地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2019年05月

 430日の退位礼正殿の儀での国民代表の辞で、安倍総理が「天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『い』ません」と述べたと指摘されている件について、官邸が、5月24日のツイッターで反論しました。

 少し長くなりますが、要約せずに全文を引用します。

 

1)一部の報道に、4月30日に挙行された「退位礼正殿の儀」での国民代表の辞の最後の部分を、安倍総理が「・・(前略)・・。天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『い』ません」と述べた、との記事があります。

2)国民代表の辞は、同日の閣議で決定されたものであり、安倍総理はそれに従って述べています。

3)閣議決定された国民代表の辞の当該部分は、「・・(前略)・・。天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『や』みません」とひらがなです。

4)これらの報道にある漢字の読み間違いなどは、ありません。  

 

官僚らしい巧みな文章

 この文章は、嘘を書かずに、読む人に事実でないことを伝えようとするもので、官僚らしい非常に巧みな文章です。あるいは、上からの指示と公務員として嘘は書けないというギリギリの良心のせめぎあいと言っていいと思います。

 まず、大前提として、安倍総理は「願っていません。」と言っているのは、録画を観れば分かるとおり、動かしがたい事実です。滑舌の問題などではありません。

 この文章で、言っているのは、次の3点です。

⓵あの国民代表の辞は、閣議決定されたものであること。

⓶閣議決定された文章では、問題の部分は「願ってやみません」とひらがなで書かれていたこと。

⓷だから、漢字の読み間違いなどではないこと。

 

 この3つは、いずれも事実だと思います。官僚は、そんな嘘は書かないはずです。

 また、この文章の中では、「願っていません」とは言わなかったとか、「願ってやみません」と言ったとかは、一切書かれていません。そんなことを書くと、虚偽になってしまうからでしょう。

 さらに、「漢字の読み間違いではない」と言っているだけで、「読み間違いではない」とも言っていません。

 嘘を書かずに国民に誤ったメッセージを伝える高等テクニックというか、好意的に捉えればギリギリの良心なのでしょう

 

真相は?

 「願っていません」と言ったことが事実で、漢字の読み間違いでもないとすると、なぜあんな読み方をしたのでしょうか?

 いろいろ確執が噂された上皇陛下に対する呪詛?

 ひらがなが読めなかった?

 この二つは、さすがに考えにくいでしょう。

 私は、総理が、「願ってやみません」というような言い回しを知らなかったのだと思います。録画を観ると、「願って」のところで一度つっかえて、「あらせられますことを」まで戻って読み直した挙句、「願っていません」と間違えています。

 

 この状況や総理の国語能力から判断すると、「願ってやみません」という言い回しを知らなかったというのが真相ではないでしょうか?

 

 関連「退位礼正殿の儀での安倍首相の誤読」

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 アメリカのトランプ大統領が来日中の5月26日に、ツイッターで日本との貿易交渉で、すばらしい進展がある。農業、牛肉は特にそうだ。多く(の成果)は日本の7月の選挙後になる。」と投稿しました。4月ころは、トランプ大統領は、貿易交渉を急いでおり、5月の日本訪問の前にも決着させる勢いでしたが・・・。

 さらに、翌日、首脳会談の冒頭で記者団に「8月に、いい内容を発表できる。」と発言し、前日のツイートが本当であることを裏付けています。

 安倍首相とトランプ大統領の間で、貿易交渉の決着を参議院選挙後に引き延ばす代わりに大幅に譲歩するという密約があったという暴露報道は以前からありましたが、トランプ氏が自らばらしてしまいました。このことに対して、安倍首相側は、特に反論、弁明等はしていないようです。ここまでばらされたら否定しようがない、または否定するとトランプの不興を買う恐れがある、といったところでしょうか?

 

事実でないなら否定せよ!

 そのような密約は、これまでの経緯から、あったと考える国民が多いでしょう。私もあったと思います。

 もしそうでないなら、安倍官邸は否定し、抗議しなければなりません。否定しなければ、米国側は決着を参議院選挙後に延ばすことを日本側への「貸し」と考えるでしょう。不当に譲歩を迫られることになります。

 また、このような密約を結んだとすれば、党利党略のために国益を害したということです。そんな汚名を晴らさないで、いいのですか?

 もしこの密約が事実で、秘密が保たれたまま参議院選挙を終えれば、たしかに安倍政権にとっては「借り」だったでしょう。しかし、こんな形で暴露されてしまえば、安倍政権にとってはメリットは消え、迷惑な話でしよう。トランプが暴露したことによって、逆に安倍政権側の「貸し」になったはずです。それをトランプに理解させなければなりません。

 

 こんな身もふたもないことをばらすということは、よほど日本人を舐めているようです。こんなことをばらされて、それでも7月の選挙で自民党が勝利し、アメリカ側に有利な妥結内容が8月に発表され、両首脳の思惑通りに事が運ぶのでしょうか?

 それは、日本の有権者にとって、恥ずかしいことだと思います。

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 現在、中核市は、児童相談所を設置できることになっていますが、設置義務はありません。そのため、児童相談所を設置している中核市は少数で、多くは都道府県の児童相談所が業務を行っています。

 平成301227日、社会保障審議会の児童部会社会的養育専門委員会から、「市町村・都道府県における子ども家庭相談支援体制の強化等に向けたワーキンググループとりまとめ」が公表されました。その中で、中核市における児童相談所の設置義務化も含めた法令上の措置の検討等の必要性が示されています。

 この設置義務化には賛否両論があり、中核市市長会も「義務化より、財源や人材育成の支援を先行せよ」と反発しています。

 私も、中核市への設置義務化には反対です。

 

都道府県の相談所と競合させる必要はない

 中核市市長会も主張しているように、中核市といっても各市の状況は異なります。都道府県が設置する児童相談所が市内に所在するときに、わざわざ市独自の相談所を作る必要はありません。

 もし、都道府県の相談所がきめ細かい対応ができていないようならば、それができるように拡充することを求めたほうがいいでしょう。

 

周辺地域はどうなる?

 中核市が独自の相談所を設置した場合、都道府県の相談所は、中核市に中抜きにされた周辺地域だけを担当することになります。その周辺地域が分散している場合、都道府県の相談所も中核市に置き続けなければならないかもしれません。多くの場合、中核市が、各周辺市町村にとっても最も便がいいからです。中核市にある都道府県の相談所は、原則として中核市の住民の対応ができないのが原則です。

 

 周辺地域も管轄する都道府県の相談所を中核市内に一つ設置し、その機能を充実させる方が効率的効果的なことは明らかではないでしょうか?

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 総務省では毎年、「勤務時間・休暇等に関する調査」を行い、結果を公表しています。

 この調査の中には、各団体の年次有給休暇の取得状況があります。

 平成29年に全地方公共団体の職員が取得した年次有給休暇は、平均で11.5でした。団体区分別では、都道府県が12.1日、政令指定都市が13.8日、一般市町村が10.7日です。政令指定都市が最も多く、一般市町村が最も少ないという結果です。

 これをどのように解釈すればいいのか、意見が分かれるところでしょう。政令指定都市が一般に最も人員にゆとりがあるので年休が取りやすい?政令指定都市の職員には自分の生活を大切にする職員が多い?・・・。

 民間労働者の平均は9.3(厚生労働省の統計)とのことで、一般市町村よりさらに2日も少ないようです。

 

 3年前の平成26年には、全地方公共団体の平均は10.7日、民間は8.8日でした。

 団体区分別では、都道府県が11.4日、政令指定都市が12.7日、一般市町村が10.0日でした。政令指定都市が最も多く、都道府県、一般市町村、民間という順番は変わりません。

 3年前よりは少し増えてはいますが、まだまだ半分近くを使わずに捨てているようです。

 

 年休の取得は個人差が非常に大きく、ほとんど取得しない職員も少なくありません。そういった職員が全体の平均を下げている面はあります。その点で、今年から始まった5日間の取得の義務付けは効果が期待できます。一方、5日だけ休ませればいいんだというような運用がされないか心配です。

 ちなみに、私の昨年の年休はほぼ平均値の11日と3時間でした。

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 著者は、夕張市や岩見沢などで「ささえる医療」を実践してこられた医師であり、自らも白血病に罹患して化学療法、2度の骨髄移植などを経験されています。本書は、そのような体験から感じた今の地域医療の矛盾点、持続可能な制度にするための改善策などが書かれています。

 私は、著者のことを存じ上げなかったので、ネットで検索してみたところ、交際していた女性同士が殺人未遂事件を起こすなど、私生活には問題もあったようです。また、本人もこの本の中でADHDであることを明かしていますが、その性格が次々に新しいことに手を広げる原動力にもなっていたのかもしれません。また、本書の「おわりに」は、2017320日の日付ですが、同年5月に白血病で死去されています。

 したがって、本書は、著者の遺言のような性格です。著者は、私生活などには問題があったものの、地域医療に残した功績は大きく、その情熱は本物であったと思います。私も大いに共感しました。

 

 本書は、三つの章で構成され、第1章「高齢者医療がおかしい」は自身の白血病闘病生活の記録とそこから見えてきた医療、特に高齢者医療の問題点です。

 第2章「夕張の「ムダ」を変える」では、財政破綻していったん閉鎖された市立総合病院の経営を公設民営の19床の診療所として引き受け、予防医療を中心に地域医療に取り組み、挫折した記録です。既得権益を守りたい人たちの壁を崩せなかったと述べられています。

 3章「新しい地域医療のかたち」では、著者が実践してきた医療の姿を中心に、今後の地域医療について提言されています。地域では、治療重視の医療からケア中心の「ささえる医療」「医師は死を必然と認めて天寿を全うさせるサービス職」のような形に転換すべきとの主張です。そのためには、医療はコミュニティーと一緒にやらなければならないとの主張は、説得力があります。

 

 著者が最も熱心に主張されていることの一つは、専門的な医療は都市部に集中して、地方では予防やケアを中心に地域コミュニティーと連携して提供していく「ささえる」医療です。これには、多くの人が賛成だと思います。また、現在厚生労働省が進めようとしている医療の改革に通じるものがあります。

 イギリスでは、寿命を1年以上伸ばす効果があり、経費が年間400万円以下の薬に保険を適用するという基準があるとのことです。著者は、日本にも線引きが必要だとの主張ですが、これには反対する人も多そうです。しかし、国民皆保険を破綻させないためには、そのようなことも考える必要があると思います。

 

 子や孫に理不尽な負担を負わせないため、高齢者の医療を考え直すべきであると思います。私も高齢者(65歳以上)間近ですが、それを受け入れます。

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