地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2021年06月

 新型コロナウイルスのワクチン接種のために国が設置する大規模接種会場では、高齢者以外の住民への接種も始まっています。接種を受ける際は原則として市町村が発行するワクチン接種券が必要になるため、まだ一般住民への接種券の配付を行っていない市町村は、住民から批判されたり、困った羽目に陥ったりしているようです。

 

国の場当たり的な施策が

 そもそも国は、住民へのワクチン接種について計画から実施まで自治体に任せました。それで多くの自治体は、接種の順番に応じて接種券を住民の住所あてに送付する計画にしていました。接種の時期よりも早く送り過ぎると、紛失してしまう人が多いでしょうし、接種が間近だと誤解されてしまうおそれがあるからでしょう。

 その判断は非難されるべきことではありません。

 しかし、国が後出しで大規模接種会場を開設し、市町村が発行する接種券を持っている人なら誰でも接種を受けられるなどという話が出てくれば、前提が全く異なってきます。そんなことが最初から分かっていれば、市町村は、わざわざ送付時期を分けたりせず、全住民に早々に送付していたでしょう。

 市町村としては、国に騙されたような気持ちかもしれません。

 また、職域接種が進展すれば、自治体の接種計画に大きな狂いが生じます。

 

国は自治体支援に徹するべきだった

 国は、自ら大規模接種会場を設置して自衛隊医療スタッフなどによる接種を進めるのではなく、ワクチンの打ち手が不足して接種が遅れている自治体に医療スタッフを派遣するなどして支援すべきだったと思います。

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 本書は、ハーバード大学で著者が行っている「Justice(正義)」という名の講義を書籍化したものです。学生に大変な人気だったため、大学が一般にも公開し、2010年には日本でも「ハーバード白熱教室」として放送されて話題になりました。

 アメリカの社会では、日本以上に、何が正義であるか、どうすることが公正であるかが問題になり、法廷に持ち込まれるようなこともあります。例えばアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)です。黒人などマイノリティーの社会的地位を向上させるため、大学入試や採用試験などの際にマイノリティーを優遇する制度です。たしかに、同じ点数だったのに不合格とされた白人が、不公正だと憤る気持ちも理解できます。

また、有能な人とそうでない人の収入の格差は日本以上に大きく、格差是正をめぐる議論もあります。

本書は、それらの議論を紹介し、それを題材に、何が正義であるかについてのいくつかの考え方を解説しています。また、5人の作業員の命を助けるために路面電車のポイントを切り替え、1人の作業員の命を奪っていいかなどの、倫理に関する有名な思考実験もいくつか提示されています。

 

正義を判断する視点

「ある社会が公正かどうかを問うことは、我々が大切にするもの…収入や財産、義務や権利、権力や機会、職務や栄誉…がどう分配されているかを問うことである」と著者は述べます。それらが正しく分配されているか判断するのは、幸福、自由、美徳の三つの観点です。本書では「幸福の最大化」「自由の尊重」「美徳の涵養」の三つの見解に集約し、紹介しています。

 幸福の最大化は、最大多数の最大幸福を目指す功利主義の立場です。ある集団の幸福を最大化することが正義という考え方です。説得力はありますが、例えば、少数の人が信仰している宗教を多数の人が不快に思っているとき、その少数宗教を禁止してしまえば幸福は最大化するかもしれません。しかし、それが正義だと言われると、疑問を感じざるを得ません。

 自由の尊重を重視する立場の極端な支持者は、「リバタリアン」と呼ばれる人たちです。成人が自らの自由意思でする契約などは他者の権利を害しない限り尊重します。また、市場で決められた分配を尊重します。売春、麻薬売買などは自由意志による取引として容認し、自由な市場で配分された所得は、いかに格差があろうと容認し、再分配などは拒否します。

3つ目の「美徳の涵養」は、美徳や善良な生活を実現することが正義だと考えます。ただ、何を美徳と考えるかなどは難しい問題で、結局は宗教的な価値観に左右されてしまいそうです。宗教と切り離された、人類共通の普遍的な正義などは、見いだせないかもしれません。

 

欧米諸国とイスラム教国家、中国などとの応酬を見ていて、そもそも何を正義と考えるのかという考えが違っているような気もします。でも、西欧人でなく、キリスト教徒でもない私は、むしろ欧米諸国の言い分の方を理解できます。

新型コロナの騒ぎの中で、個人の行動を制限することがどういう場合に許されるのか、ワクチンをどんな順番で接種することが公正なのか、倫理的な判断を迫られる場面もあるでしょう。また、課税による所得の再配分をどこまで行うかも問題です。

日本人は、倫理とか正義とかの議論は、青臭い感じがして苦手かもしれませんが、避け続けてばかりもいられません。

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 新型コロナウイルスワクチンの高齢者に対する接種が進んでいますが、打ち手(医師、看護師、歯科医師など)の確保に苦労している自治体が多いようです。そんな中、大企業などの職域接種も始まりましたが、これが自治体の苦労をさらに増やさないか懸念しています。

 

打ち手の不足に拍車が?

専属の産業医などの医療スタッフを抱えている大企業ばかりではありません。企業が打ち手を雇用しようとすれば、自治体が住民への集団接種のために医療スタッフを確保しようとするのと競合せざるを得ません。

ワクチン接種のため、医師を確保しようとする際の時給が3万円に跳ね上がっているともいわれています。

 

接種状況の把握は?

 職域接種のほか、国が設置する大規模接種会場でも、優先対象者以外の人も対象にすることになるようです。市町村からワクチン接種券がまだ配付されていない人などに接種された場合、どの住民が接種済みで、どの住民が未接種なのか、未接種の住民がどのくらい残っているのか、市町村が把握できるのでしょうか?また、国が把握するのでしょうか?

 接種を受けた人の割合を増やすことは大切なことで、いいことです。しかし、市町村などを混乱させないための対策を講じた上で進められているのか、心配しています。

 二重に接種を受けてしまう人が出てしまわないか、1回目と2回目で別の種類のワクチンを接種してしまう人が出てしまわないか・・・。

 政府がなりふり構わずに接種率を上げることを急ぐのは、五輪のためのような気がしています。

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 高齢者接種に目途がついた自治体では、高齢者以外の住民の接種の準備に取り掛かっています。今回、住民への新型コロナワクチン接種の段取りについて、国が自治体の裁量にほとんど任せたため、高齢者以外の住民の中で誰を優先するか、自治体が独自に特色を出しています。このようなことは、とてもいいことだと思います。

 

理不尽な批判も

 独自色を出した自治体の中には、抗議の電話等が相次いで方針変更をさせられてしまったところもあります。

 京都府伊根町では、中学生への集団接種を予定していたところ、「子供への接種はリスクがある」などといった抗議が相次ぎ、取りやめてしまいました。

 集団接種と言っても、全員に強制的に接種するはずがありません。接種を受けたくない生徒、自分の子供に接種を受けさせたくない親は、拒否できたはずです。接種を受けて安心したい生徒や保護者も多かったはずで、その気持ちを邪魔する権利は誰にもなかったでしょう。接種を受けなければリスクがないわけではなく、受けた場合より新型コロナに感染するリスクが高いのは明らかで、どちらのリスクを選ぶかはそれぞれの判断です。生徒の保護者であっても、よその子供が接種を受ける希望を邪魔する権利はありません

 まして無関係な野次馬が役場に抗議の電話をするなど、もっての外で、そんな声は毅然として無視すべきだったと思います。そんな野次馬は、自粛警察と同様、正義感という錯覚に陥っていただけでしょう。

 

地域の実情に即した自治体の判断を尊重したい

 単純に60歳以上、55歳以上のように年齢層で優先順位を決める自治体もあるようですが、保育士や保育所職員を優先接種する自治体もあります。保育所が休園した場合の保護者への影響を考えれば当然の判断で、むしろ高齢者よりも優先すべきだったような気もします。

 東京都新宿区のように、20代、30代を優先する自治体もあるようです。基礎疾患がある人は医療機関で個別接種を受ければいいので、集団接種の優先順位としては妥当かもしれません。

 いずれにしても、各自治体が真剣に考えて感染拡大防止等にもっとも効果的な順位付けをし、その考えを住民にきちんと説明されることを期待しています。

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 小学校、中学校などの義務教育では、教職員の人件費は国と都道府県(政令指定都市の場合は政令指定都市)が負担しますが、学校の施設設備は市町村の負担となるので、もともと市町村の財政力によって教育に差が生じていました。教室へのエアコンの導入などがいい例です。

 その格差が、広がりそうな気配です。

 

タブレットとAIドリル

 全児童に一人1台のタブレットを導入し、AI教材で学習を進める市町村、学校がかなりの勢いで増えているようです。キュビナというAIドリルは、20209月の時点で、導入している自治体が100を超えたとのことです。

 キュビナが出した問題に児童が解答し、その正誤をAIが解析して苦手分野の類題を繰り返し出題する・・・。苦手分野は克服され、理解の早い児童はどんどん先に進むことができ、つまずいた場所が把握できます。一昔前なら夢のような教材です。

 紙のドリルはやろうとしない子供も、この教材は取り組む気になる例もあるようです。

 こんな教材を使って毎日学習している児童と、昔ながらの方法で学習している児童とでは、学力に差が出ることは容易に想像できます。

 AIドリルの利用料について保護者の一部負担を求める場合が多いようですが、やはり決め手は市町村の財政力です。

 

国庫負担の仕組を

 AI教材の導入は国も支援していますが、あくまで市町村の判断です。

 このようなシステムはもはや必須のもので、地方交付税(普通交付税の基準財政需要額)に算入して市町村に導入を義務付けるなど、これ以上財政力による学力格差が広がらないような措置が必要だと思います。

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