神戸市の小学校で教諭4人が同僚にいじめをしていた問題で、神戸市は加害教員4人に年次有給休暇を取得させて休ませています。この給与支給について市民から批判され、市ではこのような場合に給与を差し止める新たな条例の制定を急いでいるとの報道がありました。
この問題は、多くの自治体も苦慮する問題で、私も悩まされたことがあります。
一般的な現行制度
刑事起訴されれば休職処分(起訴休職)にできますが、その前の段階で職場に来させない措置は、地方公務員法では想定していないのです。また、起訴休職の場合の給与について地方公務員法は何も規定しておらず、多くの自治体では、国家公務員に合わせて給与条例で「給料、扶養手当、地域手当及び住居手当のそれぞれ100分の60以内を支給することができる。」等と定めています。「できる」ですから、事情によっては支給しないこともできます。
地方公務員法
第二十七条 すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。
第28条 (第1項 略 降任、免職に関する規定)
2 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。
苦肉の策として職員に有給休暇を取得させるわけですが、職員が拒否すれば不可能です。その場合、どうしても職場に来させないようにするには、職務命令で自宅待機を命ずることになり、年次休暇も使わずに休ませて給与は全額支給しなければなりません。
神戸市の新条例に注目
従来の制度がこのようになっているのは、推定無罪の原則からでしょう。また、起訴休職とのバランスを考慮する必要があり、起訴されたときより厳しい処分は難しいと思います。
10月28日に神戸市議会で可決成立した改正条例では、「職員の分限及び懲戒に関する条例」で本人の意に反して休職させられる場合に「重大な非違行為があり、起訴されるおそれがあると認められる職員であつて、当該職員が引き続き職務に従事することにより、公務の円滑な遂行に重大な支障が生じるおそれがある場合」を加えました。あわせて、給与条例も改正し、この場合には「給料、地域手当、扶養手当及び住居手当のそれぞれ100分の60以内を支給し、又は支給しないことができる。」としました。要は、起訴休職と同列の扱いにしたものであり、バランス的にはこの辺が限界でしょう。
その時点で判明、確定している事実だけで懲戒免職に相当するなら、裁判での有罪確定等を待たずに速やかに懲戒免職処分をすればいいのでしょうが、それが困難なケースも多いでしょう。
神戸市の今回の条例は、全国に広がるかもしれません。ただし、最終的に不起訴とか無罪になる可能性もあるので、運用を慎重にしないと違法とされることもあると思います。人事担当部局が判断に迷う場面もあるでしょう。
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