地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2020年12月

20201214日に開かれた全世代型社会保障検討会議で、児童手当の改正についての方針が決定しました。夫婦どちらかの年収が1200万円以上の場合は、児童手当の特例給付を廃止するとの内容です。この内容については、既に政府与党で合意済みとのことなので、ほぼ確定なのでしょう。

しかし、この改正は、目先のことしか考えていない愚策です。

 

現在の制度と改正案

現在は、中学校卒業までの子ども1人につき原則月1万円(第1子と第2子は3歳未満、第3子以降は小学校卒業まで月15000円)が児童手当として支給されます。

ただし、所得制限があって、夫婦のどちらか高いほうの年収が960万円程度を上回る世帯には「児童手当」は支給されず、代わりに、年齢や子の数にかかわらず子ども1人につき月5000円が「特例給付」として支給されている。

今回の改正案では、202210月の支給分から、夫婦のどちらか高い方の年収が1200万円程度を上回る世帯には、この「特例給付」が廃止されます。

 

政策の優先順位を理解していない?

 現在、日本の社会で最優先すべき政策課題は、少子化の問題です。少子化を少しでも緩和させるための政策は、最優先で行わなければなりません。今回の改正案は、明らかに逆行しています。

 所得の低い人の多くは、月額15,000円くらいもらっても、子供を持とうとする気持ちには残念ながらなれません。むしろ、所得の高い人の方が、少しでもインセンティブがあれば子供を持つ気になるでしょう。少子化対策には、所得の高い人に多くの子供を持つことを奨励することが効果的であり、現実的です。でも所得の高い人だけ支援することなど不適当でしょうから、所得にかかわらず一律に支援すべきです。

年収1200万もある人は月額5000円くらい気にしないだろうと考えるのは、人間に対する理解不足です。苦労して高収入を得ている人は、敏感に反応するでしょう。

 

 高収入世帯に対して特例給付を打ち切れば、目先は多少の財源が生ずるでしょうが、この層で子を控える動きが少しでも生じれば、長期的には大損害です。

 人類を含め生物は、その時代の環境に適合する資質を持った個体が相対的に多くの子孫を設けることによって進化してきました。現在、高収入を得ている人は、現在の社会で有利な何らかの資質を持つ人たちです。その人たちが多くの子を設けることを人為的に邪魔してはいけません。

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ある事件

 一般職の地方公務員に対し、警察、検察は非常に厳格に法を執行します。

 私が仕事で少しかかわった事件では、数回にわたり、総額で10数万円の接待を受けたとして某役所の課長Aが逮捕され、執行猶予付きではあるものの懲役刑になりました。所属の役所では、起訴された段階でAを懲戒免職処分にし、退職金は支払われませんでした。

 Aは、贈賄側のIT系のベンチャー企業の社長Bと親しくしており、飲食を共にしておごったりおごられたりする中で、10数万円の接待ということになったようです。Aは、役所内にIT関係に精通している職員がいない中で、業務上の課題をしばしばBに相談し、Bも親身に相談に応じ、有益な解決策(システムなど)を提案していました。

 次第にAは、役所内でIT関係では一目置かれる存在になり、他の部署からも頼りにされました。事件の対象になったシステム発注も、Aが所管する部署の発注ではなく、関連部署の発注でしたが、Aの発言力、影響力が大きかったため、「職務権限」が認定されてしまいました。

 私は、Aの行動には非難されるべき点があるものの、こんなのは「職務権限」とは言えず、Aは無罪ではないかと今でも思っています。裁判もすべて傍聴しましたが、弁護士は執行猶予を得ることに集中する素振りで、職務権限について触れることもせず、裁判官も深入りを避け、出来レースのような印象でした。

 

政治家の場合は・・・

 安倍前首相は、加計学園の理事長と飲食やゴルフで「おごったりおごられたり」の関係だったことを認めていますが、一般職の公務員なら逮捕されていたかもしれません。職務権限も、Aのケースよりはずっと明確です。少なくとも、懲戒免職にはなっていたでしょう。

 桜を見る会前夜祭の会計処理についても、当事者が口裏を合わせてしまえば崩すことは難しいのは理解できますが、たった1回の任意の事情聴取だけで済ますのでしょうか?

 今度は、吉川元農相です。養鶏業者から農水省の権限に属することに関して要請を受けていたこと、500万円を受け取っていたことについて、かなり濃厚な疑惑があるようです。病院に逃げ込んだようですが、検察もようやく強制捜査に踏み切ったので、きちんと刑事裁判で真相を明らかにしていただきたいものです。

 これまでは、政治家に対して甘すぎたような印象があります。

 

 「官邸の守護神」と言われた黒川氏の去った今、検察の姿勢に国民が注目しています。

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 首相在任中に、桜を見る会前夜祭に関して国会で虚偽答弁を繰り返したことについて、1225日、安倍前総理本人が衆参両院の議会運営委員会で説明し、謝罪しました。

 しかし、その内容は、要約すると「秘書がやったことで自分は知らなかったが、道義的責任は感じている。国会議員は辞職しない。」ということだけで、到底国民の疑念を晴らせるようなものではありません。その挙句、終了後、記者団に対し、「説明責任を果たせた。」と語ったとのことで、「国民を舐めるのもいい加減にしろ!」と言いたくなります。大方の予想通りの展開でした。

 

明細書はホテルの営業上の秘密?

 安倍氏側が負担したのが会場費だけであれば、今の制度では政治資金での支出が認められていますが、飲食費が含まれていれば、買収・饗応になりそうです。野党側がホテルが発行した明細書の提出を求めたのに対し、安倍氏は「ホテルの営業上の秘密」を理由に拒否しました。これには違和感を覚えます。

 私も何度も懇親会の幹事を務めたことがあり、会場側から請求書と明細書を受け取っていますが、会場側から「営業上の秘密だから外部に出さないでください。」などと言われたことはありません。前夜祭についてホテル側がそんな依頼をしたとは考えられませんが、仮にしたとすれば、安倍氏が現職の首相であったことを忖度した特別な値引きなど、後ろめたい内容があるのでしょうか?

 

補填の原資の怪しさ

 会費を補填した原資について、前日の記者会見でも国会でも、自分の預金から下して政治資金以外の支出に充てるために事務所に預けておいた中から支出したと答えています。いくらお金持ちでも、プライべートなお金を一回に何百万、全部で何千万も使い込まれていて、気づかなかったとは、浮世離れしすぎています。鷹揚すぎます。

 安倍氏が秘書の責任を追及する様子が見えないことと合わせて考えれば、本人も承知していたと考えるのが自然でしょう。

 

証人喚問は必須だ!

 これだけ怪しい説明で、ほとんどの国民が納得していないのに幕引きを図ろうとすれば、自民党も同罪です。安倍氏の嘘を一緒になって隠ぺいしようとしているということです。「嘘を謝罪するための場でまた嘘をついている!」と感じた国民が多いようです。

 証人喚問という、虚偽の答弁をしたら偽証罪に問われる場面での検証が不可欠でしょう。

 裁判で決着がついた事件は再び罪を問うことが許されない「一事不再理」の原則は、不起訴処分には適用されません。法律家のグループから再度の告発が出されていることでもあり、自民党には今からでも改心していただきたいものです。このままでは、日本の恥です。

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 ニーチェの思想についてのマンガを読んで興味を持ち、ニーチェ本を読み始めています。

 「マンガでわかるニーチェ」(白取春彦)を読んで

 「新編 はじめてのニーチェ」(適菜収)を読んで

 

 本書の副題は、「現代語訳「アンチクリスト」」です。ニーチェの「アンチクリスト」を現代語訳したということで、たしかに分かりやすく、読みやすいのですが、反面、訳者がおもしろく意訳している部分もありそうなので、表題に訳者も記載しました。

 

 「アンチクリスト」は、キリスト教を徹底的に批判した書です。

 誇りを持っている民族は、自分たちの神を持っています。自分たちの繁栄を願い、感謝するための神です。しかし、ユダヤ人が他民族に征服され、抵抗もあきらめ、敵に屈服することが一番いい選択だと考えるようになったとき、彼らの神も変化し、「敵を愛せ」などと言うような卑怯で臆病なものになってしまったということのようです。

 抵抗する代わりに、内心で強者を悪とし、自分たち弱者を善と考えて、道徳的には自分たちの方が優れていると考えることで心のバランスをとる・・・。そんなルサンチマン(強者、優れた者に対する弱者の恨み、妬み)を凝り固めたような宗教が、下層民の間で広まり、世界宗教になってしまい、「道徳」になってしまったということです。

 

 また、特にキリスト教会、僧侶を手厳しく非難しています。

何が善で何が悪であるかを自分たちの都合で勝手に決め、自分たちの言葉を神の言葉だと偽っている。そして、何も証明しないまま信じることを強要し、死後の幸福など確かめようがないことを約束して金をむしり取る・・・などです。この辺りは、キリスト教に限らず、他の宗教も似たようなものかもしれません。

 

 キリスト教そのものは日本人にはあまり関係なく、どれほど否定されても影響はないのですが、キリスト教が基本になっている西洋道徳、西洋哲学は日本社会にもかなり浸透してしまっています。あるべき道徳などについて、他のニーチェ本も読んでみたいと思います。

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 124日、大阪地方裁判所は、福井県の大飯原子力発電所3号機と4号機について、国の原子力規制委員会の審査に看過しがたい誤りや欠落があるとして、原発の設置許可を取り消す判決を言い渡しました。福島の原発事故後に新たな審査基準になってから、原発の設置許可が裁判所によって取り消されたのは初めてとのことです。

 

審査が緩すぎるのでは?

 取り消された理由は、耐震性の評価が不十分だということです。

私は、そもそも原発の稼働には反対ですが、これほど危険なものを稼働させるからには、過去に発生した最大の地震よりも多少大きな地震が来ても大丈夫なように作られているだろうと思っていました。しかし、そうではなかったようです。

裁判所は、「審査のガイドラインには、基準地震動の設定にあたっては過去に起きた地震の規模の平均値より大きな規模の地震が起きることも想定し、そうした『ばらつき』を考慮する必要があると書かれている。しかし、原子力規制委員会は『ばらつき』を考慮する場合、平均値に何らかの上乗せをする必要があるかどうかすら検討していない。審査の過程には看過しがたい誤りや欠落があり、違法」としています。

これが本当なら、にわかには信じがたい話です。福島の事故後も、こんな緩い基準で、しかもその緩い基準すら十分に守らずに審査をしていたのかと思うと、恐ろしくなります。

私の感覚では、過去の最大の地震の2倍の揺れ、最大の津波の2倍の高さの津波くらいを想定して対策が講じられていなければ、そんな危険なものは設置させてはならないと思います。

なぜ日本の与党政治家、電力会社は、こんな冒険野郎なのでしょうか?

健全な「保守主義」の政党が力を持つことを切望します。十分な安全対策を講じようとすれば、原発など到底そろばんに合わないでしょう。早く見切るべきです。

 

判決の意味は大きい

 裁判所の言っていることは、もっともです。他の原発も、こんな緩い基準で審査されていなかったのか、再検証されなければなりません。

 1217日、国が大阪高裁に控訴しました。これまでの傾向では、せっかく下級審が勇気ある判断をしても最後には最高裁でひっくり返されるようです。あの「黒い巨塔」の世界なのでしょう。でも、想定外の大きな地震が来れば事故を起こしてしまうような原発が再稼働しないよう、住民側を応援しています。

 「黒い巨塔 最高裁判所」(瀬木比呂志)を読んで  参照

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