地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2021年02月

 224日、菅総理の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は、谷脇総務審議官ら9人を減給や戒告の懲戒処分、他の2人を訓戒にしたことを発表しました。また、総務審議官当時に同じ相手から7万円を超える接待を受けていたことが明かになった山田内閣広報官(現在は特別職なので懲戒処分の対象外)は総理が厳重注意し、給与の一部(一般職なら減給になっていた相当額)を自主返納ということです。

 減給10分の2を3か月が2名、10分の1を3か月が1名、10分の1を1か月が4名、戒告が2名という内訳です。

 予想していた通りの大甘の処分で、処分したというアリバイ作りをして幕引きを急いでいることを隠そうともしていないようです。総務省は、もう今後は偉そうに地方自治体に指導、助言などできる立場ではないでしょう。私は県職員時代、県職員の給与改定のことで総務省に呼ばれ、長時間にわたって絞られた不愉快な記憶があります。

 私が問題だと考えているのは、詳しい調査を行わずに処分を急いだことと、甘すぎてバランスを失していること2点です。

 

詳しい調査前に処分を急いだ!

 武田総務相は閣僚給与3か月分を自主返納し、さらに、副大臣をトップとする検証委員会を設け、「行政が歪められることがなかったか改めて確認する」と、放送行政が歪められた事実の有無などを調査する方針を明らかにしています。

 順番が逆です。詳しい調査をしてから処分を決めるべきでしょう。

 調査の結果、行政に影響があった可能性を示唆する事実が判明したら、どうするつもりなのでしょう。既に「行政が歪められた事実はない」という結論になることに決めているので、そんな心配は不要ということなのでしょう。

 つまり、これから行うと言っている調査自体も、単なるアリバイ作りであることを公言しているも同然です。せめて調査委員会に野党の代表とか第三者を入れて行わなければ無意味です。

 

嘘の言い訳を容認したアンバランスな処分

 接待を受けた高官らは、一様に「利害関係者と思わなかった」などと言っています。放送事業を行う会社の幹部からの接待であることは知らなかったはずはなく、そんな言い訳は絶対に嘘でしょう。何の利害もない人が、御馳走してくれておみやげまでくれたと考えていたとしたら、アホです。

 この事例は、総務省の電波行政の職務権限と密接に関係しており、贈収賄罪の可能性もあります。仮に収賄罪がギリギリセーフだとしても、かなり近いものです。

 収賄で有罪になれば、執行猶予が付いたとしても公務員を失職し、退職金も支払われないでしょう。今回のケースは、それに近いものですから、バランス上、それに近い罰が必要です。ただ、有力政治家の身内からの誘いだったため、断りにくかったという事情を考慮し、停職6か月、退職手当も半分ほど不支給程度がバランスが取れていると思います。それでも一般的な退職金より多いでしょう。

 

 総務省が厳罰で臨めば、それで終わりにしても良かったのかもしれませんが、やはり検察に期待するしかないようです。ただ、検察も、黒川前検事長の件で、脛に傷を持っているから・・・。

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 223日、旅行業大手のJTBが資本金を23400万円から1億円に減資することが報じられました。コロナ禍による旅行需要の減少で巨額の赤字が見込まれることが原因ですが、資本金が1億円以下になると「中小企業」として税制面などで様々な優遇措置を受けることができ、それを狙っているとの解説です。

 コロナ禍に苦しむ外食、航空産業などで、中小企業の優遇制度を狙った減資が相次いでいるようです。

 

資本金の額による差別は不合理

 企業の実態に変化がなくても、帳簿上の資本金の数字を資本剰余金などに振り替えるだけで税負担が緩和されるような制度は、不合理です。制度の歪みを感じます。

 コロナ禍で苦しむ企業を救う対策は必要でしょうが、資本金の額で区別することは合理的ではありません。資本金などは、会社が大きくなっても少額に抑えておくこともでき、会社の規模を必ずしも反映していません。

 

中小企業を優遇することは不合理

 起業したばかりの企業を優遇して育てることは合理的でしょう。しかし、設立されてからいつまでも小さいままである企業を優遇することは、合理的とは思えません。

 私は、菅政権にはあまり期待していないのですが、デービッド・アトキンソン氏を成長戦略会議のメンバーに起用していることについては評価し、期待しています。日本経済を再生するための方策に関する彼の意見に賛同しているからです。

 人口が減少する中で日本の経済規模を維持、成長させるためには、生産性を高める必要があることは当然です。そのためには、労働者を生産性の高い企業にシフトさせる必要があります。つまり、生産性が低く、従業員に低い賃金しか支払えないような企業には退場してもらい、その労働力を生産性の高い企業にシフトさせるべきであることも当然です。最低賃金を戦略的に引き上げ、それに耐えられない企業には早々に退場してもらう方が日本にとっても労働者にとっても幸せというのが、彼の主張です。

 「国運の分岐点」(デービッド・アトキンソン)を読んで

 「日本人の勝算」(デービッド・アトキンソン)を読んで  参照

 

 スタートアップ企業を支援することは合理的ですが、いつまでも小規模のままで低生産性、低賃金の企業を制度的に優遇し続けることは、不合理であり、日本の衰退につながります。

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 島根県知事が、県の聖火リレー実行委員会の場で、新型コロナ対策についての政府や東京都の対応を批判し、「都内で適切な医療を受けられずに自宅で亡くなった人が増えている。感染拡大を助長する世界的なイベントを開催することは理解できない。東京五輪開催に反対せざるを得ない。プレイベントである聖火リレーにも県として財源や人員を充てられない。」と述べました。

 それに対して、自民党の竹下派会長の竹下衆議院議員(島根県選出)が、「注意しようと思っている。」と上から目線でアホなことを言い、「こいつは何様のつもりだ?」などと炎上しています。

 

開催してほしいが・・・

 私も、これまで懸命に準備してきた選手や関係者のことを考えると、オリンピック、パラリンピックは開催してほしいとは思います。でも、現状で本当に開催できるのか極めて懐疑的です。多くの国民が、そのような考えだと想像しています。

 

政府は何も説明していない

 政府、与党、組織委員会は、「開催する」と威勢のいいことを繰り返すばかりで、この状況下で開催できるという根拠を一切国民に示していません。菅政権は、全般に説明力不足だと指摘されていますが、五輪開催問題はその最たるものでしょう。

 島根県知事の発言を批判する資格などありません。

 

最低限、国民に説明すべきこと

 WHOがパンデミック終息を宣言しない状況でも開催するのか?

 ワクチン接種をしていない外国選手等も受け入れざるを得ず日本国民の多くも未接種の状態だろうが、国内での感染拡大をどうやって防ぐつもりか?入国者の2週間の隔離など可能か?

 選手村でクラスターが発生した場合、どう対処し、どう責任を取るつもりか?

 五輪に対応するための医療スタッフをどう準備するのか?

 膨大な追加経費の負担について、国民にどう説明し、理解を得るつもりか?

 ⑥新型コロナの影響で参加できない国が多数でも強行開催するのか?
 

 WHOがパンデミックの終息を宣言しないうちは、開催などすべきでないと思います。多くの人々が苦しんでいる最中では、「新型コロナを克服した記念」になどなるはずがなく、開催には倫理的な問題もあります。

 威勢のいい掛け声だけでなく、具体的な説明が必要です。

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 菅総理の長男らが総務省幹部を接待していた問題、関係幹部二人が異動になりました。総務省は通常の人事異動だと言っていますが、事実上の更迭ととらえる報道がほとんどです。

 政府、与党、総務省などの対応を見ていると、国家公務員倫理法、倫理規程に対する違反は認め、それだけで終わらせようとしているように見えます。菅総理の長男は、放送事業会社に勤めているので、利害関係者であることは争いようがなく、倫理法等に違反することも当然でしょう。

 

贈収賄罪は?

 会食の場で、事業関係の話が一切出ず、世間話に終始して懇親を深めていただけなら倫理法等違反だけでもいいかもしれません。しかし、衛星放送などの話がされていたことが文春によって明らかにされてしまいました。

 常識的に考えれば、事業者側(菅総理の長男側)は、放送事業の許認可などについて有利な扱いや情報を求めて接待し、官僚側も承知の上で御馳走になっているのでしょう。これは、既に贈収賄の構図です。このような例で、贈賄側、収賄側の双方が起訴されて有罪になっている事例も知っています。

 警察、検察は、少なくとも事情聴取くらいはしなければならないと思います。もう水面下で動いておられるかもしれませんが・・・。

 「脇の甘い高級官僚」 参照

 

忘れるほど常習だったのか?

 総務省幹部の一人は、当初は衛星放送などの話題は「記憶がない」と言っていましたが、その後「今となっては首相長男らからBSCSに関する発言はあったのだろうと思う。」と一転し、許認可権を持つ衛星放送事業について話題になったことを認めています。

 記憶にないなど、到底信じることはできません。

 会食の場でそんな話がでれば、普通は「ヤバいことになった!」と慌て、話をストップさせるか席を立つでしょう。それをせずに、そんな話が出たことも忘れたとすれば、そのような接待を受けるのが常習になっていたとしか考えられません。

 一番悪いのは菅総理でしょうが、気の毒な総務省幹部らも職を失っても仕方ないかもしれません。

P.S 市民団体が菅総理長男と総務省幹部らを贈収賄容疑で告発したことが22日に明らかになりました。当然の動きです。総務省は24日にも幹部らに対する懲戒処分の方針のようですが、幕引きを急がず、贈収賄罪について十分に検討してからの方がいいでしょう。


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 山口県田布施町で、固定資産税の課税誤りが放置されていたことを内部告発した職員を他の職員から切り離された一人だけの職場に異動させたパワハラ問題が昨年(2020年)6月に発覚し、全国的に話題を呼びました。私も関心があったのでこのブログで2回ほど取り上げたのですが、続報も聞こえてこず、失念していたところ、その後の情報について当時の記事にある方からコメントをいただきました。

 「山口県田布施町のパワハラ 幕引きを許すな!」 参照願います。

 

 いただいたコメントの情報をもとに私も町のホームページで議会の議事録を読んでみました。

 町議会ではこの問題の調査のために特別委員会を設置し、また、弁護士等の有識者による第三者委員会を設置して解明すると表明していましたが、実質的に何も調査しないまま9月に特別委員会も解散してしまったようです。

 

第三者委員会を設置しなかった理由

 特別委員会の委員長を務めた議員の答弁等によると、第三者委員会の設置について町の顧問弁護士から法律上の疑義を指摘されたとのことです。法律上の疑義というのは、地方自治法では附属機関の設置は執行機関には認められているものの、議会については根拠規定がないというものです。

 それは、そのとおりです。議会が外部人材による調査委員会等を設置する根拠規定は見当たりません。ただ、禁止する規定もなく、三重県などでは例があるようです。

 長部局でも、法律や条例によらず、自治法の根拠を有しない審議会、委員会など、山ほどあります。

 第三者委員会の設置が不適当だとしても、特別委員会に外部有識者を参考人として招致して意見を聞くことは完全に適法です。第三者委員会の設置に疑義があるのなら、特別委員会の中で解明すればいいことであり、調査自体を放棄してしまうのは、本末転倒です。幕引きの口実にしたかったのでしょう。議事録や報道を見ると、あの町の議員さんの多くは、町行政の適正化より、くさい物に早く蓋をすることに意識が集中していたようです。

 特別委員会では、有識者の意見を聞いて、再発防止策だけ提言しています。実態や原因を究明せずに再発防止策だけ提言というのは、妙な話です。調査したという形だけ整えるためのアリバイ工作ですね。

 

長や公平委員会の権限を侵す?

 特別委員長は、「執行機関に第三者委員会のような付属機関を設置し、人事異動等の人事行政を諮問することは、 地方自治法の趣旨から町長の執行権限を阻害するものであり、適当でないことを確認」とも言っていますが、これもごまかしです。条例で人事に関する権限を有する附属機関を設置するなどすれば、適当ではないでしょうが、長の権限行使の参考にする目的で有識者に意見を聞くための委員会(条例に基づかない附属機関)など、設置しても何の問題もないでしょう。また、長の権限行使をチェックすることは議会の役割で、長の執行権限を阻害することにはなりません。

 また、特別委員長は「人事に関することは、県の公平委員会、全てこっちに任されていますので、私たちじゃちょっと 事実関係に関してはちょっとできないということになっており・・・」とも言っています。公平委員会は各自治体に設置するもので、県に設置するものではありません。田布施町の場合、一部事務組合に委任しているのでしょう。また、長が行う権限の行使についてチェックすることは議会の役割で、公平委員会の権限などと関係ありません。

 

 やはり、世間の注目が薄れると、変な動きが出てしまうのですね。本件も、まんまと幕引きをさせてしまったようです。

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