地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2019年04月

 2018年版にはあった「北方四島は日本に帰属する」という表現が、2019年版の外交青書からは消えたという報道が、4月23日にありました。

 識者からの批判も多いようです。ロシアとの交渉を進めるためにロシアを刺激したくない思惑は理解できますが、安倍総理が少々前のめりになっているのではないかと心配になります。

 今年の2月、北方領土の日の大会アピールなどで「不法占拠」という言葉を使わなかったときもいろいろ批判されていましたが、そのときは私は政府を支持していました。国際法上は必ずしも不法占拠ではなく、あれを不法占拠といった場合、他の連合国の支持も得られないと考えたためです。

 「北方領土は「不法占拠」されたという必要はない」 参照

 

 しかし、今回の対応には疑問です。日本が、北方四島に対する主権の主張を取り下げたと解釈する口実を与えかねません。日本の主権を支持してくれている国々もがっかりするでしょう。

 相手に配慮、譲歩しているばかりで、今のところ得られたものは皆無です。このままでは、これまでの譲歩は、失策になってしまいます。

 

 話は変わりますが、今日から10連休です。私は幸い休めますが、地方公務員といえども窓口の職員、保育所等の職員など、この間に出勤しなければならない人もかなりおられ、少々後ろめたい気持ちもします。

 妻に誘われて明日からしばらく手ごろな国内ツアーに参加します。3年前、県を定年退職したときは、その翌日から再就職したので旅行などはできませんでした。今回はちょうどいい機会です。その後、子供も我が家に帰省してくれるので、連休をのんびり楽しもうと思います。

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 NGT48騒動で、グループ運営会社であるAKSが次々に非常識な対応をし、混乱が収まるどころか火に油を注いだ状態になっています。危機管理の問題として、これほど拙劣な対応はあまり見たことがありません。

 「理解の苦しむNGT運営側の対応」

 

真相をうやむやにしたまま「再出発」?

 3月22日のAKSによる記者会見(第三者委員会の調査結果の説明など)が大混乱に終わった後、411日に現在の2チームを解散し一本化して再スタートすると発表しました。その段階で、事件の真相究明もされていない状態で、組織をいじって「再スタート」を宣言することは、結局うやむやにしようとする意図が見え見えで、世論のさらなる反発を招きました。

 そこへ今回の山口さんの「卒業」報告です。まさに、内部告発をした社員を会社にいられなくするブラック企業の手口です。

 一連のAKSの対応は、冷静な判断の結果とは到底思えず、ヒステリーを起こしているような感情的なものです。まともな経営陣、管理者はいないのでしょうか?

 

新潟県や新潟市の対応

 県も市も、広報に関する契約更新を保留しているとのことです。県は、今週末(4月26日)までに結論を出すと言っているとの報道です。

 新潟県などにとっては、NGT48は大切な地域資源でしょう。地域振興への貢献を大いに期待していたに違いありません。

 しかし、それでも、常識的に考えれば、契約更新という判断はできないでしょう。民間のアパレル会社ですら、メンバーのCM起用でバッシングを受け、撤回を余儀なくされているときに、県、市といった公共的な団体が使えるはずがありません。この状態で契約更新の判断をすることは、AKSのブラック対応を承認、助長することになってしまいます。また、今のところNGTはダーティーなイメージになっていて、地域のイメージに傷がついてしまいます。

 

 芸能界には疎く、NGT、AKBなどのアイドルにもあまり興味はありませんが、世の中のブラック企業が一掃されることを願っています。

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 病院の医師が、現場でのエピソードを基に地域医療の現状と課題を述べ、あるべき姿を示唆されています。

 

著者は、沖縄県立中部病院の内科に勤務する医師です。この病院は、医療計画などでは、急性期病院救急病院と位置づけられる病院で、それに対応したスタッフが配置されています。

しかし、地域や市町村の在宅支援体制が整備されていないため、病院がその補完をやらされることが多く、医療資源の無駄遣いになることが多いようです。しばしば指摘されていることですが、治療が終了して入院を続ける必要がないのに、退院させられない患者が多いことは、せっかくの急性期病院の病床を無駄にしてしまいます。

本書には、著者が関係した様々な終末期の患者さんの生活、介護、見取りのエピソードが紹介されています。著者の指摘によれば、今のような延命治療を当然のように続けていては、団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題は乗り越えられそうもありません。また、今のように生涯未婚率が高くなっては、家庭の介護力をあてにするのは非現実的です。

地域のリソースを活用して地域(介護施設を含む。)で終末期を過ごし、穏やかな死を迎える。急性期病院は、その体制をバックアップする。そんな体制が求められます。

著者は、「人口が縮減し、地域が過疎化し、経済も縮小していくなかで、私たちが弱者を見殺しにせず、しなやかに安定感をもって下り坂を下りていけるか・・・。まさに日本人の力の見せ所・・・」と指摘しています。

私個人としても、今後、終末期をどこでどのように過ごすべきか、どこで最期を迎えるべきか、いろいろ考えさせられました。

 

 本書は、地域の医療や高齢者の問題に携わる行政その他の関係者にはぜひ一読いただきたい本です。また、同時に、自らの終末期、死に方について考えてみようとする人たちにも、とても参考になる本だと思います。

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 20204月から施行される地方公務員法等の改正で、臨時・非常勤職員のあり方が大きく変わります。

 一般職の非常勤職員などは、そのまま「会計年度任用職員」に移行するケースが多いでしょうが、問題は、特別職の「嘱託」という身分の人たちです。そもそも、今回の改正の主なターゲットの一つがこの人たちです。総務省が公表している「法律案の概要」でも真っ先にこう宣言しています。

『通常の事務職員等であっても、「特別職」(臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、 嘱託員等)として任用され、その結果、一般職であれば課される守秘義務などの 服務規律等が課されない者が存在していることから、法律上、特別職の範囲を、 制度が本来想定する「専門的な知識経験等に基づき、助言、調査等を行う者」に 厳格化する。』

 

改正法の内容

 従来の地方公務員法第3条第3項第3は、次のとおりです。

三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職

 

 改正法では、この末尾にかっこ書きで、

(専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であつて、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うものに限る。)

と加えられ、範囲が限定されました。

 

従来の「嘱託職員」はどうなる?

 知識経験等に基づき、助言、調査、診断等をやっていた人たちは、そのまま嘱託として残る場合が多いでしょう。

 定年退職者などを再任用職員としてではなく、嘱託員として雇用し、一般的な担当者としての業務をさせていた場合などは、会計年度任用職員とする場合もありそうです。

 一定の識見を持つ退職者などを、図書館長、公民館長など、一般職の管理職的な業務に就けていた場合などは、判断に迷うところです。助言などではなく、管理職としての決裁までやる職員は、嘱託職員としての存続は無理でしょう。行っているのが補助的な業務ではなく、本格的な業務なので、会計年度任用職員も不適です。一般職の任期付職員への移行を検討している団体が多いようです。

 自治会長、町内会長などは、従来、「嘱託」とされていたケースも多かったようですが、嘱託職員への任命ではなく、委託契約への切り替えを検討している団体が多いようです。

 

 改正法の施行まで、1年を切りました。できれば9月議会くらいには必要な条例改正をしたいので、検討が急がれます。

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 4月1日午前0時から役務の提供を受ける契約は、その前日、つまり前年度の3月31日までに締結しておかなければならないことは当然です。

 長期継続契約の制度は、事業年度開始前(歳出予算の発効前)の契約も容認する制度なので、3月中に契約しても何の問題もないわけですが、これを問題にする人がいます。

 

無理な41日付け契約の違法性

長期継続契約まで前年度中の締約締結をためらう人たちの一部は、入札等の準備行為を3月中に行い、契約締結だけ4月1日付で行います。4月1日が、土曜、日曜であろうと、実際は4月3日に契約書を作成しようと、日付だけ4月1日にするのです。

このやり方は、予定価格の決定、入札公告といった支出負担行為を前年度中にやってしまっているので、契約締結だけ4月1日にしようと、3月中に契約したのと同じことで、意味がありません。

また、契約を締結するまでのわずかな期間ですが、未契約のまま業者から役務の提供を受けることになります。こういうことは、癒着につながります。

 

契約時期を動かす手法

 契約期間を4月から翌年3月まででなく、例えば、10月1日から翌年9月末日までに動かす自治体もあります。この場合は、当然、契約期間が始まる前の9月末までには契約締結を済ませているはずなので、問題はありません。

 我が自治体も、このようにしている契約はたくさんありますが、目的は繁忙期を避けることなどです。事業年度開始前の契約締結を避けるためではありません。

 

4月からの契約と10月からの契約の比較

 当年4月1日から翌年3月末日までの契約を当年3月中に締結することと、当年101日から翌年9月末日までの契約を当年9月中に締結することを比較してみます。

 自治法、自治令のどの条文を見ても、前者が違法で後者が適法だと解釈できるような部分はありません。また、歳出予算は、支出の上限を決めるだけで個々の契約の可否を判断するものではないので、後者だけが締約締結年度の歳出予算の範囲内だということもできません。

 そもそも、このような議論は、予算単年度主義をどこまで尊重するかということが基本です。予算単年度主義、支出負担行為は年度内に完結させるという原則に対し、前者はわずかな逸脱であるのに対し、後者は大幅な逸脱です。

 長期継続契約は、予算単年度主義の例外を認める制度ですが、例外を認めるのに際して、大幅な逸脱だけ認めるがわずかな逸脱は認めないなどという制度は、ありえません。

 また、制度を作った旧自治省もそんなことは考えていなかったはずです。そんな考えであれば、地方自治体に契約期間のスライドを指導した(当時は「助言」でなく「指導」でもよかった。)はずですが、そんな形跡はありません。今でも、どこの自治体も、土地を長期に借りる契約(昭和38年改正から長期継続契約)は41日からになっているのが多い状況です。

 後者のみを適法と認め、前者を違法とすることに、公益上の意味は何ら見出すことができず、無意味です。そんな制度を作るはずがありません。法令の解釈、運用は、公益上の目的に沿ったものでなければなりません。

 

 我が自治体は、今後も、長期継続契約については、4月1日から役務の提供を受けるものは3月中に正しく締結します。

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