地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2018年11月

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 前稿では、主に契約保証金を例に、
国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」(一般に「端数計算法」)の運用について、この法律を適用すべきでない場合にまで適用される傾向にあることを説明しました。

 「端数計算法の誤った適用」

 

 本稿では、もっと一般的な、売買代金や委託料などの端数処理について説明します。なお、前稿では、「地方財務実務提要」の記載が誤っていたことに触れましたが、現在この書籍の第3巻16章7節「その他諸法関係」に登載されている端数計算法についてのQ&Aは、私法上の債権債務に係る事項については、私からみてもいずれも妥当です。公法上の関係では、この法律が適用除外される「地方団体の徴収金」の範囲について、Q&A間で不一致があり、適当でない部分がありますが・・・。
 本稿の記載は、私法上の債権債務に関する部分なので、国の解釈運用と一致していると思います。

 

債権債務の「確定金額」とは

 「確定金額」については、端数計算法に定義がなく、法令用語として確立した定義があるような用語でもありません。文言に素直に「一つの契約を単位として支払うべき金額、受け取るべき金額として最終的に確定した金額」と解すべきであり、そのように解釈されています。

 つまり、契約によって具体的な金額が決まるような債権債務は、契約の中で端数処理についての取り決めがあれば、それによって端数処理された後の金額が確定金額になるのです。その取り決めは、四捨五入でも切り上げでも構いません。

 

電気料金

 電気料金については、各電力会社が「電力供給約款」を定めており、その中で料金の端数処理の方法が定められ、それに従って請求されます。その約款も含めて契約内容であり、それによって端数処理された後の金額が「確定金額」になるので、端数計算法の出番はありません。

 

一般の物品購入などの消費税等

 物を買って消費税率を乗じると、1円未満の端数が付くことがあります。その場合、相手方は、それぞれの定めているところにより、切り上げたり切り捨てたりして請求してきます。

 契約(発注)の際、端数処理について合意していればそれが契約内容であり、「確定金額」ですが、契約書を作成しない場合のほとんどは、そんなことを決めずに発注しているでしょう。それは、多くの場合、自治体側は相手方の定めに従うことを承認していると解釈すべきです。

 地方公共団体だから絶対に切り捨て以外の請求書は受け付けないなどと突っ張る必要はありません。切り捨ててくださいと言えば応じてくれる業者が多いでしょうが、本来はそんな理屈は通らないと思います。

 

単価契約の支払

 単価契約の論点は、どの単位をもって一つの債務とするかという点です。

 一般的には、1回の発注を一つの売買契約と捉えて端数処理して支払えばいいでしょうが、一定期間ごと(例えば1か月ごと)に集計して請求する旨を定めている場合も多いようです。そんな場合には、その集計した数量に単価を乗じた金額(消費税が付く場合はそれも付加)した金額を債務として確定した金額と考えるべきです。

 このような単価契約では、一定期間ごとに計算した金額をどのように端数処理すべきか、契約書で定めておくことが多いと思います。私は、そのようにしていました。

 「端数計算法の誤った適用3」 に進む。

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 日産のカルロス・ゴーン会長の突然の逮捕劇は、世界中を驚かせました。有価証券報告書への巨額の虚偽記載が直接の逮捕容疑ですが、加えて、自身や家族の住まいなどへの私的流用もあったようです。さらに、フランス政府がルノーと日産の不可逆的な経営統合(日産の完全子会社化)を画策し、当初はスルーしていたゴーン会長も、大株主であるフランス政府の要求に応ずることに転じ、日産の経営陣が反発してクーデターを起こしたという観測も流れています。

 

金の卵を産む鶏を殺そうとしたフランス政府?

 このクーデター説を聞いて、私はイソップの寓話「金の卵を産むニワトリ」を思い浮かべました。ある男が、毎日1個ずつ金の卵を産むニワトリを飼っていたが、もっとお金が欲しくなり、ニワトリの腹の中には金の塊が入っているに違いないと考え、腹を裂いたが、金はなく、ニワトリは死んでしまったという、あのお話です。

 クーデター説の真否はともかく、フランス政府がフランス国内の雇用改善等のためにルノーと日産の経営統合(ルノーによる日産の完全子会社化)を画策し、ゴーン氏もその方向をほのめかす言動をしていたことは事実のようです。日産の経営陣、大多数の社員には、受け入れがたい話でしょう。

 仮に、経営統合が強引に進められ、日産の子会社化が成功していたとしても、社員のモチベーションが劇落ちした日産が従来と同程度の業績を続けられるとは思えません。日本国内の販売も激減するでしょう。

 フランス政府の目論見は、金の卵を産むニワトリを殺そうとするものだったと思います。

 

欲はほどほどに

 ゴーン氏による多額の私的流用、横領などが事実だとすれば、仮に経営統合計画に対する日産経営陣の反発があったとしても、クーデターと呼ぶべきではありません。企業のガバナンスが正常であれば、ゴーン氏は排除されて当然であり、今回の騒動、内部告発は、日産の自浄作用が機能したというべきでしょう。

 

 この事件をきっかけに、フランス政府の日産子会社化の思惑がクローズアップされてしまいました。こうなっては、いくら4割を超える株式を保有していても、目論見通りにはいかないでしょう。

 フランス政府は、連携によるメリットや日産から得られる巨額の配当金で満足せず、さらなる利益を狙って、企業連合の存続自体を危うくしてしまいました。ゴーン氏も、巨額の報酬に加えてさらに不当な利得を得ようとして、地位や名声を失ってしまいつつあります。

 ゴーン氏、フランス政府とも、強欲すぎて失敗してしまいました。イソップの教訓は現在も生きているようです。

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 北方領土問題を解決して日ロ平和条約を締結する、これは、日本にとって長年の悲願ですが、私は、日米安保条約の密約でアメリカが日本国内のどこにでも基地を設け、軍事行動ができる権限を持っている限り、不可能なことだと思っていました。しかし、アメリカが、返還された北方領土には基地を展開しないことで密約の内容の変更に応じてくれれば、可能になるかもしれません。他にも難しい問題もあり、困難な途だとは思いますが、安倍政権はそれに挑戦する覚悟のようですので、応援したいと思います。

 

日米密約の問題

 基地権(米軍が日本国内のどこにでも基地を設けて軍事行動ができる権限)や指揮権(有事の際には自衛隊が米軍の指揮下に入る)の問題は、公然の秘密のような扱いでしたが、北方領土問題の報道を通じて、白日の下にさらされました。他国にこのような権限を与えている国家は、主権国家とは言えません。日本が未だ完全に主権を回復したとは言えない状態にあることを疑う人は、今はいないでしょう。

 北方領土関係で例外を作ることは、完全な主権回復の第一歩にもなります。主権回復の機運が高まることを期待します。

 

シベリア抑留などの賠償請求権は?

 朝鮮人慰安婦、徴用工の問題が生ずるまでは、国家間で協定が成立すれば、個々の国民の戦争被害などの賠償は自国政府にのみ求めることができるというのが、日本人の常識だったように思います。原爆被害の賠償をアメリカ合衆国に求めたり、シベリア抑留の賠償をソ連、ロシアに求めたりしようと考える人は、ほとんどいなかったと思います。

 昨今の韓国の動きで、その常識が揺らいでいます。特に、ロシアとの関係では、日本がロシアに賠償すべきものは見当たらず、ロシアに請求すべきものは膨大な気がします。

 平和交渉には、その問題も片付けなければならないでしょうが、日ロ両国民が納得するような答えは見つかるのでしょうか?領土返還と絡めるのでしょうか?

 

 ロシアと平和的な関係を築くことは、中国への対応という面でも重要です。日頃は安倍政権を応援していませんが、この問題については応援しています。ただ、くれぐれも経済協力をさせられただけという結果にならないよう、注意していただきたいと思います。

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 就任当初から、過去からの失言の多さと担当分野の知識の不足を危ぶまれていた桜田氏ですが、やはり答弁間違いを繰り返し、失笑を買っています。さらに、サイバーセキュリティ―担当大臣でもありながら、パソコンを自分で使わないことが明らかになり、海外からも驚かれる始末です。日本の大臣は誰でも務まるという不都合な真実を世界中に明らかにしてしまいました。

 

日本の組織の特性

 一般に組織の長は、あまり細かくない方が喜ばれるでしょう。細かくなくても、大事なことは自分できちんと判断する能力がある人なら問題ないのでしょうが、日本では「神輿は軽い方が担ぎやすい。」などと、無能な方が歓迎されたりもします。しかし、こんなことは、日本でしか通用しないことかもしれません。

 地方公務員も、平の職員の時は5年ほど同じ仕事を続けたりもしますが、役付けになると、2年ほどで頻繁に異動します。就任当初は、その分野の素人であることもしばしばです。しかし、それは、将来の幹部を選別し、育てるためのシステムなのでしょう。

 どこに配属されても短期間に仕事をマスターする人に幅広い経験をさせようとするものです。

 しかし、大臣にはこの方式は止めていただきたいものです。政務官、副大臣時代に資質の不足が明らかになった人は、大臣にしてはいけないでしょう。また、パソコンを使えない人にサイバーセキュリティー対策についてレクチャーし、理解させなければならない羽目になった官僚の皆さんが、気の毒です。(少々滑稽でもありますが・・・。)

 

桜田大臣による危険性

 あの方は、衆議院の内閣委員会で資質、適性を問われたのに対し、私は「判断力は抜群だ。」と反論し、また嘲笑気味に報道されています。こんな答弁をすることだけを取り上げても、判断力が優れているとは思えません。判断力に優れていれば、過去の数々の失言はなかったでしょう。

 私が心配なのは、あの大臣のせいで日本の政府のシステムなどがハッカーの標的になってしまうのではないかということです。

 

 自分の個人事務所のセキュリティーにも自信を誇示したとのことですが、危険なことでしょう。あの方の事務所のシステムに侵入しても面白いものはなさそうですが、面白半分に侵入しようとするハッカーも現れるかもしれません。

 同様に、日本の五輪担当のシステムなどに侵入して嘲笑してやろうとするハッカーも現れるかもしれません。

 あの大臣の存在が、そんな余計なリスクを招き寄せてしまった可能性もあり、政権の任命責任が問われます。

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 本書では、20人の専門家が各テーマについて論じています。月刊誌『諸君』20037月号に掲載された特集に加筆訂正したものです。したがって、執筆者に保守系の専門家が多く、また最近の状況が反映されていませんが、それでも、私にとって新たな知識がたくさんあり、興味深く楽しむことができました。

 

 取り上げられているテーマは、慰安婦南京大虐殺朝鮮人の強制連行東京裁判などです。

 

 「憲法改正はなぜ実現しなかったのか」というテーマは、百地章氏の執筆です。この方は、憲法改正推進の立場のようで、私とは最終的には意見が異なりますが、賛同できる部分、興味深い部分がありました。

 日本と同じ敗戦国のドイツは、1956年に早くも憲法を改正して国防軍を設置しているほか、1968年にはアメリカ、イギリス、フランスからの完全な独立を達成するために国家緊急権規定を盛り込むなどの大改正をしているとのことです。

 私も、自民党が現在狙っているのがアメリカからの完全な独立を果たすための憲法改正であれば賛成するかもしれないのですが、そうではなく、アメリカによる日本国内での自由な基地使用、有事の際の指揮権を温存したままの小手先の改正なので、やらない方がいいと考えているのです。

 

 「日本のマスコミは戦争責任をどう果たしたのか」というテーマでは、敗戦後の各新聞社内部での戦争をあおった責任を追及する動き、GHQによる報道規制への対応などを解説しています。GHQが、日本に二度と戦争を起こそうなどと気を起こさせないためと、占領施策や米軍の暴行などへの日本人の不満をそらすために「ウォー・ギルト・インフォメーション」(戦争の罪広報計画)を遂行したこと、そこで日本人が戦争の責任を骨身に染みるように日本軍の残虐行為を殊更に宣伝しようとしたこと、それに日本の一部勢力が迎合・便乗したことなどの説明は、説得力があります。新聞社などもGHQに忠誠を示すかのように、日本軍の悪事を書き立てたようです。「あれほど悪いことをしたのだから、原爆を落とされたのも無差別爆撃を受けたのも仕方のないこと」と思わせたかったのでしょう。GHQによって遂行されたこの施策が、慰安婦、南京大虐殺など、日本を実際以上に悪者に仕立てた虚説をはびこらせ、現在に至るまで尾を引いているのだと思います。この施策が、本書で論じられている他の争点にも影響を与えているのでしょう。

 

 「歴史教科書ではなぜ被害者数がインフレになるのか」というテーマは、編者自身の執筆です。ここでは、外国や国内の一部勢力の思惑で、根拠のない数字がどんどん詰みあがっていく様子が示されています。

 

 左派系の論客のものも読みますが、やはり秦郁彦氏らのものの方が実証的で、説得力があります。「日本人の常識」として、読んでよかったと思える本でした。

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