許費、事故繰越等の例外措置が認められている。」という部分は、会計年度独立の原則の例外として正しい例示です。しかし、前段の説明が正しいとすると継続費も例外になりそうですが、継続費を挙げずに継続費の逓次繰越だけを例外として例示しているのはアンバランスです。財政用語辞典などの別々の項目をつなぎ合わせてしまったようです。 

 B県の文書の説明は、全く予算単年度主義の説明です。 

 会計年度独立の原則のほうは、民間の企業会計でも、継続企業の公準費用収益対応の原則等として尊重されていますが、予算単年度主義のほうは、民間では見られず、年度をまたぐ契約など平気で結ばれています。

一般向けの事典、解説書などでは区分せずに使用されていることもありますが、本来別のものであり、国や地方公共団体職員向けの厳密な解説では、峻別されています。

追伸

 「ブログの記事がパクられてますよ!」とある方から連絡をいただきました。早速見てみると、見事にパクられていました。

 不思議に腹は立ちません。私のブログがパクられたのは、私が承知している限り、これが初めてです。「私のブログもとうとう人様から真似られるほどに成長したか!」と感慨深いものがあります。

  2017年8月にアップした『「会計年度独立の原則」と「予算単年度主義」の混同』の記事は、私のブログの中でも最もコンスタントに閲覧数の多かったものですが、実は、あの記事は、かなり説明を省いているので、自治法を学び始めたばかりの人には不親切だなと反省していました。この機会に、少し説明を丁寧にした詳細版を今回アップしました。

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 難しい問題を考えるとき、ふと思いついたことをまとまった考えに整理するときなどの方法、心得が紹介されています。私も、早速いくつかやってみようと思います。

 ここで紹介されている方法のいくつかは、私も実践しています。難しい課題に対する対応策を探すとき、しっかり検討してから一度「寝させる」ことです。「寝させる」には、二つの意味があるようです。文字通り睡眠中の脳の働きに期待することが一つ、二つ目は、一旦放置して頭の中で発酵させ、熟成させることです。なかなか効果があるように感じています。

 しかし、「寝かせている」考え、思い付きのリストを作っていないので、寝かせたまま忘れ去ったアイディアもきっとあるでしょう。リストを作ってみようと思います。

 

 冒頭に、グライダー飛行機という比喩で、自分で考えようとしないグライダー人間が増えていることについて、様々な例で説明されています。これは、思考の技術以前の問題ですが、私も長年県職員をやってきて、それを感じていました。

 若手職員だけでなく、かなりの年配の職員でも、自分で法令を解釈しようとせずに「地方財務実務提要」などに書かれていることを鵜呑みにする職員自分で課題を見つけようとせず、具体的に指示されないとルーティンの仕事しかできない職員が増えている気がします。

 残り少ない公務員生活で、飛行機型の公務員を少しでも増やす努力を続けたいと思います。

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