地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2018年02月

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 ※ 本稿で指摘した誤りの一部は、第4次改訂版第4刷では訂正されています。(2019年2月)

 地方公務員の新採用職員用テキストとして使用されることが多い「地方公務員 フレッシャーズブック」が改訂されました。平成29年度の研修では第3次改訂版を使いましたが、内容的にかなり古いため改訂を待ち望んでいました。それが、せっかく新しく改訂された
4次改訂版にいくつか誤りが残っており、少しがっかりしています。これをテキストに使用される団体は、注意された方がいいと思います。

 使用するなという趣旨ではありません。全体的に見て、この本が最も適当だと思うので、我が団体でも新年度に使用するつもりで、注意を喚起したいという気持ちだけです。だから、万一出版社の方が御覧になっても、怒らないでください。営業妨害になるような書き方はしませんので…。

 

 先日、新年度のテキスト用として講義準備のために配付されたので、我が団体で使用を予定している第1編、第2編だけ、ざっと目を通しました。完全な間違いが二つ、がっかりした部分が三つありました。精査すれば、もっとあるだろうと思います。

 本稿では、使用の際に特に注意いただきたい間違い部分の二つについて、まず、御紹介いたします。

 

休息時間が一般的?

 国家公務員の休息時間が平成18年に廃止され、地方においてもその後順次廃止されました。平成284月時点で廃止していないのは、1団体だけのようです。

このテキストでは、次のように説明しています。

「休息時間は、労働基準法によるものではありませんが、従前の国家公務員の例に準じて、午前・午後それぞれ15分間の休息時間を条例で定めているのが一般的です。」

 平成19年ころにはこういう状況だったかもしれませんが、平成22年ころにはほとんどの団体で廃止されていました。ずっと前から改訂漏れが続いているようです。

 

遅延防止法の説明に誤り

 テキストでは、次のように記載されています。

「地方公共団体が契約の対価を支払うのは、給付完了の確認又は検査を終了した後、相手方から適法な支払請求書を受理した日から、原則として工事代金については40日、その他の対価は30日以内とすることとされています。」

「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」では、契約書を作成する場合は対価の支払の時期を明示することとし、その明示すべき時期として、「適法な支払請求書を受理した日から、原則として工事代金については40日、その他の対価は30日以内」としています。また、定めをしなかった場合は、相手方が支払請求をした日から15日以内の日と定めたものとみなすこととされています。単純に、40日、30日以内に支払えばいいものではないのです。

新採用の職員が、庶務、会計に配属され、契約書など作成せずに事務用品を購入した請求書の処理をすることもあるでしょう。30日以内に支払えばいいと思っていると困るので、職員に配付する際は、注意が必要です。

 

誤りとまでは言わなくていいものの、がっかりしたこと、不十分と思われることは、次稿で紹介させていただきます。

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 韓国が慰安婦問題に関して日本に不当な嫌がらせをしてくることに対抗して、韓国軍がベトナムで犯した「ライダハン」を持ち出す人も多いようです。韓国大使館前にライダハン像を建てろという人もいます。

 私は、日本側が、このような形で「ライダハン」を持ち出すことは、大反対です。

 

ライダハンは歴史的事実、慰安婦問題は虚構

 「ライダハン」は疑いようのない歴史的事実です。一方、慰安婦の強制連行は、まったくのでっち上げです。慰安婦問題への対抗としてライダハンを持ち出すことは、慰安婦の強制連行も事実であるかのような誤解を世界に与えてしまうと思います。

 

 このような文脈で「ライダハン」を持ち出すことは、「戦争という狂気の中ではこのようなことは起こってしまうものだ。韓国も日本と同罪なのだから、いつまでも慰安婦のことばかり持ち出すな!」という意味になってしまうのではないでしょうか?

 

日本軍も無実ではないが「強制連行」は虚構

 日本軍も、東南アジアや中国大陸では、戦時性暴力があったことは否定できないと思います。戦後の極東軍事裁判で裁かれた例もあります。しかし、それらは、戦闘地域などです。そういった地域では、新たに支配下に置いた地域で性暴力や、捕らえた女性を強制的に慰安婦にした事例もあったようです。

 しかし、朝鮮半島は、戦闘地域ではありません。内地でした。日本政府の管轄下の警察が、治安を守っていました。警察官には、朝鮮人も大勢いたようです。そんな地域で、強制連行のようなことが起こるはずがありません。

 

 河野談話の前段での韓国政府の調査、朝日新聞が誤報を認める前の社運を賭けた調査でも、強制連行があったことを裏付ける証拠は、何も発見されませんでした。

 

 強制連行がなかったという証明は、いわゆる悪魔の証明で、不可能でしょうが、なかっただろうと疎明する状況証拠は、たくさんあります。

 前述のように、日本支配下の朝鮮半島は、極めて治安が安定していたこと、反乱などがほとんど発生していないこと、多数の朝鮮の若者が日本軍に志願していることなどです。また、当時の警察が、違法な手法で慰安婦を集めようとした業者を摘発した記録も残されています。

 自国の女性を強制連行しているような軍隊に、反乱を起こすのではなく、若者が入隊志願に殺到したのだとすれば、朝鮮の歴史にとってこれほど恥ずかしいことはないでしょう。

 

 戦時性暴力については、どこの国も脛に傷を持っているのでしょうが、前述のように日本も無罪ではありません。

 だから、韓国のライダハンを言い立てるのではなく、慰安婦の強制連行は根も葉もないでっち上げであることを主張し続けるのが、正しいやり方だと思います。

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 先日の土曜日、今年も確定申告を終えました。10年ほど前から電子申告(e-Taxを利用していますが、休みの日に自宅でできるので、便利です。

 

長官への怒りを現場の職員にぶつけない

 世間では、国税庁長官の虚偽答弁に対する非難から、確定申告の混乱を心配する声もありました。納税者としての怒りを伝えたい気持ちは、私もよく分かりますが、それを税務署員にぶつけるのは、ただでさえ忙しい時に、気の毒です。そういう人がトップに就任して、一番怒っているのが税務署員ではないかと思っているので、私は、そういうことは、やらないことにしています。

 

 e-Taxの手続の最後に、任意の協力としてのアンケート調査e-Taxの使い勝手などを問うもの)がありました。便利なシステムであることを答えたうえで、そこに3つほど注文を書きました。

 ① e-Taxにマイクロソフトedgeが使えず、インターネット・エクスプローラーに切り替えなければならないのが、面倒なこと。

 ② 29年分申告用の医療費明細書の様式変更は、29年の初めころには周知していただきたかったこと。

 ③ 国民の不信を招いている人物を国税庁の長官に据えているのは、正しい申告をしようとする納税者のモラールを損なうこと。

 最後の一つは、おまけです。

 

公務員の確定申告のメリット

 ずっとサラリーマン(県職員など)でしたが、20年ほど前から確定申告を続けています。子供の成長で自宅が手狭になって住み替えたとき、バブル崩壊後で不動産価格が下がっていたため、前の自宅を売らずに賃貸したためです。

 

 私の在職していた県庁は、副業(営利企業等従事許可)の基準が、国家公務員のように独立家屋なら5棟以上でなければ許可手続不要とするほど甘くはありません。投資目的でマンションを取得しようとすれば、たとえ1室でもダメとされますが、私のケースのように、持っていた資産を活用するケースなどは、小規模であれば許可手続不要で認められます。

 

 住み替えてしばらくはローンに苦しみましたが、賃貸を始めたのは、結果的に大正解だったと思います。

 毎年、確定申告することが、非常にいい経験になりました。

もちろん、給与所得者ですから、年末調整は職場でやっていますが、給与以外の所得が20万円以上あると確定申告の義務が生じます。県職員としての仕事の中で、所得税の概略は知っていましたし、簿記資格を取得する中で企業会計の知識も持っていましたが、自分で申告を体験することで、より深く理解できました。

 減価償却のやり方や、耐震補強工事をしたときに、どこまでを当年度の経費にし、どこからを資本的支出として減価償却資産にするか等、その都度調べて対応しました。1棟だけの賃貸でもいろいろな事案が発生するので、勉強になります。

 

 10年ほど前、電子申告にするため、住民基本台帳カードを取得するとともに公的個人認証の手続もしました。その後、マイナンバーカードに切り替えています。

私の周囲の県職員には、わざわざそんな手続をした経験のある人はほとんどいませんでした。

 

 4年前からは、帳簿を整えて、青色申告(現金主義)の申請をし、移行しました。

 2年前からは、屋根に太陽光発電システムを設置し、雑所得が加わりました。

 

 これらの体験で得た知識は、県職員としての仕事の中で、大変役立ちました。県職員としての能力の幅を少し広げてくれたと思います。

 今も、市町村職員研修の講師をするときはもちろん、第2の職場の通常業務でも役立っています。

 

 地方公務員法の改正で、会計年度任用職員には一定の副業が認められるようになりますが、正規職員にも一定の範囲で副業を認めた方が、仕事の成果が上がるのではないかと思います。

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 我々が公務員の身の処し方を考えるうえで、国税庁の佐川長官の姿は、絶対に避けたいものだと思います。きっと、彼自身も、どこで間違ってしまったのかと、後悔されていることと思います。

 まるで逃亡犯のように、人目を避けてこそこそ当退庁し、勤務時間中も身を隠しているかのような様子は、哀れです。ああはなりたくないと、誰もが思うでしょう。

 

森友学園への値引きに関与していたか?

 近畿財務局の担当者が、森友学園に国有地を不当に安く払い下げようとしていたことは、間違いありません。そんなことが担当者の独断でできるはずがないので、組織上層部の指示、関与があったはずです。それが、近畿財務局内部にとどまっていたのか、財務省理財局長も関与していたかが、まず問題です。

 また、その値引きが、高級官僚の誰かが安倍総理の意向を忖度した結果に過ぎないのか、安倍総理の周辺からの要請に応じたものなのかが、二つ目の問題です。

 

書類破棄等の答弁は誰のシナリオ?

 通常、どのように答弁するかは、担当部署が作成する想定問答などで事前に検討し、責任者の了解を得て決定されるはずです。書類が破棄されているとか、森友側と売買金額についての協議などしていないとかの虚偽の答弁は、誰が原案を作り、誰がそれを最終的に了承したのでしょうか?それが、三つめの問題です。

 そもそも、公務員の常識として、財産の売買の際の価格決定などに関する資料は、完結(引渡や代金授受等の終了)してから少なくとも5年間は保存するはずです。完結もしていない案件の資料を破棄などするはずがないのです。

 

 これだけの政治案件ですから、少なくとも財務大臣、普通に考えれば首相も、答弁内容を了解していたと思います。私は、県や市町村の場合しか知りませんが、本会議場で部局長が答弁する場合の答弁案も、必ず知事も目を通して了解していました。知事の答弁内容と齟齬があると困るからです。その点は、国も同じだと思います。

ただ、上層部は、それが虚偽であることを知らず、本当に破棄されていると考えていたかもしれないと思います。

 例えば、理財局長の立場に立てば、自ら破棄したり破棄を指示したりしたいところでしょうが、そのことがバレたら身の破滅です。部下が自分の気持ちを忖度して書類を破棄してくれることを期待して、部下が書いてきた「破棄した」という答弁を了承したのかもしれません。

 

財務省内の空気、佐川長官自身の気持ちは?

 冒頭で、佐川長官自身も後悔しているのではないかと書きましたが、そうでない可能性もあります。彼が、使命感を持って、明らかな虚偽答弁をしてまで疑惑の拡大を防ごうとしている場合です。その姿を英雄視するような雰囲気が財務省の上層部にあれば、それを助長するでしょう。

 

 前述の三つの疑問の答えによって、彼が誰を、あるいは何を守ろうとしているのか、違ってきます。

 違法な値引きを知っていたのであれば、自分自身を守ろうとしているものであることは当然です。

 さらに、首相周辺からの要請があったのであれば、その要請元と、要請に応じた自分自身を守っているのでしょう。

 いずれにしても、国民の利益という観点からは、虚偽答弁の動機はありません。

 したがって、彼が使命感を持って行動しているとしたら、国民の利益より内閣の利益を優先した誤った使命感です。

 

 今さら官邸の意向など気にせず、国会の場で、知っていることのすべてを話すことが、国家公務員としての矜持、義務だと思います。

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 私がいま在職している小規模自治体では、近く、当団体としては大規模な建設事業を予定しています。当年度の一般の歳入だけでは対応できないので、このような場合、起債によって財源を調達するの普通です。

しかし、一方で、特定の目的のために積み立てている基金で、今後10年以上は使う必要がないものもあります。そこで、一般会計が、この基金から一時的に借り入れて事業に充て、その後、数年かけて返済することを考えました。

ここで、問題になるのは、このような基金の運用(繰替運用)を年度を超えて行うことが違法ではないかということですが、違法ではないようです。

 

基金の繰替運用

 基金の多くは、将来の特定の目的(庁舎や学校などの改築経費、職員の退職手当の支払など)のために積み立てられているものです。その基金の目的のためでなければ、処分できないとされています(地方自治法第241条第3項)。したがって、基金を処分して使ってしまうことは許されませんが、運用の一環として一時的に一般会計などで使うことは認められています。基金は、必ず条例によって設置されていますが、ほとんどの基金の設置条例には、次のような条項が設けられています。

第○条 長は、財政上必要があると認めるときは、確実な繰戻しの方法、期間及び利率を定めて基金に属する現金を歳計現金に繰り替えて運用することができる。

 

年度を超えた繰替運用の可否

 地方自治法などには、年度を超えた繰替運用を禁止するような規定はありません。だから、各自治体の条例で禁止していなければ、違法ではないことになります。

 それでも、少し躊躇していたのですが、そのような運用をしている団体がかなりあることを知り、当団体もそうすることにしました。背中を押してくれたのは、総務省の担当部署から出された平成30125日付け「平成30年度の地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等について」(事務連絡)です。

 その通知の別記「第3 予算編成上の留意事項」162)に、次の記載がありました。

少し長くなりますが、引用します。

「運用の一形態として、基金から一般会計に会計年度を越える繰替運用を行うという事例が見受けられるが、地方自治法第241条及びそれぞれの基金設置条例の趣旨を逸脱したものとなることのないよう、基金の運用として安全確実性、有利性、流動性(支払準備性、換金性)について満たされているか検証し、必要なものについてはその適正化を図ること。

 あわせて、会計年度を越える繰替運用については、将来負担比率の算定上、当該運用額を充当可能基金から控除する取扱いを確実に行うとともに、住民や議会等が客観的にチェックできるよう、「地方自治法施行規則」(昭和22年内務省令第29号)第16条の2に規定する財産に関する調書、「統一的な基準による地方公会計マニュアル」(平成27123日)に基づく貸借対照表等において、具体的な内容を確実に記載することにより、実態に即した情報開示を行うこと。」

 

 この文書で、年度を越える基金の繰替運用が違法ではなく、行っている団体もあることが分かりました。また、有利性や流動性に留意し、議会などに十分に説明した上で行うべきことが述べられていますが、当然のことです。

 

家計に置き換えると

 自宅を改修する資金が必要になった時に、老後の生活のための預金があったとしたら、預金はそのまま温存して改修資金を銀行から借りるかどうか、一般的にはそうはしないと思います。普通は、預けている利息より借りる利息の方がずっと高いからです。

 

 現在、金利が著しく低く、基金の運用に適した有利な有価証券がなかなか入手できません。一般会計が国債より少し高い程度の金利で借りることとすれば、一般会計にとっても基金にとっても、有利です。

 基金が、他の地方公共団体の公募債を購入して運用することがありますが、自分の団体を運用先としてもいいのではないかと思います。

 

 したがって、当自治体も、一般会計が基金から借りることとし、外部からの起債はしないで済ませることにします。もちろん、議会などには、十分に説明をすることとします。

 

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