地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2022年09月

 地方自治関係者なら給与のラスパイレス指数のことは誰でも知っています。しかし、民間企業の人には、この指数のことはあまり知られていません。私は、日本の給与水準を上げるため、民間企業でラスパイレス指数の活用を促すべきだと思います。

 

ラスパイレス指数

 例年、9月に入ると人事院が「国家公務員給与等実態調査」の結果を公表し、総務省がそのデータを基に各地方自治体に対して各団体の給与のラスパイレス指数を計算するよう指示を出します。

 各団体の学歴別、経験年数階層別の職員構成が国と同じと仮定して各団体の区分ごとの実際の平均給与額を乗じて合計し、それを国と比較して指数化したものがラスパイレス指数です。指数が100ならば国家公務員と同等、100未満なら国家公務員より低く、100を超えていれば高いことになります。指数の高低で、給与水準がおおむね分かります。

 令和3年の給与実態調査によると、都道府県で最も高かったのは静岡県の102.2、最も低かったのは鳥取県の95.5だったようです。

 

民間企業の給与

 民間企業で給与の実態を詳細に公表しているところは聞きません。したがって、民間企業が、自社の給与水準が他の企業と比較してどんな水準にあるかを判断することは困難です。社員の平均年齢や平均給与くらいは公表しているところが多いのですが、年齢、経験年数が異なるため、比較するのは困難です。

 しかし、ラスパイレス指数を算定すれば、国や周辺自治体との比較はできます。国や地方公共団体の給与は、従業員数50人以上の民間の会社、事業所を対象に調査して水準を合わせているので、間接的に他の民間企業と比較していることになります。

 私が仕事で関与している民間企業(3セク)についてラスパイレス指数を算定したところ、95とほどほどの水準でした。

 

ネックは

 ラスパイレス指数算定の基礎となる数値は、人事院が公表している「国家公務員給与等実態調査」のデータです。それを総務省がラスパイレス指数算定のためとして各自治体に流しているのですが、なぜかホームページでは公表していないのです。これをもっとオープンにし、民間企業も利用できるようにすれば、各企業も自社の給与水準が公務員(≒50人以上の民間事業所)と比較してどの程度の水準にあるか、判断できます

 日本の生産性が先進国最低クラスなのは、給与水準の低さも原因であることは明らかです。各企業がラスパイレス指数100以上を目指してがんばれば、日本の生産性も向上するでしょう。

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 著者は、フランスの歴史・人口学者で、これまで数多くの著書でソ連崩壊、リーマンショック、トランプ大統領の勝利等を予言してきたことで有名です。彼の著書はこれまで何冊か読んでいますが、いずれも鋭く的確な分析に感銘を受けました。

 本書は、主に2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を論じています。本書と、数日前に読んだ佐藤優氏の本によって、私はこの戦争に関する考えがかなり変わりました。両氏の考えは、かなり近いようです。

 『「プーチンの野望」(佐藤優)を読んで』 参照願います。

 表紙のカバーには、「本来、簡単に避けられたウクライナ戦争の原因と責任はプーチンではなく米国とNATOにある。事実上、米露の軍事衝突が始まり、「世界大戦化」してしまった以上、戦争は容易には終わらず、露経済よりも西側経済の脆さが露呈してくるだろう。」という文言が記載されています。

 米国やNATOに責任があるというのは著者だけの考えでなく、元米空軍の軍人でシカゴ大学教授の国際政治学者、ミアシャイマー氏の主張が引用されています。ウクライナはNATOへの正式な加盟申請はまだでしたが、ロシアの侵攻のずっと前から米英はウクライナに大量の武器を与え、軍事顧問団も派遣し、ウクライナを「武装化」していたとのことです。また、ドイツ統一の時点でソ連に対してはNATOの不拡大を約束していたにもかかわらず、2008年のNATOの首脳会議で、ウクライナとジョージアを将来的にNATOに組み込むことを宣言しました。プーチンは、ウクライナとジョージアのNATO加盟は絶対に許さないと明確に警告していましたが、NATOはそれを無視し、ロシアとすれば、ウクライナ軍がさらに強化されてしまう前に叩かざるを得なかったのでしょう。

 私は、NATOがソ連にどんな約束をしていようと、ウクライナがNATO加盟を望めばやむを得ないのではないかとも思っていましたが、NATOがけしかけた要素も大きいようです。米国やEUは衰退基調にあり、ロシアはソ連崩壊後の混乱から奇跡的な回復を遂げています。ロシアが再び大国になってNATOと対峙することを米国やEUが恐れたということです。

 「アゾフ大隊」について、著者ではなく文春の編集部が次のように注書きしています。「2014年に白人至上主義極右思想の外国人義勇兵も含めた民兵組織として発足。現在はウクライナ内務省傘下にあるが、ナチスを彷彿とさせるエンブレム「ヴォルクスアンゲル」を部隊章として用いている。日本の公安調査庁も、「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」としていたが、現在、この記事はHPから削除されている。」

 

 西側やウクライナ側からの情報だけ見ていては分からないことをたくさん知ることができました。それでもなお、ロシア軍が他国に武力侵攻し、市民を虐殺していることは許せないことですが、単純にロシア、プーチンだけを悪と決めつけることはできないようです。

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 本稿は9月26日(月)に予約投稿を予定して25日(日)午後書いています。

 明日27日(火)はもう安倍元総理の国葬です。25日(日)の昼ころ、用事があって市の繁華街へ出かけました。そこでは、国葬に反対するグループが街宣とビラ配りをしていました。

 私が通りかかったとき、弁士は「桜を見る会」を論じていました。私も知らなかったのですが、あの会は昭和27年に吉田総理が始めたと言っていました。各界で功績、功労のあった人を労うためのものだったのに、安倍元総理はそれを自分の支持者の接待に使ったと指摘し、こんなことをした人に国葬などとんでもないことだと主張していました。

 私もまったく同感なのですが、ここに至っては中止はできないでしょう。海外要人の出発が始まるタイミングで自民党葬、内閣葬などに切り替えたら、だまし討ちにしたようで、さすがに失礼です。

 岸田総理も、国葬の決行によって支持率がさらに下がることを覚悟のうえ、奈落に向かって突き進むより仕方ありません。岸田総理が少し気の毒になってきました。また、国葬などという分不相応な話になったために死後にこれほどバッシングされる安倍元総理も、自業自得とはいえ気の毒なことです。

 

 国葬を行うと発表してしまってから撤回するのはかっこ悪かったとは思いますが、もう少し早い段階なら撤回のチャンスはありました。エリザベス女王の逝去で英国の国葬が決まった時、自民党の国会議員の多くが旧統一教会に関係していたことを公表した時、過去最強クラスの台風で九州など列島各地で大きな被害が発生した時・・・。

 少々苦しい言い訳でも、何とか口実を付けて内閣葬にしてしまえば、これほどの窮地は避けられたかもしれません。

 

 自宅に帰ってパソコンを立ち上げたところ、カナダのトルドー首相が国葬に出席しないことになったという速報が伝えられていました。ハリケーンの被害対応のためならば欠席は当然ですが、岸田総理にとっては弱り目にたたり目です。これで現役のG7首脳は誰も出席しないことになってしまいました。

 無理なことをしようとするとあちこちに綻びが出るという教訓でしたが、岸田氏にとってはかなり高い授業料になりました。

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 本書は、2022年2月24日に起こったロシア軍によるウクライナへの侵攻を受けて6月に出版されたものですが、全部が侵攻後に執筆されたものではなく、2005年ころから著者が週刊誌などに載せた文章が集約されています。

 中堅官僚に過ぎなかったプーチンが権力を掌握するに至った過程、手法日本との北方領土交渉の状況なども詳細に説明されています。私が本書を手に取ったのは、プーチンがウクライナ侵略を始めた理由、プーチンの主張する正義を知りたかったからですが、それらももちろん説明されています。ただ、複雑すぎて、なかなか頭の整理ができません。でも、プーチンが全面的に悪で、ゼレンスキーが善だと決めつけることもできないことは理解しました。

 今の日本では、ウクライナでの戦争について多少なりともロシアに理解を示すとバッシングを受けそうな雰囲気があります。著者もそれを承知しているので、再三、「今回のロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナの主権と領土の一体性を毀損するとともに、既存の国際秩序を武力によって変更する、許すことのできない行為だ。」と主張しつつ、プーチン側の言い分を説明しています。

 本書を読んで理解したのは、ウクライナは決して一体ではなかったということです。帝政ロシア時代、ウクライナの東部や南部は小ロシアとも呼ばれ、その地域には日常的にロシア語を話し、「自分は広義のロシア人だ」という自己意識を持つ人が多いようです。一方、西部(ガリツィア地方)は元はハプスブルグ帝国の版図で、同帝国解体後はポーランドに属し、日常的にウクライナ語を話します。両者が一つの国に統合されたのは、第二次大戦後、ソ連領になってからです。

 ウクライナの政治は、ロシア寄りの人々、独立派の人々のせめぎあいで、この独立派の中には、親ナチスの流れをくむ人たちもいたため、ロシア側がゼレンスキー政権をネオナチと非難する根拠になっています。

 

 クリミアの問題にしても、欧米のメディアの報道だけを見聞きしていては分からない問題も多いことを知りました。

 ウクライナの問題は、ロシア側の言い分には理解できる点も多いものの、武力侵攻で解決しようとした点で、どこかにプーチンの大誤算があったのでしょう。こんなことをしなければ、ウクライナは次第に小国に分裂し、順次ロシアに飲み込まれていったかもしれません。プーチンの侵略により、ウクライナの民族意識が強固なものになったようです。

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 9月22日の朝刊などで、「マイナンバーカードの取得率が平均以下の自治体には交付金をゼロ」という報道があり、「またか!」と腹を立てましたが、記事をよく読むと、見出しがセンセーショナルすぎただけで、怒る必要はなかったようです。

 

 2023年度から創設して自治体に配分する予定の「デジタル田園都市国家構想交付金の一部を「住民のカード取得率が全国平均以上」でなければ受給を申請できない制度にするようです。この交付金はデジタル技術を活用した地域活性化事業の支援が目的で、交付金の一部は全国のモデルとなるような事業を実施する自治体に配り、この部分が「交付金ゼロ」の対照です。これとは別に、デジタルを使った他地域の優れた事業を取り入れる自治体などを対象とする配分枠も用意し、この枠も、取得率が高い方が交付金を受けやすくなる見通しです。

 新聞の見出しを見た時、地方交付税交付金に総務省がまた悪さを企んでいるのかと思いましたが、違ったようです。でも、7月ころ、地方交付税交付金にマイナンバーカードの取得率を反映させる検討が公表されているので、油断はできません。その方針に自治体などの反発が大きかったため、「デジタル・・・交付金の一部」に方針変更したのならいいのですが・・・。

 

 地方交付税交付金をこのような使い方をするのは全く筋違いで、大反対ですが、「デジタル・・・交付金」の使い方としてなら「あり」だと思います。

 私は、行政のデジタル化、マイナンバーを使った行政の効率化は当然のことで、賛成しています。しかし、マイナンバーカードを国民に持ち歩かせることに反対しているのです。
 マイナンバーカードを使って自宅のパソコンやスマホで手続ができるようになるようなことは大賛成で、私もe-Taxやワクチン接種証明書など、便利に使っています。国や自治体は、この種のサービスをもっと増やしていただければと思います。


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