地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年09月

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 国家公務員の定年を現在の60歳から引き上げる案が、現実味を帯びてきました。確かに、年金支給を遅らせなければ年金財政が破たんするなどの問題があることは理解していますが、結論を先に述べれば、次の理由から私は反対です。特に、国家公務員については、人事を非常にゆがめてしまい、非効率になってしまうのではないかと思います。

 

1 公務員ばかり優遇することになる、人件費の増大

  これは、既にマスコミなどから批判されていることです。人件費負担を増やさないためには、よほど大胆な給与制度の改革が必要になり、現実には難しいのではないかと思います。

2 元気老人ばかりではない

  高齢職員の元気度には個人差があり、私自身もそうですが、60歳くらいになると責任が重くて体力的にもきつい職に就いていたくない職員も多いだろうと思います。

3 昇任を遅くせざるを得ず、若手のモチベーションに影響

  今まで通りの昇任速度を保とうとすれば、管理職ばかりが多い頭でっかちの組織になってしまいます。

 

 総じていえば、現行の再任用制度などの運用でいいのではないかと思います。60歳でいったんリセットして、その後は本人の働く意欲次第で再任用に応じる、再就職する、蓄えがあれば引退するなど、自分で選べる現行制度ではダメなんでしょうか?

 年金の支給開始を遅らせるならば、再任用の上限を現行の65歳から引き上げる議論は、必要だと思います。

 

再任用で収入低下はやむを得ない

 一部の高級官僚でなければ、再任用や再就職では収入は激減します。しかし、私自身もそうですが、一般的には子育ても終わり、あまりお金の要らない時期だと思います。年金開始まで、老夫婦二人が退職金をあまり取り崩さずに生活できればいいのではないかと思います。個々には、子供がまだ小さいとか、親の介護費用などの問題を抱えている人もいるでしょうが、それは、親も元気で独身貴族を謳歌していた時期や子供がいなかった時期に個人的に蓄えておけばよかっただけのことで、定年延長で一律に対処すべき問題ではありません。10年ほど前に退職した先輩たちと比べて生活はかなり苦しくなっていますが、社会全体から考えれば、やむを得ないことだと思います。

 また、子供の病気などの偶発的な不運は、社会的にセーフティーネットを整備すべき問題で、公務員の定年延長で対処すべき問題ではありません。

 

 なぜ今、財政困難の中、定年延長を持ち出すのか、理解に苦しみます。

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 私は、大学では行政法のゼミに所属し、マージャンも覚えましたが、具体的な法制度以外にも多くのことを教えていただきました。その中で、私の公務員生活の柱になっていることがいくつかあります。

 一つは、制度を解釈しようとするときは、解説書を鵜呑みにせずに自分の頭で理解して解釈するということです。

 このことについては、以前『「地方財務実務提要」依存症からの脱却』で紹介いたしました。

 もう一つは、解釈論を戦わせるべき時に立法論を持ち出すなということ、条文に立脚した解釈をしろということです

 

「立法論だ!」と言われたら負け

 ゼミで学生同士の議論を聞いていた恩師が言われたことで、それ以来40年近く、肝に銘じ続けています。他の学習内容は忘れてしまったことの方が多いと思いますが、これは鮮明に覚えています。

 「行政の場面で判断を迫られる場合は、現在の法制度に基づいてどう解釈すべきかという判断を求められているんだ。法令の条文に立脚せずに、「こうすべきだ。」「こうあるべきだ。」と主張するのは立法論で、議論をしているときに「お前のは立法論だ!」と言われたら、議論は負けなんです。」

 

行政の現場では

 行政の現場では、これから制度を創設しよう、改正しようとして議論することがあります。この場合は、当然、立法論で議論すべきです。

 具体的に起こっている問題にどう対処すべきか議論する場合は、当然、解釈論で議論すべきです。しかし、ここに立法論を持ち込む人がたくさんいるのが現状です。裁判になれば、このような解釈は敗訴に直結します。

 「地方財務実務提要」にも、条文上の根拠を示さずに「こうあるべきだ。」という意見だけで結論を出しているようなQ&Aがたくさん混じっています。

 残り少ない公務員人生の中で、自分で条文を十分に吟味して解釈することを若い職員に伝えていきたいと思っています。

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原則(労働基準法)

第34条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 

地方自治体の現状

 ほとんどの地方自治体は、現在、1日7時間45分の勤務時間としています。地方公務員には労基法が適用されるので、法律上は途中に45分以上の休憩時間を与えなければならないことになります。通常、これが昼休みです。

 通常の勤務について、昼休みを45分としている自治体、職場もありますが、法律より余計に、1時間の昼休みとしているところが多いようです。それは、自治体の条例、規則で決められます。

 では、イベントなどの都合で、土日に職員を出勤させ、週休日を振り返る場合などは、どうなのでしょう。

 

自治体の条例、規則で、扱いが異なる

 おそらく、すべての自治体で「職員の勤務時間、休暇等に関する条例」と、さらに細部を定めた「職員の勤務時間、休暇等に関する規則」を持っています。その休憩時間についての定め方には、大きく分けて二つのパターンがあるようです。

一つは、条例で、「任命権者は、1日の勤務時間が、6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を、それぞれ勤務時間の途中に置かなければならない。」と労基法と同じ規制にしておき、通常勤務の日の昼休みを1時間にすることは、具体の運用とする手法です。この場合なら、休日勤務の日に昼休みを1時間も取ることが不合理であれば、45分にすることに何の支障もありません。

もう一つは、条例で、任命権者は、1日の勤務時間が6時間を超える場合においては、少なくとも1時間の休憩時間を勤務時間の途中に置かなければならない。」のように昼休みを1時間取ることを原則とし、例外的に45分以上でいい場合を限定列挙する手法です。この場合は、条例、規則で限定列挙されている中に、週休日の振替の場合などが該当させられるかどうかに左右されます。該当させられず、どうしても昼休みを1時間取らなければならないような条例、規則になっている自治体もかなりあります。

このような自治体の方は、ついでの際に、融通の利く条例、規則に改正されておく方が、職員の福利厚生(拘束時間を最小にする)のためにいいのではないかと思います。

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「行政実例」とは

 地方自治体では行政を運営するに際し、法令、通達、通知等と並んで、「行政実例」を参照します。地方自治体が法令の適用などについて疑義がある場合、総務省(旧自治省、自治庁)に照会し、それに対する回答を他の自治体も参考にできるよう、公にしたものです。

 本来、単なる意見の表明に過ぎず、裁判になったケースで否定された例もありますが、多くの自治体がこれに依拠して事務を進めています。

 

「行政実例」の問題点

 自治体にとって大変便利なものではあるのですが、中には変なのもあり、自治体の事務処理を歪めているものもあります。そのときの国の職員の資質、熟練度によるものと思われます。

 「行政をゆがめる行政実例」参照

 

「行政実例」は今後どうなるか

 地方自治関係の行政実例は、明治時代に発出されたものまでありますが、昭和20年代、30年代に発せられたものが多く、昭和58年ころまで続いています。昭和60年代以降は、行政書士法の運用とかに関する行政実例は多少ありますが、地方自治に直接関わる地方自治法、地方公務員法などの関係の行政実例は見当たりません。

 総務省は、近年は、地方自治体が疑問点を照会し、文書での回答を求めても、応じていないようです。無理もありません。自治体が文書での回答を求めるような案件は、解釈が困難でしかも影響が大きいものが多いので、責任をもって回答などできないのでしょう。

 そんなこともあり、行政実例は、もう30年以上も加除されていない例規集のような状態です。

 また、平成124月に施行された地方分権一括法以降、国と地方の関係が従来と変わり、新たに昔のような「行政実例」など、発する立場かどうかも疑問で、またそんな雰囲気でもないでしょう。つまり、次第に古すぎて使えなくなり、廃れていくことになると思います

 ただし、今のところはまだ、行政実例に縛られている自治体が多い現状です。

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 今朝(915日)、7時ころ、17日ぶりにJアラートが鳴り響きました。

 前回(829日)と比較して、警報の文言も工夫されていて余計な混乱も起こさず、混乱もずっと少なかったように思います。平日のこの時刻なら、一般的なサラリーマン家庭は起床している人が多かったこともあるでしょう。

 今回の発射の意味

 今回の発射は、国連の新たな制裁決議に対する反発という面は当然にあるのでしょう。前回と同じような方向に発射したことには、どのような意味があるのでしょうか?今後、様々な見解が示されると思います。

 一つは、このコースが本当に武力衝突に至るリスクが最も少ないのでしょう。

 ロシアの領海の方向には発射できない。アラスカ、グアムの方向に発射しれば、アメリカを本気にさせる恐れがある。日本でも、米軍基地や大都市の方向では迎撃される心配や、武力衝突の引き金になる心配がある。

 この方向なら、口先だけの抗議で済むだろうという判断があるのではないでしょうか。飛行距離を少し伸ばして、グアムが射程に入ることを誇示しつつ、アメリカを過度に刺激することは避けているのでしょう。

 「日本列島4島を核爆弾で海に沈めなければならない。」などと脅迫するなど、やりたい放題です。日本の核武装論の高まりが心配です。


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