地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2022年02月

 年次有給休暇を繰り越す際に1日未満の端数を切り捨てる取扱いを多くの地方公共団体が行っていますが、違法の疑いがあることを10日前の本ブログで指摘しました。

 「年次有給休暇を繰り越す際の1日未満の端数」

 

 読んでくださった方の中には、「自治体の条例や規則で定めていることだから、少なくとも非現業職員についてはそれでいいのではないか」と考える人もおられると思います。しかし、それは誤りです。

 役所のマガジンラックに回覧を終えた「地方公務員月報(202112月号)」が置いてあり、パラパラ眺めていたところ、タイムリーな記事がありました。「地方公務員と労働法制」と題したダイアログです。

 

ダイアログの概要

 某政令市の人事課職員が、大学の労働法ゼミで同期だった某中央省庁の職員とランチをしながら、地方公務員の労働法制についてレクチャーするという設定の問答形式の記事です。私も、一応は知っていましたが、この記事であらためて再確認できました。

この記事は、直接は時間外勤務の上限規制について説明していますが、以下、この年次有給休暇の問題を考えるうえでも参考になる箇所を抜粋します。

「歴史的経緯から地方公務員には民間労働法制が直接適用されているんだよね。地方公務員法第24条第5項で職員の勤務時間その他の勤務条件は条例で定めるとされているんだけど、労働基準法は労働条件の最低基準を定めるという扱いになっていて、職員の勤務条件を条例で定める場合でも、労働基準法が定める最低基準以上のものを定めなければならないことになっているんだ。」

 

 この雑誌は、「総務省自治行政局公務員課編」です。私は、総務省の監修している「地方財務実務提要」なども鵜吞みにせずに吟味したうえで使っていましたが、このダイアログの内容は正しいと思います。労基法と地方公務員法の関係を分かりやすく解説してあって、いい記事です。

 労働基準法で、年次有給休暇の端数切捨てが違法であれば、地方自治体がそういう扱いをすれば同じく違法なのです。早急に是正すべきでしょう。

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 22616時頃の時点で、ウクライナの首都キエフの陥落が迫っているようです。

 平和な日々を一方的に奪われたウクライナの人々の無念さ、国際社会が無力であることへのいら立ちが胸に沁みます。

 その中で、私が少し救われた気持ちになるのは、ロシア国内でもウクライナ侵略に反対し、自国の行動を恥ずかしく思っている人々が大勢いることです。

 

ロシア国内の反対の動き

 ウクライナ侵攻が発表された後、ロシア国内でも各地で反戦デモが相次ぎ、1800人以上が拘束されました。参加者は、その100倍を超えるでしょう。ロシア国民の中にも反対する人が多いようです。

 スポーツ選手ら、著名人も反対の意思表示をしています。嬉しい反面、彼らの身の安全が気になるところです。

 侵攻開始前の131日、「全ロシア将校協会」が「ウクライナへの侵攻を止めること」と「プーチン辞任」を求める公開書簡を公表しました。伝えられるところによると、この協会はそもそも反政府などではなく、保守的な団体のようです。その主張では、キエフを制圧できたとしても長期的には敗北必至だとしているようです。

 

まともな人も多いようだ

 結局、追い詰められたプーチンが半狂乱になって戦争を始めただけで、あの一派以外は善良な人が多いのでしょう。

 私は、トルストイなどのロシア文学、ロシア民謡が大好きです。あの民族に親しみを感じています。結局、ソ連、ロシア共産党が諸悪の根源だったのでしょう。

 プーチンの主張は、NATOや米国に対する主張としては理解できなくもありません。しかし、自国の都合で他国を「緩衝地帯」「非武装地帯」に位置付けるなど、身勝手にもほどがあります。ウクライナを自国の勢力下に置いておきたかったら、ウクライナがそうしたくなるような対応をすべきであって、武力で制圧するなど、アホの極みです。

 そのロシアの主張を「理解する」などと言っている中国共産党も、周辺国の主権を尊重するつもりなどないのでしょう。チベットも1950年ころまでは歴とした独立国でしたが、中国に侵略され、征服状態が続いています。

 

プーチンの失脚に期待

 プーチンが私腹を肥やして宮殿を建てたことも徐々に知られているようです。ロシア国内の政変を促進すべく、ロシアが干上がるほど国際的な包囲網を築かなければなりません。その間にもウクライナで犠牲が生じ続けるのでしょうが・・・。

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 ウクライナの紛争は、ロシアがウクライナ東部の親ロ派武装勢力が事実上支配している2州の独立を一方的に承認し、ロシア軍の侵攻の口実をでっちあげました。それに対して、米国をはじめとする国際社会は、経済制裁以外に有効な対処ができない状態です。
 対抗手段としてチェチェン共和国の独立を承認しても、ロシア軍が支配している下では、単なる嫌がらせにしかならないでしょう。

 

ロシアの国力

 これまでプーチンは、事あるごとに核兵器をちらつかせ、国際社会を恫喝してきました。特に今回は、「ならず者」であることを隠そうともせず、名実ともに「ならず者」の振る舞いを続けています。

 ロシアのGDPは2020年の国連統計によると韓国より下の11位です。一人当たりGDPは、もちろんもっと下の82位になっています。その程度の経済力の国が、民生を犠牲にして武力を蓄えれば、あれほどの軍事力を維持できるのです。さらに核武装は、通常兵器による武装よりずっと安上がりなのでしょう。

 この様子を見れば、北朝鮮が核保有国の地位を目指したくなるのは無理もありません。

 

戦争をしないためには核保有がベストか

 核を持っていない国がロシアのような「ならず者」の振る舞いをすれば、国際社会は多国籍軍を編成して武力で阻止するでしょう。今回の事態は、核を持つ国に対してはいかなる国も攻撃しないことを示しています。

 しばしば指摘されることですが、仮に日本が核攻撃を受けたら、自国が核による反撃を受けることを覚悟して米国が反撃に加わってくれるか、心もとないものがあります。

 国際社会の現状では、自国が武力による攻撃を受けないため、戦争に巻き込まれないためには、核を持つのが最善の方法だとする西部邁氏、エマニュエル・トッド氏らの主張にリアリティーを感じます。

 「保守の遺言」(西部邁)を読んで  参照願います。

P.S 2月24日、とうとうロシア軍がウクライナへの侵略を開始しました。臆面もなく、こんな20世紀初頭のような侵略行為を始めたことにあきれます。ロシア及びそれを支持する国々を経済的に孤立させ、破綻させるために、私もできることはやろうと思います。
 前々政権がロシアに対する経済協力を熱心にやり、結局ただ食いされた間抜けぶりが悔やまれます。あの支援が、ウクライナへのミサイルに代わった可能性もあるでしょう。2/24 18:50

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 著者は、「ハーバード白熱教室」で日本でも有名なハーバード大学教授です。政治哲学が専門です。また、この著者の『これからの「正義」の話をしよう』は、世界各国でベストセラーになり、私も読んで感銘を受けました。

本書の副題は「能力主義は正義か?」です。また、英語の原書の題名は、「The Tyranny of Merit」(能力の専制、功績の専制)です。

私は、まず、この日本語の題名の巧みさに感心しました。日本でよく言われている「運も実力のうち」をひっくり返して、本書の内容を的確に表現しています。

 

 ハーバード大学をはじめ、難関大学の学生の大部分は裕福な家庭の出身ですが、ほとんどが自分の努力によって入学を勝ち得たと考えているとのことです。彼らが必死に努力したことは事実かもしれませんが、素質がありながら勉学の機会に恵まれなかった人、彼ら以上に努力したけれども入学できなかった人もいるであろうことを考えれば、入学を自分だけの手柄と考えるのは正義にかなったものとは言えないでしょう。

 これは、日本でも同じような状況ですが、能力主義、実力主義が日本以上に徹底している米国においてはより深刻です。

 生まれながらの才能は平等に与えられているわけではなくたまたま現在の社会が高く評価する才能を持って生まれた人が、それによって得られる多額の収入をすべて自分のものにするのが正義か、著者は問いかけます。

 さらに、社会が与える収入が、社会に対する貢献度に見合ったものかという点も問いかけます。例えば、多額の収入を得ている覚せい剤の売人と、高校教師とではどちらが社会に有益なものを提供しているか・・・。

 それほど極端な職業でなくても、ウォール街で社会の向上には何の役にも立っていない金融商品を開発して高収入を得ている人と、工場でマスクを製造している労働者と・・・。つまり、収入の多寡と社会への貢献度は連動しておらず、収入の多い人が道徳的に高い地位にあるわけではもちろんなく、尊敬される必要はないということです。

 

 しかし、能力主義とか自己責任とかが幅を利かせるようになり、たまたま裕福な人は貧しい人を見下すようになりました。また、貧しい人は、自分が貧しいのは自分の努力が足りなかったせいだとか、何かを怠ったせいだと思わされ、周囲から見下されていると感じるようになります。

 この問題は、「機会の平等」では解決できるはずがなく、「条件の平等」の社会の実現が必要だと著者は主張します。なかなか難しい考え方で、本書でも最後に少し言及されているだけで、具体的な説明はされていません。でも、誰もが、持って生まれた能力を精一杯使って働くことで、尊厳のある暮らしができる社会ということのようです。

 

 日本でも「自己責任」論が声高に叫ばれ、ネットの世界では学歴の低い人を蔑むような議論が臆面もなく展開されています。私もそんなことをしないよう自制しなければなりません。

 社会のあり方を考えるうえで、必読だと思います。

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 2022211日に火災が発生し、6人の犠牲者を出した新潟県にある菓子メーカー三幸製菓、結構大きく、名前も知られている会社ですが、基本的な危機管理が全くできていないようです。絵に描いたような失敗事例として残りそうです。

 

ハインリッヒの法則(ヒヤリ・ハットの法則)

 地元の消防本部によると、あの工場では1982年の操業開始以降、米菓の屑などが燃える火災が8件も発生しているとのことです。また、火災報知器が作動しても「また誤報だろう」と作業を続けることが常だったとも報じられています。消防に通報されないボヤも多発していたのかもしれません。

 ハインリッヒの法則(別名、ヒヤリハットの法則)とは、労働災害における有名な経験則です。1件の重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというものです。多くの組織では、「ヒヤリハット報告」「ヒヤリハット活動」などで、大災害の芽を事前に摘むことに努めています。

 三幸製菓の今回の惨事は、この原則が正しいことを実証してしまいました。

 

なぜ社長の会見が遅れている?

 また、災害が発生した後の対応もかなりお粗末です。

 火災から1週回以上経った2月19日時点、警察による本社の立入捜査も始まっています。しかし、広報担当者が謝罪したという報道はありましたが、社長が会見したという報道はありません。これは、かなり特異なことです。

 考えられる可能性としては、社長に記者会見を促す経営幹部がいない、または会見を促された社長がぐずっている、どちらかでしょう。

 火災が鎮火した直後に、社長が記者会見して謝罪すべきでした。調査中のことは調査中と答えればよく、分からないことは分からないでもやむを得ないので、会見すべきでした。遅れれば遅れるほど、「なぜこんなに遅いのか」という非難が加わり、誠意が伝わりにくくなってしまいます。

 

 私の古巣の県庁などでは、「危機管理研修」などにより、これらの心得を叩き込まれました。私は、模擬謝罪会見まで経験しました。三幸製菓は、そういう体制になかったようです。

 今回の事案、多くの組織に再点検のきっかけを与えてくれました。

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