地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年11月

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 ある地方公共団体が設置している会館で、現在は屋内に喫煙所があるのを屋外に移設する準備をしています。

 300人規模の会議ができる講堂から20人規模の会議室まで、8つ程度の会議室を備えた会館で、毎日多くの人が利用しています。現在は、講堂付近の屋内にある喫煙所を廃止し、屋外に新設する計画です。玄関のすぐ脇では、入り口付近に煙が流れてきて苦情が予想されるので、少し離して、目立たないように設置するとのことです。
 タバコを吸う利用者から逆に苦情が出るかもしれませんが、受動喫煙防止のためにはやむを得ないところでしょう。

 

屋内禁煙から敷地内禁煙へ 喫煙所への厳しい目

 庁舎、会館などの公共施設は、少し前までは分煙、つまり喫煙スペース以外での喫煙禁止が主流でした。

 今は、屋内全面禁煙が主流になっており、屋外(敷地内)に設置した喫煙所でのみ喫煙を認めるという地方公共団体等が多いようです。屋内の喫煙所は、住民等の厳しい批判に耐えきれず、滅びつつあります。

 

 現在は、さらに進み、敷地内全面禁煙に踏み切る自治体も増えつつあります。

 屋外に喫煙所を設置する場合、出入り口付近に設置することが多く、出入りする人はタバコのにおいのする中を通らざるを得ません。当然、当局に苦情が寄せられ、敷地内全面禁煙にかじを切ることになります。

 ネットでも、市役所などの庁舎の外(敷地内)の喫煙所が批判にさらされている記事などが、目に入ります。

 

 2020年の東京オリンピックまでに飲食店を全面禁煙にするかどうか、もめているようですが、全面禁煙が当然だろうと思います。

 

路上喫煙の禁止

 以前、私が県の教育委員会にいたころ、公立学校などで敷地内全面禁煙としたところ、校門の外で教職員が喫煙していることに対し、批判されたこともありました。

 

 一昨日のニュースでは、大手ファミレスチェーンのすかいらーくが、本社の社員が通勤の際に最寄りの駅やバス停からオフィスまでの間で喫煙することや、休憩時間中に近所のコンビニの喫煙スペースで喫煙することを禁止したとのこと。英断だと思います。これからは、一層ガストなどをひいきにしようと思います。

 道路を歩いているとき、タバコを吸っている人が前を歩いていたり、すれ違ったりすることは、本当に迷惑なものです。自治体による路上喫煙禁止の拡大を望んでいます。

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 平成25年度くらいから28年度にかけて、ほとんどの地方公共団体で、「職員の降給に関する条例」(降給条例)という不穏な名前の条例が制定されました。これは、人事評価の導入に伴い、その結果を処遇に反映させるためのものです。

 それ以前は、このような条例を定めている地方自治体は、なかったと思います。以前の地方公務員法の解説書で、「例はない。」と記述されているものもありますから。

 職員の降給は、地方公務員法の「分限処分」として行われます。

 

地方公務員法

(分限及び懲戒の基準)

27 すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。

 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。

 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。

(降任、免職、休職等)

28 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

一 勤務実績が良くない場合

二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

三 前二号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合

四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。

一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合

二 刑事事件に関し起訴された場合

 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。

 職員は、第十六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。

 

 地方公務員法第27条第2項では、職員の分限処分の種類について、降任、免職、休職、降給の4つに定めています。

 そのうえで、降任と免職については、法律で要件を定めることとし、第28条第1項で定めていて、条例で要件を加えることはできません。

 休職は、法律又は条例で要件を定めることとされ、第28条第2項で定めたうえで、条例で要件を加えることも認めています。

 降給は、法律では一切要件を定めておらず、条例で定めることとされています。つまり、条例がなければ、降給処分はできないということです。従来も、降任に伴って給料の号給が下がることはありましたが、それは単に降任の結果であり、降給処分ではありません。

 

 各自治体では、人事評価制度の本格実施に向け、評価結果を給与等の処遇に反映させるため、降給条例を制定せざるを得なかったわけです。

 条例の内容は、おおむね、人事評価で最低の段階に区分された者であって、指導にもかかわらず改善されなかったもの等を降給するというような内容が多いようです。

 今後の運用が注目されます。

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 公立学校の教員などが、40キロの速度違反で懲戒処分を受けたことが、新聞で報道されることがあります。自治体によって差があると思いますが、特に公務員の場合、30キロ以上のオーバー(高速道は40キロ以上)と30キロ未満(高速道は40キロ未満)のオーバーでは、大きな違いがあります。

 

罰金と反則金

 一般道で30キロ未満、高速道で40キロ未満の速度超過違反に対しては、青い切符を切られて反則金の納付を命じられます。その反則切符をもって金融機関で払い込めば、刑事罰に問われることはありません。この反則金というのは、行政罰であって、刑事罰ではなく、したがって、前科は付きません。反則金を納めずにいると、刑事手続、罰金に移行します。

 それに対し、一般道で30キロ以上、高速道で40キロ以上の速度超過違反は、赤い切符を切られ、罰金となります。この罰金というのは立派な刑事罰です。違反者は、簡易裁判所に出頭を命じられ、簡単な裁判手続を経て、判決を言い渡されることになります。もちろん、前科が付きます。

 

公務員の場合

 前科が付くか付かないかは、公務員でない一般人にとっても大問題ですが、公務員の場合、さらに大きな問題があります。

自治体によって規則、要綱等が異なりますが、多くの自治体では、職員が刑事罰の対象となるような交通違反を犯した場合、当局への届出を義務付け、懲戒処分の対象としています。30キロ台のオーバーであれば、懲戒処分の中で最も軽い「戒告」でしょうが、それ以上の超過の場合は、減給○か月ということもあります。

 また、以前にも違反していれば、加重されることが多いと思います。

 

 「戒告」ならば、叱られるだけで実害はないからいいやなどと考えてはいけません。戒告とはいえ、懲戒処分を受ければ、次のボーナス時の勤勉手当に反映されるのはもちろん、翌年11日の昇給も抑制される自治体が多いと思います。普通の勤務成績の人の昇給は4号給(5級以上の職員は3号給)ですが、懲戒処分を受けた場合は、2号給とか、程度によっては昇給なしということもあり得ます。

 昇給を抑制された影響は、在職中ずっと続くので、生涯賃金では大きな影響が出ると思います。

 

 速度超過をしてはならないことはもちろんですが、私なども、周囲の車の流れに合わせて運転していると、超過してしまうこともあります。そんな場合でも、30キロ以上のオーバーは絶対にしないように気を付けています。

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 年次有給休暇について、一般に公務員は恵まれています。

 労働基準法では、採用の日から6か月間継続勤務し、8割以上出勤した職員に対して10日の有給休暇が与えられ、その後1年ごとに追加され、6年目(採用から6年6月目)にようやく年20日の有給休暇が与えられます。

 公務員の場合、採用されたときから無条件に年20の有給休暇が与えられます。最初の年は15日になっている場合が多いと思いますが、それは、4月から12月までの9か月が対象であるからであり、1年にすれば20日です。とても恵まれています。

 

日数の管理は暦年か年度か

 国や大多数の地方公共団体同様、私の所属していた県も年次有給休暇は暦年単位(1月から12月)でした。そのため、ずっと年休は暦年で管理するものと思い込んでいました。

 しかし、地方公務員法、労働基準法などにも、暦年か年度かなどということは何も定められておらず、各自治体が条例、規則で定めればいいことであることを最近知りました。芦屋市、我孫子市、大田区などでは、従来は暦年で管理していたものを、近年、年度単位に切り替えたようです。

 

 自治体の仕事、人事のサイクルからすれば、一般的には年度単位の方が適当だろうと思います。いい例が、年度末の退職者です。3月末に退職予定の人にも、1月初めに20日間与えられます。まれにですが、それを使い切ろうとする退職者もいるようです。周囲の人には、迷惑だろうと思います。よほど時間にゆとりのある職場でなければ、そんなことはできないでしょう。

 

1日未満の端数の繰越

 一方、公務員の運用の方が職員に不利と思われるのが、未使用分の繰越です。

 自治体の多くは、翌年に繰り越す際、1日未満の端数は切り捨てることになっています。民間は、端数をそのまま繰り越すか、切り上げるところが多いようです。

 繰越が1年しか認められず、翌々年までの繰越が認められないのは、付与された年休は2年間で消滅時効にかかるためです。一度与えられたものは、使うか時効で消滅しない限り残るとすれば、1年未満の端数を切り捨てるのは理屈が通らない気がします。民間の運用の方が正しいのではないでしょうか?

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 地方公務員の定年前の早期退職者に対する退職手当については、各自治体の条例に基づき、一定の要件の者について、「勧奨退職」という割増制度がありました。これが、国家公務員については、平成25111日から「応募認定退職」という制度に切り替わりました。

 総務省では、地方も国に準ずるよう助言していますが、まだ、旧制度のままの自治体の方が多いようです。

 

従来からの「勧奨退職制度」

 制度の内容は、各自治体の条例で定められますが、おおむね、次のようなものです。

 《勤続25年以上で、定年の年齢から10歳を減じた年齢以上の者が、任命権者の勧奨を受けて退職した場合、退職手当算定の基礎となる退職時給料月額等を、定年までの年数1年につき2%加算する。》

 

 実際の運用としては、任命権者が、勧奨退職の要件に該当する勤続年数、年齢の職員に早期退職の希望の有無を照会し、希望した職員に対して勧奨の手続をするというやり方がほとんどだと思います。また、都道府県などでは、職位の高い職員(部長級など)について、58歳、59歳で勧奨するという慣行も行われていました。

 

「応募認定退職制度」

 応募認定退職制度は、任命権者が、①年齢、職位、勤務部署その他募集の対象範囲を特定する事項、②募集の期間(応募受付期間)、③募集人数、④退職すべき期日又は期間 等を明示、周知して募集するものです。一般に、勤続年数20年以上で、定年まで15年以内の職員が対象になります。応募者は、原則として認定され、退職手当算定の際に退職時給料月額等に、定年までの年数1年につき3%加算されます。

 

新旧両制度の比較

 応募認定退職制度の方が、年齢や勤続年数の対象が広く、また、退職手当の加算も大きくなっています。一方、対象者をあらかじめ特定して職員に周知しなければならず、融通が利かせにくい面があります。

 例えば、早期退職の募集期間が過ぎてから、30年以上献身的に働き、自治体に貢献してきた職員が家庭の事情などで辞めざるを得なくなった場合、従来の制度であれば、勧奨退職の手続を取って、これまでの労に報いることができます。応募認定退職制度では、募集期間が過ぎていれば、原則的にアウトです。

 また、職員にとっては対象になれば新制度の方が有利ですが、自治体の負担の面では、新制度の方が財政負担が大きくなります。

 

 結局、新しい応募認定退職制度は、早期退職の慣行のある国家公務員にとっては有利な制度だと思います。しかし、そのような慣行のない地方公共団体にとっては、よほど職員の年齢構成に歪みがあってそれを是正したい場合以外は、使い勝手が悪い制度のような気がします。無理に導入する必要はないと思います。

 応募認定退職制度の導入を求めている職員団体もあるようですが、この融通の利かなさを理解されているのか、疑問です。この制度の下で個々の職員のために融通を利かせようとすると、脱法的な妙な処理をすることになるのではないかと思います。

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