地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2018年06月

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 最近頻繁に耳にする言葉です。

 核問題、ミサイル問題、何より(も)大切な拉致問題・・・」「日本にとって何よりも大切な拉致問題」など、この言い回しを首相がよほどお気に入りなのか、記者会見の場で一つ覚えのように繰り返し使っています。

 安倍首相がこういう言葉を使いたくなる立場も理解できないわけではありませんが、聞くたびに居心地の悪さというか、恥ずかしさしらじらしさを感じます。また、諸外国から見た場合、どのように思われるだろうという危惧も感じています。

 

言葉が大げさで軽すぎる!

 拉致問題が日本にとって大切な問題であることに異論をはさむ人はいないでしょう。しかし、北朝鮮の核問題やミサイル問題と並べて、これらよりも大切だと言われると、「本当か?」と聞き返したくなります。

 拉致被害者の家族にとっては、文字どおり「何よりも大切」でしょう。しかし、日本の国として、核問題などよりも拉致問題を優先した対応を採れるはずもなく実際、採っていません。仮に、北朝鮮が拉致被害者全員を返すと言ってきても、核問題の解決なしに経済支援をすることなどできるはずがありません。そんなことをすれば、アメリカは激怒し、日本は西側世界から孤立してしまうでしょう。

 そのような対応ができるはずもないのに、口先だけのサービスは、見苦しいものです。何もできないのに「私が司令塔になって」などと言ってひんしゅくを買うことにもなるのです。

 諸外国も、首相が本気で言っているとは考えないだろうとは思います。そうであれば、平気で国民に嘘をつくと思われ、万一本気だと思われれば、自国のことしか考えない勝手な国だと思われるでしょう。

 

北朝鮮への資金援助に言及しすぎる

 最近の北朝鮮関係の安倍首相の言葉で気になるのは、「過去の清算」など、資金援助をほのめかしすぎることです。これは、「蚊帳の外」のあせりから、何とか仲間に入れてほしくて言っていることだと思いますが、焦りが見えてイタい感じがします。また、必要以上に諸外国に期待させ、国益を損ねています。

 日本は朝鮮を植民地支配しましたが、一般の国民と同様の税、労役を課していただけであり、その分は朝鮮半島のインフラ整備などに使われています。「搾取した」と言えるようなものかは、議論が分かれるところです。諸外国の例などを見ても、国際法上、賠償が必要かどうか、はなはだ疑問です。

 

 政治家、特に政権を担っている人たちは、自分の言葉の影響をよく考え、慎重に発言してほしいものです。

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 大阪地検特捜部が、森友学園関係の公文書改ざん国有地不正払下げなどについて、財務省側の関係者を全て不起訴にしたことを発表しました。

 

公文書改ざん問題

 私は、公文書改ざんの問題については、その公文書を作成する権限を持っている人たちが改ざんした場合は、罪に問うことは難しいと考えていたので、そちらはやっぱりという感じでした。
 「佐川氏の証人喚問」

 

しかし、書き換えた内容が虚偽ではなく、文書内容の根本にかかわらない事柄だったとしても、その微妙なニュアンスの違いで国民、国会をだまそうとしたものであることは明らかです。その悪意が証明されれば、書き換えた内容が虚偽といえなくても、罪に問えるかもしれないとも期待していたので、残念でした。

 

国有地払下げの背任問題

 こちらが不起訴とされたことには私も驚き、憤りを覚えました。国有地が8億円も値引きして売られようとした大事件にもかかわらずにです。

 たしかに、地下のごみの量が不明確だとか、訴訟リスクを避けるとかの事情はあったでしょうが、会計検査院も値下げの根拠が不明確と指摘しているのです。近畿財務局が、関係方面に過大な見積もりを頼んでいたことなども明らかになっています。ごまかして作った数字であることが明らかなのに、起訴できないというのは納得できません。

 事情通によれば、検察の現場は森友学園への強制捜査と同時に近畿財務局への強制捜査をするつもりだったのに、上層部からストップがかかったとのこと。強制捜査無しに起訴することはないので、不起訴の結論は初めから決まっていたのだろうとのことです。

 こんな明白な犯罪を起訴できないようでは、検察の存在意義が問われます。

 

 検察審査会で、「起訴相当」の結論が出ることを期待しています。起訴されなかった場合は、国会に証人喚問をすれば、今度は「刑事訴追のおそれがある」として証言拒否できないので、是非お招きしてほしいものです。


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 61日に、注目されていた最高裁の判決が二つ示されました。

 一つは、非正規雇用の労働者について、正規労働者との処遇の違いがどこまでが合理的とされ、どこからが不合理で違憲とされるかという問題でした。

 もう一つは、定年後の再雇用の社員についてどの程度までの処遇の差が許されるかという問題で、私はどちらかというとこちらの方を注視していました。

 「定年再雇用後の給与 最高裁の判断は?」

 

再雇用に厳格な「平等主義」は採らず

 最高裁は、日本の現状を追認し、欧米諸国のような厳格な年齢差別禁止を採らないことを明確に示しました。つまり、定年後再雇用者と正社員との格差を一部(かなり)容認しました。

 当該会社が、定年後の再雇用について、①再雇用の嘱託社員と正規社員では賃金体系が異なる②定年時に退職金を支払っている、③年金受給前は調整給を支給する、④年収が定年前の79%程度になるように配慮されている、等の事情を考慮し、再雇用後の賃金引き下げや「職務給」「賞与」を支払わないことを不合理とは言えないとしました。

 一方、休日を除く全ての日に出勤した者に支給される精勤手当は、嘱託社員に支払われないのは不合理で違法としました。

 

非正規、正規の格差にはかなり厳しく

 契約社員への各種手当の不支給を巡る訴訟では、最高裁は、当該運送会社が正社員にのみ支給していた6種の手当について、種類ごとに趣旨を個別に考慮し、「通勤手当」「給食手当」「無事故手当」「作業手当」「皆勤手当」の5種類の不支給を不合理としました。

 

地方公共団体も対応を迫られる?

 地方公共団体も、今後、一般の非常勤職員、定年停職者の再任用職員、再雇用職員の処遇について、見直しを迫られるかもしれません。

 例えば、現在の非常勤職員には期末手当も勤勉手当も支給されていません。新たに設けられる会計年度任用職員も、期末手当は支給されることになっていますが、勤勉手当は対象外のようです。それが、合理的なのかどうか考える必要があるかもしれません。

 また、定年後の再任用職員、再雇用職員は、今回判決があった会社よりも格差は大きいと思います。多くの場合は職務内容が変わるので直接の比較はできませんが、まれに、同じ役職のまま再任用になる場合もあります。また、地方公共団体では、年金支給開始前だからといって調整給の支給もありません。

 

 住居手当は、正社員は転居を伴う異動があるからなどの理由で、正社員だけに支給することも不合理ではないという判断です。転居を伴う異動などのない市町村役場では、どんな判断になるのか、検討の必要があるかもしれません。

 

 私の自治体でも、判決を精査して検討してみたいと思います。


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 題名を見れば想像がつく通り、21世紀の資本」の内容に呼応するものです。著者は、不平等の問題を主に取り組んでおられる著名な経済学者で、本書の序文は、「21世紀の資本」の著者、トマ・ピケティ氏が書いておられます。

 だから、日本でも進みつつある所得や財産の不平等、格差の問題に関心のある方には、一読をお勧めいたします。ただし、正直に言って、非常に読みにくく、読み進めるには多少の忍耐が必要です。この辺は、「21世紀の資本」も同様です。

 特に第1部が学術的な内容が多く、読み進めるのが苦痛ですが、第2部以降は、実践的な話が多くなり、興味を持って読み進められます。私は、所得や資産の格差が広がりつつあり、そのことはこれからの社会に大きな問題であることに同意できる人は、1部は読み飛ばし、第2部「行動のための提案」から読んでもいいのではないかと思います。

 

 第2部には、いろいろ興味深いことが書かれています。

 私は、外国の事情に詳しくなかったのですが、EU諸国も、労働組合の組織率が近年著しく低下し、社会への影響力を失っているとのことです。また、非正規雇用の割合も著しく増加しているとのこと。日本と同じような問題を抱えています。

 

 格差を広げないための対策として、最も興味をひかれた一つだけ紹介いたします。

 法定の最低賃金のほかに、倫理的な賃金ルールを各企業が持つことを社会が奨励するという手法です。例えば、「経営トップの役員報酬と、最も賃金の安い社員の給与との格差は、10倍を超えてはならない」とか、「経営トップの報酬は、社員の平均給与の7倍を超えてはならない」というルールを企業が決めておくということです。既に実践している企業もかなりあるとのことです。

 さらに、政府や地方公共団体の調達で、そういう企業を優遇するなど、社会が支援することで、広げていくわけです。

 

 おもしろいのではないかと思いました。

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 地方公務員の新採用職員研修もだいたい終わったころかと思います。私も、何科目か、講師を務めさせていただきました。

 地方自治制度に関する講義では、条例制定権(「法令に違反しない限りにおいて」条例を制定できること)についても簡単に触れます。

 昨年までは、上乗せ条例(国の規制よりも厳しい規制を条例で定めること)の説明の際は、公害防止条例を例に説明していました。大気汚染防止法などの国の法律よりも厳しい規制を条例で定めた事例等です。

 今年は、東京都が制定の準備を進めておられる受動喫煙防止条例(仮称)がタイムリーで身近な話題だと思い、それを取り上げて新採用職員に説明しました。

 

東京都受動喫煙防止条例案の上乗せ、横出し論

 私は、東京都のこの条例制定については、メディアが報じた範囲のことしか知りませんが、興味を持って注視していました。

 報道によると、飲食店での全面禁煙について、国の健康増進法の現在の改正案では客席面積100平方メートル以下の飲食店は適用除外とされ、55%もの飲食店が規制対象から外れてしまいます。当初は、「30平方メートル以下のバーやスナックを適用外とする」という案だったのが、自民党の反対で緩められてしまったものです。

 

東京都は、初めは健康増進法の当初の改正案と同様に、面積30平方メートルを超える飲食店を全面禁煙とする方向で検討していました。それだと、典型的な上乗せ条例になります。

東京都では、それを避け、「被雇用者の健康」という法律とは別の公益を持ち出し、従業員を一人でも雇用している飲食店は全面禁煙とし、客席面積での規制を取りやめました。これにより、84%もの飲食店が全面禁煙になるとのことで、法律より大幅に厳しい規制です。しかし、客席面積で厳しくしているわけではないので、上乗せ条例とは異なります。一種の横出し条例でしょうか?

 

東京都が、客席面積による規制を取りやめ、従業員の有無に着目した規制に変更されたのは、こちらであれば条例制定権の範囲を超える違法な規制だと言われる心配がほとんどないからだろうと思います。どなたが思いつかれたのかは知りませんが、さすがは法制スタッフの充実した東京都だと感心しました。

 

講義の際の話のネタを提供してくださった東京都に感謝し、受動喫煙防止に向けての御健闘をお祈りしております。守旧派の議員に負けないでください。

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