地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2019年08月

 債務負担行為と長期継続契約は、いずれも、複数年にわたる契約や、新年度開始早々に役務の提供を受ける必要がある契約などに使われる制度ですが、手続や効果に違いがあり、うまく使い分ける必要があります。

 

債務負担行為と長期継続契約の違い

 債務負担行為は、あらかじめ契約等をする年度の予算の中で議決しておく必要があります。それほど手間のかかる書類ではありませんが、議会にかけるという面倒くささがあり、議会担当部局が嫌がることもあるかもしれません。

 長期継続契約は、一度条例(条例の委任を受けた規則も可)で契約の種類を指定しておけば、契約の都度議会に諮る必要はなく、便利です。しかし、自治法第234条の3で、「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない」とされているので、契約書に「予算が否決、減額された場合には契約の取消し又は見直しをする」旨の条項を盛り込むことが一般的です。相手方が、こんな勝手な条件を嫌がるかもしれません。

 相手方がどうしても嫌がれば、債務負担行為を設定してそのような条項を設けずに契約を締結しなければなりません。

参 考

自治法第214条(債務負担行為) 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

自治法第234条の3(長期継続契約) 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

 

様々な工夫

 庁舎の清掃等の維持管理は、ほとんどの自治体が外部に委託しています。新年度の4月から翌年の3月末までの1年間を委託期間とする場合、新規に落札した業者が履行の準備を整える時間等を考慮すると、2月中には入札を済ませるべきでしょう。3月の中旬以降に入札したのでは、現行の業者ばかりが有利な不適正な入札にならざるを得ません。

その場合、入札条件の中に「必要な予算が議決されなかった場合は契約しない」「契約締結は3月〇日(翌年度当初予算の議決予定日以降の日)から3月末日までに行う」旨を加えておきます。そうすれば、契約の時点では翌年度予算は議決されているので、契約書自体には「予算が否決、減額された場合には契約の取消し又は見直しをする」旨の条項など必ずしも盛り込む必要はないはずです。
 翌々年度までの支出を伴う契約はこの手法は使えませんが、41日から翌331日までを役務提供期間とする一般的な契約は、大丈夫です。そのような工夫をしている自治体もあります。

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横浜市の林市長が、定例会見で、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)を誘致すると表明しました。候補地は山下ふ頭で、「日本型IR成功のモデルになりたい。」と語っているとのことです。

 

なぜこんなことを?

地域が消滅することを危ぶまれている過疎地や離島の自治体が起死回生の策として取り組むなら理解できないこともありません。大都市である横浜が、こんなことを言い出したことに驚いています。

市民の多くも反対しているようです。当然でしょう。しかも、市長は、選挙の際はこの計画に慎重な立場を示して当選しています。ここで手のひらを返したことにより、裏切り者、嘘つきという非難を浴びざるを得ません。市長が、自らの政治生命を危険にさらすようなことをなぜ言い出したのか、どういうメリットがあるのか、理解できません。

横浜は、良いイメージを持たれている都市だと思います。カジノができたりしたのでは、今までのイメージが台無しです。

たしかに、カジノができれば訪問客も増え、経済効果もあるでしょう。しかし、カジノなどは他の都市もすぐにまねができるものです。横浜市のように昔から積み上げられた独自の魅力のある地域は、それを生かした振興策があるでしょう。

カジノなどは、横浜市の都市としての格を下げてしまいます。

 

 反対運動を始められた市民の皆様を応援し、今後も注視したいと思います。

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 韓国は、大統領府が国防省などの反対を押し切ってGSOMIAの破棄を決めました。前から韓国側の対抗措置の候補には挙がっていたものの、まさかそんな自爆のようなことはしないだろうと思っていましたが、予想外です。

 『自爆型の韓国の「対抗措置」』

 

 よほど対抗措置のタマがないのかと思いましたが、そればかりではないようです。

 韓国の大統領府高官の話では、文大統領が日本統治からの解放を記念する「光復節」式典で行った演説についても、「高位級の人物が日本を訪問し、発表前に内容を知らせたのに、日本側は何の反応も見せず、感謝の言葉もなかった。」「日本の対応は単純な拒否を超え、我々の国家的な自尊心まで傷つけるほど無視を続け、外交的な礼儀を欠いた。」

などが動機になったようです。ここまで来ると、滑稽です。

 挙句の果てに、GSOMIAの破棄について事前に米国の理解を得ていたなどと直ぐにばれる嘘をついて、米国をさらに怒らせる始末です。正常な思考が働いていないようです。

 

まるでガキだ!

 こういう反応は、甘やかされて育った子供にしばしば見られます。ちょっと構ってやらないとすぐスネて、わざとバカなことをやらかします。成人でも、劣等感の強いタイプなどに時々います。無意味に高いプライドは、劣等感の裏返しであることが多いものです。

 徴用工の問題で、国家ぐるみの詐欺行為を働きながらそれを是正もせず、「話し合いたい」などと言われても、日本政府としてもいちいち相手にできないことは当然です。様々な問題がある中で、韓国などの相手ばかりをしている暇はないでしょう。それをいちいちスネられたのではたまりません。

 こういうガキみたいな国と付き合うのは、本当に面倒くさくて、うんざりします。

 

日本人観光客への暴力問題

 一方、ソウルで日本人の女性観光客に対する暴力行為があったというニュースもありました。

 私は、こちらについては、あまり関心がありません。どこの国にも、こういうバカはいるものです。日本にもいるでしょう。割合的には、韓国が圧倒的に多いでしょうが。

 それよりも、今の時期に韓国へ観光などに行こうとする日本人の気が知れません。

 

早い決着のため、強力な措置を

 文政権の下では、決着は不可能な気がします。

 今までの日本側の措置は、安全保障上、貿易管理上の措置という建前です(外交は、建前が重要です。)。早く文政権に引導を渡すべく、日本政府には、名実ともに「徴用工問題への制裁措置」といえる強力な措置を発動していただきたいと思います。日本企業に「実害」は既に生じているのですから・・・。

 今後は米国と共同で「GSOMIA破棄への制裁措置」でもいいでしょう。

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 エマニュエル・トッド氏は、人口学、家族人類学などが本来の専門であり、出生率の変化などからソビエト連邦の崩壊、リーマンショックなどを予言したこと等で有名です。

 本書には、「アメリカ帝国の失墜と日本の運命」という副題が付されています。1998年から2016年に行われた朝日新聞によるトッド氏へのインタビューをまとめたものです。

 

 私は、2年前に一度読んだのですが、もう一度読み返したくなり、図書館で借りてきました。

 

 社会が近代化するためには教育の向上が必須であり、識字率が向上すると一部の人間だけが権威を独占することが困難になります。また、特に、女性の識字率の向上は出生率の低下をもたらし、それを経ずに社会が近代化することは困難です。その段階で、伝統的なシステムとの決別のため、社会的な混乱が生じ、それが、フランス革命、ロシア革命、中国の文化大革命だったというのが、トッド氏の考えです。

 中東のいくつかの国は、現在この段階にあり、それが混乱の根本的な原因であるとしています。

 

 トッド氏は、2002年に刊行した「帝国以後…アメリカ・システムの崩壊」の中で、米国発の「前代未聞の規模の証券パニック」を予言しています。「どのようにして、どの程度の早さで、ヨーロッパ、日本、その他の国の投資家たちが身ぐるみ剥がされるかは分からないが、早晩身ぐるみ剥がされるのは間違いない。」

 リーマンショックは、2008年に起こっています。

 

アメリカについて

 米国については、非常に厳しい意見です。2002年の「帝国以後…」でも、「米国はもはや解決ではなく問題をもたらす。」と指摘していましたが、本書でも「米国の腐りきった金融業界は、世界中に何の価値もない証券を売りまくった。人類史上これに匹敵するひどい詐欺があっただろうか。」と述べています。

 また、45歳から54歳までの米国の白人の死亡率が1999年から上昇していること、収入の中央値が下がっていることなど、米国社会の混乱、衰退を指摘しています。

 

 その他、行き過ぎたグローバリズムが社会を混乱に陥れている例が、数多く指摘されています。「ユーロは憎しみの製造機」という指摘もあります。

 イラン問題などトランプ大統領の起こす騒動や傍若無人な海洋進出を続ける中国の問題など、現在の問題を考えるうえで、大変参考になる本です。

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 前稿では、政策の失敗による医師の不足から、日本で地域の医療崩壊が迫っていることについて書きました。本稿では、現在、政府が講じようとしている施策について思うところを書きます。

 前稿「医療崩壊に政府はどう対処? 医師などの不足」

 

 20194月、厚生労働省は、公立病院や公的病院(日本赤十字、済生会、厚生連)の統合、再編を促進することを決め、公表しました。民間と競合している病院や診療実績が低迷している病院などを「再編統合が必要な病院」と位置づけ、重点地域を今夏中に十数か所指定し、都道府県に実行を迫る予定のようです。だから、8月中には、再編すべき地域が公表されるのでしょう。

 報道では、「過剰になっている病床を減らして医療費の膨張を抑える狙い」が強調されていました。

 

再編は人材の最適活用からも必要

 医療費の膨張も抑えたほうがいいかもしれませんが、そもそも日本の医療費は、諸外国と比較して高くありません。しかし、労働力人口が減少を続ける中では、抑えなければならないのでしょう。

 それよりも、医師をはじめとする人材、医療資源の活用という側面から、再編は必須だろうと思います。医師不足を招いたのは政策の失敗ではあるのですが、責任論を展開しても問題解決にはなりません。

 医師や看護師などの限られた医療人材を効率的に活用するには、少数の急性期病院、救急病院に人員を集中させる必要があります。それ以外の中小病院は、回復期、慢性期、在宅医療支援病院等の役割で少数の医師等で運営する、入院機能を縮減・廃止して診療所として存続する、廃止するなどを選択することになるでしょう。

 

 この秋から、国から指定された地域やそれ以外の地域でも、病院の再編、役割分担の議論が始まることでしょう。関心をもって見守っています。

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