地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年10月

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 不動産登記や公図について、詳しい知識を得ようとされるのであれば、ネットで「不動産登記」などで検索すると、様々な団体が詳しく解説してくれているページがヒットします。

 このページは、社会人としての一般教養、身内の相続問題が生じた際の基礎知識、または詳しいページで調べる前の入門知識としてご覧いただければ幸いです。

 

不動産登記簿とは

 不動産登記簿には、土地登記簿建物登記簿があります。

  土地登記簿は1筆(地番)の土地ごとに1件、建物登記簿は1棟の建物(家屋番号)ごとに1件、作成されています。

」とは、土地を数えたり管理したりする単位で、一筆ごとに地番が付されて特定されます。1筆が何万㎡もある土地もあれば、1㎡未満の土地もあります。地番は、一般に、大字などごとに一連の番号が付されています。

家屋番号は、だいたい、その家屋が建っている土地の地番(複数筆にまたがる場合はその代表の地番)がそのまま使われます。マンションなどの区分所有されている建物は、占有の単位ごとに枝番が付けられ、それぞれごとに管理されています。


不動産登記簿の構成
 

(1)    登記簿は、不動産の所在や形質、数量(面積)等が記載される「表題部」、権利に関する事項が記載される「権利部」があり、権利部は所有権に関する登記を行う「甲区」と、所有権以外の権利に関する登記を行う「乙区」等で構成されます。甲区には、所有権の移転や所有者の住所変更、所有権移転予約の仮登記などが、乙区には抵当権の設定・抹消、地役権の設定、権利者の住所変更等が、それぞれ日付順に記載されます。

 

(2)    公図」は、「更正図」とも言います。

登記簿には、区画、形状を正確に示した地図を付けることになっていますが、それが準備できるまでは、「準ずる図面」として明治の地租改正のときに作った「土地台帳付属地図」を付けることになっています。広義では、正規の地図も含め、土地登記簿に付属している図面全般をいいますが、狭義では、旧土地台帳付属地図を指します。市町村役場にある「土地台帳付属地図(公図、付図)」と基本的には同じはずです。

 大字や字ごとになっていて、昔のままのものだとあまり正確でなく、隣の図面との境界がうまくつながらない場合も多いです。 

 

国土調査事業ほか

 国土調査(地籍調査、国調 こくちょう。国の補助事業で、土地1筆ごとの境界、形状、面積等を確定して、地籍図を作成していく。)が実施済みであったり、土地改良、土地区画整理事業やまともな業者による宅地造成事業が行われた土地は、昔の公図がちゃんと測量した地図に置き換わっているので、法務局の地図と実態が一致しています。それ以外の土地は、明治時代にアバウトな測量に基づいて作成された土地台帳付属地図をベースに、それ以降の分筆、合筆等が書き加えられているだけであり、あまり当てにできません。

明治のがベースの公図は、600分の1の縮尺がほとんどです。比較的新しいものは、500分の1等です。1/600のものや縮尺不詳などと書かれているものは、隣接との位置関係はおおむね信用できても、寸法はあまりあてにできません。

国調未実施の地域も多く、実施済みの土地は全国で半分程度です。特に市街地は遅れています。

  地図(公図)混乱地域」といって、公図と現況が全く合っていない地域も所々に存在します。

 

 公図等は、法務局で、写しを閲覧、取得できます。電子化が済んでいるので、今はどこの法務局でも全国どこの物件の登記情報の取得、図面の閲覧、写しの取得ができます。

 さらには、インターネットを通じて、取得することもできます。

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 読んでいて、あらためて背筋が寒くなりました。

 アメリカ政府が、ドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していたなどのことは、既に報道で知っていましたが、自分にも関係あることだという想像力に欠けていました。

 米国では、政府がイスラム教徒やジャーナリストなどに広く網をかけて通信情報などを収集していたことは、既に明らかになっています。日本でも同じようなことが行われているらしいことも、時々偶発的に明らかになる事実から、推測されるとのこと。

米国では、政府の情報活動を制限しようとする動きが、議会、メディア、一般市民の間で、市民権を得つつあるようですが、日本はまだまだです。メディアや市民の関心も、低いようです。

 

 私が、普段、ネットでどんなサイトを見ているか、どこにメールを出しているかなどが、情報として収集されています。何もなければ、その情報は、保管されたままですが、ひとたび私に何かの疑いがかけられると、それらの情報が分析されかねません。

 文科省の前川前次官の出会い系バー通いが、突然リークされたことを思い出します。

 

印象に残ったメッセージ

 「市民が反対しているのに政府が意に介さず法律を成立させるような社会では、政府は制御不能となります。あらゆることのコントロールが失われます。人々は政府と対等のパートナーではなくなります。全体主義にならない保証はありません。

 私たちはみな、自分たちの子どもを自分たちが引き継いだ社会よりも自由でリベラルな素晴らしい社会に住まわせたいと願っています。それを実現させる唯一の方法は、常に目を光らせ続けることです。」

 

 日本でも、政府の情報収集活動を監視し、制約する仕組みの確立が急がれます。

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 研修会などで社会人になったばかりの人たちの前で話す機会があると、勉強を続けるべきこと、その中でも、座学を軽視しないことをお願いしています。

 近年、社会の変化のスピードが昔よりずっと速くなり、現在自分が持っている知識がすぐに陳腐化してしまいます。常にアップデートは欠かせません。これは、当然なことです。

 

座学を軽視する人

 「俺は仕事をする中で勉強しているので、本による勉強など不要だ。」という信念をもっている人もいますし、特に信念もなく、特別な勉強をしない人も大勢いらっしゃいます。

 私はかつて、よく本を読む上司に仕えたこともあり、反対に、実務経験一辺倒で自己啓発的な本は全く読まない上司に仕えたこともあります。前者は、勤務時間が終わるとすぐに帰宅しておられました。その上司は、「失敗の本質」といった類のビジネス書や歴史書を多読しておられ、その効果だと思うのですが、業務について我々には思いつかない方向性を示してくれたり、示唆を与えてくれました。一方、本を読まない上司には、参考にはなるような助言はいただけませんでした。
 OJTももちろん大切ですが、座学も必須です。

 

座学を重視すべき理由1 自分の経験だけではダメ

 座学を重視しなければならない理由の第1は、自分の経験だけでは全く不十分ということです。公務員は、どんな状況下でも適切に対応できることが、優秀な職員の条件です。そのためには、自分一人の経験だけでは全く不足であり、歴史上の事象に学んだり、過去の事象の集大成である経営学などに学ぶ必要があります。

 また、例えば、新たな分野、例えば、公務員の仕事をしているだけでは、企業会計、簿記の仕事は学べませんが、仕事の外でそれを学んでおくことで、他の職員より上質の仕事ができます。

 

座学を重視すべき理由2 重要な決定の効果は自分で経験できない

 これは、「最強組織の法則」(センゲ)などの経営書に書かれていて、確かにその通りだと感銘を受けました。重要な決定ほど、その本当の結果が現れるのは遅くなり、決定を下した本人はそれを体験できないことが多いということです。センゲは、経験から学ぶというのは錯覚だとまで言っています。

 例えば、製品の魅力が低下したので業績の落ちている企業で、営業部長が営業マンに対して、「足で稼げ」などとハッパをかけたとします。営業に力を入れれば、一時的に業績は回復するかもしれず、その営業部長は栄転します。しかし、製品に魅力がないことが本当の原因ですから、優秀な営業マンほどバカバカしくなって退社してしまうなど、問題はより深刻になってしまいます。

 

座学を重視すべき理由3 異なった状況下での成功体験は役に立たない

 これは、理由2にも通じることです。例えば、バブル時代の成功体験を参考に、現在の状況に対応しようとすることは、命とりかもしれません。

 

 私も、老骨に鞭打って、勉強を続けたいと思います。

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戸籍の構成単位 「世帯」との違い

 現在の戸籍は、夫婦と未婚の子を基本単位に作成されます。同居しているかどうか、独立した生計を営んでいるかどうかなどは関係ありません。

住民票の基本単位である「世帯」は、住所と生計を一にするグループなので、戸籍の単位とは異なります。

子供が成人して独立生計で一人暮らししていても、結婚するまでは親の戸籍に入っているのが普通です。

婚姻届を提出すると親の戸籍から抜けて(除籍)、どちらかの姓で夫婦の戸籍が作成されます。子が生まれ、出生届が提出されると、親の戸籍に付け加えられます。たとえ両親が死亡しても、子は、特に手続しなければ、結婚するまではその戸籍に留まります。

ただし、子は成人すれば、分籍の手続をし、独立することもできます。

 

本籍地

 戸籍を置く場所を本籍地といいます。本籍をどこにするかは本人の勝手ですが、通常は親の戸籍と同じ場所、故郷、現住所等に置く人が多いようです。

戸籍を置く市町村を移すことも簡単にできます。皇居の所在地や竹島、尖閣諸島を本籍地にすることも可能で、そうしている人も大勢います。愛国心は示せるでしょうが、戸籍謄本等を取り寄せるのに時間がかかりそうなところは避けるのが利口かもしれません。

戸籍は、地名、地番で表示するのが一般的ですが、住居表示にすることも可能です。

人に本籍を聞いたり書かせたりすることがタブーになっている場合があり、注意が必要です。

 

戸籍筆頭者

 戸籍の一番最初に記載される人を「戸籍筆頭者」といいます。戸籍を特定するための見出しの役割があります。旧民法では戸主といって一定の権限などがありましたが、現在の筆頭者はインデックスの意味しかありません。だから筆頭者が死亡しても、新たに筆頭者を決める必要はなく、そのままになっています。

 

除籍、転籍

 構成員がいなくなったり、他の市町村に本籍を移した場合は、その戸籍はそのまま元の市町村に「除籍」として保存されます。移転の場合、転籍先の市町村で作られる新戸籍には、生年月日や両親の名前等は引き継がれますが、他の詳細は引き継がれません。

 例えば、離婚した場合、夫婦の戸籍から筆頭者でなかった側(主に妻)が抜ける(除籍される)ことになり、子供がいた場合はその子供は筆頭者と一緒にその戸籍に留まるか、もう一方と一緒に抜けることになります。元の戸籍には、離婚して配偶者等が除籍になったことが記載されます。しかし、その後、転籍すれば、新戸籍には、転籍後の動きしか記載されません。つまり、離婚という事実が戸籍から消えてしまうのです。

筆頭者でなかった側は、親の戸籍に戻るか単独の戸籍を作成するかいずれか選ぶことになります。いずれにしても、その時の戸籍には離婚の事実が記載されますが、その後に転籍すれば、新戸籍には転籍後の動きしか記載されません。したがって、今の戸籍だけ見ても子供の全員を把握できず、相続関係を証明するには、その除籍も必要になります。

 

改製原戸籍

 戸籍はこれまで数十年に1回くらい戸籍法改正などにより作り直され(改製)ています。その場合も、新戸籍には生年月日や両親の名前等は引き継がれますが、それまでの移動は引き継がれません。以前のことを証明するには、改製前の「改製原戸籍(かいせいげんこせき)」(業界人は「ハラコセキ」と通称)が必要になります。

 

相続関係の証明

 除籍も改製原戸籍も、保存期間は、除籍や改製後150年です。ただし、平成22年までは80年だったので、それまでに80年経過してしまったものは廃棄されている可能性が高いようです。

 相続関係を証明するためには、生まれてから現在までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍が必要になります。だから本籍をやたらに移すのは、後々面倒になるし、費用もかかります。ちなみに、平成29年時点で、私の住んでいる市の1通あたりの手数料は、

  戸籍 450円、除籍・改製原戸籍 750    かなり高額です。

だから、一般的には、結婚して親の戸籍から離れるときに、長期的な生活の本拠地に本籍を置くのが一番合理的でしょう。

 

戸籍の附表

 戸籍には「附票」というのが付いていて、その人の住所が記録されています。

住民票を移転するとその市町村から本籍地の市町村にそのことが通知され、附票に記録されます。附票には、現住所だけではなく、その戸籍が記録している期間の住所が全て記録されています。私は、現住所と別の出身地の市に本籍を置いていますが、私の附票を見ると、私が故郷を出てから転々と引っ越したことが分かります。

普通は昔の住所を証明しなければならないとき等に使いますが、住民票の代わりにも使えます。

戸籍謄本を請求しても、附票は付いてきません。ちゃんと、「戸籍(除籍、改製原戸籍)の附票の謄本(抄本)」として請求しなければなりません。

 

関連ページ

  地番、番地、住居表示、号の使い分け

  「謄本」と「抄本」

  「世帯」「世帯主」とは 

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 平成20年に行われた国家公務員退職手当法の改正までは、公務員が懲戒免職処分を受けると、退職手当も自動的に不支給でした。この改正で、「全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる」こととされ、「退職手当支給制限処分」という新たな手続が加わりました。

 地方公務員についても、各団体の退職手当条例で、同様の改正が行われました。

 

国家公務員退職手当法

(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)

第12条 退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる

 (1)  懲戒免職等処分を受けて退職をした者

 (2) 国家公務員法第76条の規定による失職(同法第38条第1号に該当する場合を除く。)又はこれに準ずる退職をした者

 退職手当管理機関は、前項の規定による処分を行うときは、その理由を付記した書面により、その旨を当該処分を受けるべき者に通知しなければならない。

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制度改正の理由

 制度改正前は、懲戒免職処分と退職手当全額不支給は不可分でした。そのため、退職手当が欲しい職員は懲戒免職処分取消請求を行う必要がありました。そうした中で、退職手当まですべて失わせることが気の毒なようなケースについて、免職処分が取り消されるケースもありました。

 退職手当は、これまでの勤務に対する対価という側面もあり、一度の不祥事による免職と切り離した方が、合理的です。

 

制度の運用

 この制度の運用としては、原則としては全額不支給とされ、一部不支給とするのは、「停職処分にとどめる余地があるところ、あえて厳しく免職処分とされた場合」等に限るとされています。実際にも、一部不支給処分は、極めてまれです。

 教員などでは、普通なら免職にまではする必要のない不祥事でも、「教壇に立たせるわけにはいかない」という判断から、免職とされることがあり得ます。一般職では、そのようなケースはまれであり、今後も、懲戒免職処分=退職手当ゼロが普通の状態が続くと思います。

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