地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2019年09月

 金融庁金融審議会の総会が925日に開催され、95歳まで生きるには公的年金だけでは夫婦で約2千万円が不足すると試算した老後資金報告書の撤回を決定したという報道がありました。報告書は「案」のまま公文書として残し、金融庁のホームページ(HP)に掲載を続けるとのことです。要は、棚上げ、廃案です。

 総会では、今後は報告書を議題としない、来春以降に別の報告書の策定を目指すが、公的年金や老後の必要な資金額には触れないことが決められたようです。

金融審に諮問した麻生太郎金融担当相が報告書の受け取りを拒否するという馬鹿げたことをし、こんな結果になってしまいました。

 

議論を封殺?

 たしかに、金融庁は年金を所管しているわけではありません。しかし、国民の貯蓄行動、投資行動の側面から、老後の生活費や年金のことに触れることは当然でしょう。特に資産家でもない我々一般庶民は、老後の生活費のために資産を蓄えているのですから。

 金融庁でこの議論を継続しないなら、厚生労働省などがこの議論を引き継ぎ、国民も議論に参加させたうえで、今後の年金制度を検討しなければなりません。このような議論を封殺してはなりません。

 

報告書案に携わった人たちに同情

 あの報告書案は、何も間違ったこと、突飛なことが書かれているわけではありません。よく読めば、理解できる内容です。説明不足で誤解されやすい部分があることは確かですが、その部分を修正すればいいことです。それをせずに、政治の思惑で棚上げにしてしまいました。

諮問を受けて審議した委員各位、報告書案の原案を作成した金融庁の職員の皆様は、プライドを傷つけられ、きっと悔しい思いでしょう。「やってられるか!」という気持ちかもしれません。同情を禁じえません。

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 926日、再編統合について議論が必要な病院として、424の公立・公的病院を厚生労働省が公表しました。公立とは、国立病院機構、都道府県立、市町村立等で、公的とは、日赤、済生会、JA厚生連、労働者健康安全機構(労災病院)などです。

我が県でもかなりの数の病院がリストに載っています。27日の朝刊を見ると、リストにあがった病院の地元の市町村長が、「高齢の住民に隣の市の病院へ通えなどと言えない。」「地域の実情を分かっていない。」「再編したばかりなのに・・・」など、反発や戸惑いの声をあげています。

私は、再編統合はやむを得ないことであり、落ち着いて地域医療を崩壊させないためにどのような体制にするかの議論が必要だと思っています。

 

再編統合は不可避

 多くの地域で中途半端な急性期病院が多すぎるのは間違いありません。再編統合して、救急患者は必ず受け入れるようなしっかりした体制の病院を作り、その他の病院は、急性期を過ぎた患者を受け入れる病院にしなければなりません。

 医療費の問題ばかりでなく、医師をはじめとする人的資源を考えても、今の体制を継続できるはずがありません。医師等は少数の急性期病院に重点的に配置し、その他の病院は少数のスタッフで急性期を過ぎた患者を受け持つ体制にしなければなりません。

 反発している市町村長も、医師の確保が困難なため、このままの体制の継続は困難であることは承知しているはずだと思います。医師の招へいに苦労している市町村もたくさんありますから・・・。住民へのポーズとして、反発して見せなければならない面もあるのではないかと思います。

 

 地方の行政としては、ここは厚生労働省を悪者にして、真剣に、持続可能な地域医療体制を考えるべきでしょう。

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 スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16)が、923日に開催された国連気候行動サミットで、温室効果ガス排出問題に真剣に取り組まず自分たちの世代を裏切ったと、世界の首脳を非難しました。首脳らは神妙に聞いていたようですが、どこまで心に響いたかは今後の取組を見なければ判断できません。

 

重要性と緊急性の罠

仕事には、重要性と緊急性のマトリクスで、①重要であり緊急性がある仕事、②重要だが緊急性がない仕事、③重要ではないが緊急性がある仕事、④重要でもなく緊急性もない仕事の4つの種類があるということが、よく言われています。

仕事の優先順位は、基本的には②③④とすべきところ、多くの人はを逆転させ、緊急ではあるが重要ではない仕事を優先させてしまう傾向にあるとのことです。なぜ緊急ではないが重要な仕事を優先させなければならないかというと、対応が遅れるとその仕事も緊急を要する事態になってしまいがちであるからです。我が身を振り返っても、否定できません。

対応しなければならない重要な課題があるのに、それに向き合うのが面倒で、日常業務に逃げてしまい、その結果、尻に火がついて慌てる人は、よく見かけます。

政治や行政に限らず、責任のある立場の人は、こういうことは許されないと思うのですが、横行しているようです。

 

日本の政治も問題先送り

 日本にとって、将来のために重要な問題は、環境問題、少子化・人口減少問題、巨大地震への備えなどです。国民は、将来の方向や対応が定まれば、多少の痛みは我慢する覚悟はあると思います。

当面の選挙のことばかり考えて、将来の重要な問題についての根本的な議論を避けようとするのは、国民を馬鹿にすることです。そんな政治にうんざりしている国民も多いと思います。

 日本は、温室効果ガスの排出が特に多い石炭火力発電を先進各国の中で唯一続けているばかりか、外国に輸出までしているようです。また、具体的な行動計画も示すことができず、世界からはアメリカのトランプ政権と同列に思われているという恥ずかしい状態です。

 

 16歳から受けた叱責を心に刻み、日本をはじめ世界の政治家は反省し、重要課題に向き合っていただきたいものです。

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 著者は、国際医療福祉大学大学院教授で、参議院厚生労働委員会調査室客員調査員や多くの政府委員会の委員を務めておられる医師です。本書には、「地域医療構想、地域包括ケアはこうなる!」という副題が付いています。

 団塊の世代の700万人がすべて後期高齢者(75歳以上)になる2025、その前後から発生を予想される様々な社会問題をいう2025年問題」という言葉が知られるようになって、かなりの年月が過ぎました。国も医療費の抑制、年金の抑制など、様々な対策を打ち出しています。年金、医療費など、これらの問題が報道されない日はほとんどないでしょう。

 

 本書は、2014年に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(いわゆる「医療介護一括法」を受けて、医療や介護が今後どのようになっていくのか、どのようにしなければいけないかを解説しています。

 その中で、地域医療構想、診療報酬改定と病床機能報告、地域包括ケアシステムなどが説明されています。

 

 私も以前には県立病院勤務、福祉部門勤務などを経験していますが、ここ数年遠ざかっていて、知識が不足しています。まだ行政に関与している者として、基礎的な知識を身につけようと思って、本書を手に取りました。

 恥ずかしいことに、私は、地域医療計画や2次医療圏と、地域医療構想や構想区域がどう違うのか、なぜ同じようなのが二つあるのか、理解していませんでした。本書の次の記述を読んで、おおむね理解できました。

「地域医療構想は『将来の医療提供体制に関する構想』であることから、構想区域は現時点での医療提供体制の確保を図る目的で設定された『2次医療圏』とは異なり、2025年へ向けて大きく変貌が予想される地域の実態を見据えた将来へ向けての区域設定となる。」

 

 本書を読んで、政府が考えている医療や介護の今後の方向性はおおむね理解できましたが、現時点(2019年)でそれがうまく進んでいるようには見えません。地域に医療崩壊が迫っている危惧が払拭できません。

 地域包括ケアがうまく進展すれば、かなりの問題は解決できるかもしれませんが、あまり進展しているような気がしません。

 病床配置の問題など、各地域(市町村等)が自地域の部分最適を目指すと、県や国全体としての全体最適からは遠ざかるのでしょう。私ごときが悩んでも仕方のない問題であることは承知していますが、心配せざるを得ません。

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 東京電力の旧経営陣3人が検察審査会の議決を経て強制的に起訴された裁判で、919日、東京地方裁判所が全員に無罪を言い渡しました。予想はしていましたが、私には納得のいかない判決です。

最大の争点は、巨大津波は予測できたのかという点です。国の地震調査研究推進本部の長期評価をもとに、東京電力が震災の3年前にシミュレーションした津波の高さは最大15.7mとのことです。ちゃんと予測できています。

東電の担当部局は、その予測結果を経営陣の「御前会議」に出し、対応しなければならないことを報告したものの、具体的な対応がされなかったようです。この状態で、なぜ判決は巨大津波の予見可能性を否定したのか、訳が分かりません。

 

経営陣のモラルは?

 原発は、万が一にも事故を起こしてはいけないものであることは、旧経営陣もさすがに承知していたはずです。そうであれば、権威ある機関の評価で事故の可能性が判明したら、即座に対応しなければならないことは当然です。あの旧経営陣の判断は、まさに心理学でいう正常性バイアス(自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと)そのものでしょう。人間の心理としては理解できますが、これを許してはいけません。

 確度の高い危険情報でなければ対応しなくても刑事責任を問われないような判決では、東電だけでなく、今後の我が国の経営者全体のモラルにも悪影響を及ぼします。

 

 東電の組織は、危険なものを管理できる体制になく、原発を運用する資格がないようです。政府も東電も、原発の再稼働などという馬鹿げたことを考えないでいただきたいものです。

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