地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2017年12月

   サイト案内(目次)

 一部の自治体では、財務規則で、「立替払費用償還」という制度を設けています。

 しかし、この制度は、違法といわれているため、多くの自治体では設けていません。総務省の研究会では、この制度化の必要性に言及していますが、実現の見通しは、不透明です。

 

制度を設けている自治体の規則例

(立替払費用償還請求書の提出)

第○条 収支命令職員は、緊急かつ予期しない場合において、即時対価を支払わなければ物品の購入、通信運搬、借上げ、人夫の雇用等諸役務の調達が著しく困難な経費を立て替えて支払をした職員に対し支出しようとするときは、当該職員に立替払費用償還請求書を提出させなければならない。

 

違法とされている理由

 自治法第232条の5第1項で、自治体の支出は債権者のためでなければしてはならないことになっており、また、同条第2項で、そのやり方も限定しています。限定列挙されている中には、職員が債権者に対して立替払いしてそれを後日自治体が償還するというやり方は、ありません。

 したがって、自治体は本来、規則でそのような手続を定めてはならないことになります。

 

〈参照条文〉

地方自治法

232条の5 普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない。

 普通地方公共団体の支出は、政令の定めるところにより、資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払又は口座振替の方法によつてこれをすることができる。

 

この制度の必要性

 規則で制度を設けている自治体も、違法といわれることは承知の上で、制度化しているのでしょう。私も、必要な制度であると思います。

 この制度を否定する人は、「あらかじめ資金前渡を受けておけば、立替払などをしなくて済むはずだ。」と言います。多くの場合、その通りなのですが、うっかり失念して事前手続をしないまま立て替えざるを得なかったとき、それを職員に負担させるようなことは不公正です。制度は、ミスがあった場合もカバーできるようにしておくべきであり、このような制度は絶対に必要です。

 

 正々堂々と立替払費用償還をする仕組がないと、裏金を作っておきたくなったり、妙な裏技を生み出したりするようになるものです。

 したがって、私は、これは現行自治制度の瑕疵であると考えており、制度化している自治体を批判しません。

   サイト案内(目次)

 今朝(1227日)の朝刊で、
福島の原発事故時に炉心溶融(メルトダウン)の公表が遅れた問題で、新潟県と東電の合同検証委員会が、「炉心溶融という言葉の使用について官邸からの指示はなく、使わないよう社内に指示したのは当時の社長の判断だった。」とする調査結果を公表したという記事がありました。

 「やっぱりな」という気がする一方、では、東電が設置した第三者検証委員会が下した官邸の指示があったという「推認」は何だったのだろうと思います。東電トップが、責任逃れのために官邸に責任を擦り付けたのを、裏付けも取らずに「推認」しただけだったということです。

 これは、他の企業、行政にとって、大変迷惑な話です。

 

「第三者委員会」の信頼性が失墜

 何か不祥事、問題が発生したとき、その組織が外部の専門家を集めた「第三者委員会」で原因などを検証することは、今や常道になっています。しかし、今回のことで、問題を起こした企業や行政機関自身が設置した組織では、いくら外部の専門家を集めたとしても、信用できないことを白日の下にさらしてしまったのです。

 「外部」の専門家とはいえ、事件を起こした組織と良好な関係にある専門家を集めれば、その組織に都合の悪い検証結果になりにくいのは当然です。まさに「忖度」ということなのでしょうか?検証の信ぴょう性を確保するため、ある程度はその組織に都合が悪いことを指摘しても、その組織にとって致命的なところまでは踏み込まない、そんな予定調和的な結論を導くための「外部委員会」もあるのでしょう。

 これまで、真面目に、本当に第三者的に検証してきた「第三者委員会」もたくさんあったはずですが、今回のようなことがあると、検証結果の信ぴょう性が疑われてしまいます。

 

「第三者検証委員会」の検証が必要

 なぜ東電の第三者検証委員会が、妙な検証結果を出したのか、どんな検証作業の結果、そのような結果になったのか、検証が必要です。その検証を丁寧に行うことによって、今後「第三者委員会」を設置する際にはどのようにしなければ信頼性を確保できないか、方向が見えてくると思います。

 東電には、他の企業、行政機関への迷惑を最小限に抑えるため、是非、真摯な対応をお願いしたいところです。

 

 

   サイト案内(目次)

 今、多くの自治体では、当局と職員団体の間で退職手当条例の改正の議論が交わされています。当局側が、国家公務員に合わせて退職手当を引き下げる提案をし、それに対して職員団体が抵抗している構図です。

 今回の引き下げ幅は、平均で78万円ほどと、2012年に行われた改定と比べて小幅なこともあり、ほとんどニュースにもならないようです。

 

現在の争点 施行日をいつにするか?

 国家公務員退職手当法の改正が、すでに128日に国会で成立していることから、職員団体側も改正内容(到達点)については、あきらめているように見えます。しかし、国が求めている11日施行については、かなり抵抗があるようです。

 国会で成立してから、地方自治体の議会で1月1日施行に間に合わせるように議決しようとすれば、労使交渉も議会での審議もほとんど時間がなく、形だけのものにせざるを得ないでしょう。

 

 ネットで探すと、高知県当局が、既に労使交渉を打ち切って、2月1日施行の条例改正を12月議会に提案するという1215日付けの情報がありました。あまりニュースにもならないようで、それ以外は、見つけられません。

 噂によると、それ以外の県でも年度内の施行を決めたところもあるそうです。
 職員団体の力が、昔と比べて弱体化したのでしょう。

 

 私の古巣の県庁では、3月1日施行で職員団体に提案し、交渉中のようです。

 

年度途中の施行の問題点

1 夏ころから現行の退職手当額を前提に勧奨退職などの手続を進めてきたところが、今になって退職手当額を変更することになり、職員の信頼を裏切る結果になる。

2 駆け込み退職が生じた場合、行政が混乱する。

3 定年退職者の間で不公平が生ずるおそれがある。

多くの自治体の条例では、「○年以上勤続した者で、通勤による傷病により退職し、死亡により退職し、又は定年に達した日以後その者の非違によることなく退職した者に対する退職手当の基本額については、定年退職と同様に扱う。」というような規定があります。つまり、3月1日施行にした場合、駆け込み退職者が既に60歳に達していれば、定年退職と同様の支給率にできますが、誕生日が3月2日以降の人は、駆け込み退職をすると、全くの自己都合扱いになってしまいます。これでは、むしろマイナスになるので、駆け込み退職できないでしょう。

 

 いろいろ考えると、やはり年度途中の施行は適当ではないと思います。

 

   サイト案内(目次)

 多くの家庭では、電気、ガス、水道等の公共料金は、給与や生活費を管理する金融機関の口座から自動的に引き落とされる手続をしています。我が家もそうです。

 しかし、地方自治体で、そのやり方で支払っているところは極めて少数で、その理由は、次のようなことだろうと思います。

 

自治法は口座自動振替を認めているか?

 自治法第232条の4で、地方公共団体の支出は、長の命令により、会計管理者が審査したうえで行わなければならないことになっています。自動振替は、一度手続をすれば、長の命令の有無にかかわらず、会計管理者の審査がされたかどうかにかかわらず、指定金融機関の公金口座から勝手に引き落とされます。これは、自治法の許容するところではないと思われます。

 また、自治体が支払をする方法は、自治法第232条の5第2項に列挙されている方法と、第232条の6で規定している小切手の振出等に限定されています。限定列挙の中に、「公金振替」がありますが、これも自治令第165条の2で、会計管理者の通知に基づいて行うこととされており、自動振替は想定されておりません。

 結局、口座自動振替は、自治法の規定に反していると考えられることから、多くの自治体では採用していないのでしょう。我が小規模自治体でも検討しましたが、NHK受信料などは資金前渡の方法をとり、資金前渡職員の口座から自動引落しする方法としました。

 NHK受信料を長期継続契約、資金前渡の対象に指定」参照

 

自動振替を採用している自治体の財務規則(例)

第○条 電気、ガス、水道、下水道、電気通信役務及び放送受信に係る料金は、口座自動振替の方法により支払うことができる。この場合において、債権者の振替情報をもって請求書の提出に代えることができる。

 

 確かに便利だろうと思います。違法かもしれませんが、誰の権利も侵害しておらず、この違法を訴える原告適格を有する者は、私には想定されません。

 私は、やりませんが、法令が現実に追い付いていない結果とも考えられ、割り切って断行された自治体を批判する気はありません。

 

〈参照条文〉

地方自治法

 (支出の方法)

232条の4 会計管理者は、普通地方公共団体の長の政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができない。

 会計管理者は、前項の命令受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない。

232条の5 普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない。

 普通地方公共団体の支出は、政令の定めるところにより、資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払又は口座振替の方法によつてこれをすることができる。

(小切手の振出し及び公金振替書の交付)

232条の6 第235条の規定により金融機関を指定している普通地方公共団体における支出は、政令の定めるところにより、現金の交付に代え、当該金融機関を支払人とする小切手を振り出し、又は公金振替書を当該金融機関に交付してこれをするものとする。ただし、小切手を振り出すべき場合において、債権者から申出があるときは、会計管理者は、自ら現金で小口の支払をし、又は当該金融機関をして現金で支払をさせることができる。

2 略

 

地方自治法施行令

(口座振替の方法による支出)

165条の2 地方自治法第235条の規定により金融機関を指定している普通地方公共団体において、指定金融機関、指定代理金融機関その他普通地方公共団体の長が定める金融機関に預金口座を設けている債権者から申出があつたときは、会計管理者は、指定金融機関又は指定代理金融機関に通知して、口座振替の方法により支出をすることができる。


   サイト案内(目次)
 

 今朝のニュースで、アメリカ軍ヘリコプターの窓が落下した小学校に対し、「やらせだ」とか、「そんな場所に学校を作った方が悪い」などという誹謗中傷が相次いでいることを報じていました。やらせなどであるはずがなく、また、学校を作った方が悪いなどというのも、歴史を全く無視した暴論で、理解に苦しみます。

 日本人は本来そんなことをしない礼儀正しい国民だったはずですが、劣化してしまったのでしょうか?

 

そんな電話は誰がするのか?

 誰がそんな電話をするんでしょうか?そんな電話によって利益を受けるのは誰でしょうか?

 実際にその電話を誰がしたか、分からないでしょうが、これまでの経緯から、沖縄の人たちは、きっと犯人は本土の人だと思うでしょう本土に対する沖縄県民の反感の高まりが心配です。

 尖閣どころか、沖縄本島も本来は自分の領土だなどという荒唐無稽な主張をしている国があります。沖縄県民の本土に対する反感が高まり、独立論などが勢いを得れば、喜ぶのはその国しかありません。そんな電話をする人には、そのことを考えてみていただきたいと思います。

自分では愛国的な行動だと勘違いしているのか、あるいは、資金提供を受けてある国の利益のために売国的行動をしているのか、どちらでしょうか?

 

大多数の国民の気持ち

私を含め、大多数の本土の住民は、沖縄にばかり過重な基地負担を強いていることに対して感謝の気持ち、あるいは少し後ろめたい気持ちを持っていると思います。アメリカとの安全保障条約、米軍基地は必要と考えている人が大多数だと思いますが、もう少し日本の主権を尊重したものにすべきだと感じているのではないでしょうか?

 

米軍の行動に対しては「お願いする」以外に何もできない日本の政府には、地位協定を見直し、いつまでも占領状態の法制度のままに放置せずに、独立国としての主権を回復すべく、最大限の努力をしていただきたいと思います。
 『「知ってはいけない」(矢部宏治)を読んで』参照

↑このページのトップヘ